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■第103話:海を沈める巨影・海坊主! ……えっ、船を沈める前に「ヒートショックの危険」と「頭皮の塩分ダメージ」の説教ですか?

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


【場所:天界・管理室】

「……いっち、にー、さんっ! ふぅ。スキマ時間のスクワット、確かに下半身の血流が良くなるのがわかるぞ」


神ドラマスは、牛鬼のエピソードで学んだ「1日5分のフィットネス」を律儀にこなしながら、汗を拭ってモニターを見下ろしていた。

画面の中では、ヒナタたちが王都の港から夜釣り(という名のクルージング)の船を出しているところだった。


「ほう! 100話目前で回避された海の巨大怪異……海坊主うみぼずがいよいよお出ましだな!」


ドラマスは、プロテイン飲料を片手にニヤリと笑った。


「夜の海に現れる、山のように巨大な漆黒の坊主頭! 船乗りに柄杓ひしゃくを要求し、船がいっぱいになるまで海水を注ぎ込んで海の底へと引きずり込む絶望の権化! 底の抜けた柄杓を渡すという回避方法の伝承はあるが、ヒナタの物理ド正論がこの圧倒的な質量と海の恐怖にどう立ち向かうというのだ!?」


【場所:人間界・夜の海(船上)】

「いやぁ、夜風が気持ちいいですね! 星も綺麗です!」


ヒナタは、揺れる船の上で温かいほうじ茶を飲みながら、のんびりと空を見上げていた。


「ゆ、勇者殿! 夜の海は波が穏やかでも油断してはなりませぬ! いつ底から……」


宰相セバスチャンがランタンを掲げながら震え上がった、その時だった。


ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!

突如、船の目の前の海面が大きく盛り上がり、真っ黒な巨体が天を衝くようにしてヌゥッと立ち上がった。

丸く巨大な坊主頭、ぬらりとした漆黒の肌。その目はらんらんと不気味に輝いている。


『……柄杓ひしゃくを……柄杓を貸せぇ……』


地鳴りのような声が、夜の海に響き渡った。


「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 海坊主ですぞ!!」


セバスチャンが甲板にへたり込む。


「柄杓を渡せば、船に海水を注ぎ込まれて沈められてしまいます! 底の抜けた柄杓を探さねば!!」

『さあ……柄杓を渡せ……。冷たい海の底へ……道連れにしてやるぅぅ……』


海坊主が、巨大な真っ黒い手を船に向かって伸ばした、その瞬間。


「ちょっと待って!!!」


ヒナタの、波の音すら完全になぎへと変える「訪問入浴介護士ガチギレ・トーン」が響き渡った。


『……エッ?』


海坊主は、巨大な手を伸ばしたままポカンと固まった。


ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で海坊主の「濡れた巨大な坊主頭」と「漆黒の裸体」をビシッと指差した。


「あなた!! こんな冷え込む夜の海に、上半身裸で長時間浸かっているなんて正気の沙汰ですか!! 急激な温度変化で血管が収縮して、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす『ヒートショック』になりますよ!!」

『ヒ、ヒートショック……!?』


海坊主は、聞き慣れない医学用語に思わず自分の巨大な胸(心臓のあたり)を押さえた。


「大体、その頭!!」


ヒナタは、海坊主のツルツルの頭頂部を指差した。


「海水の塩分とミネラルを洗い流さずにそのまま放置していたら、頭皮のバリア機能が完全に崩壊します!! 肌荒れと極度の乾燥でフケだらけになりますよ!! 海から上がったら、真水でしっかり洗い流すのがスイマーの基本でしょうが!!」

『と、頭皮のバリア機能……!?』

「それに、柄杓を貸せですって!?」


ヒナタは、セバスチャンが震えながら用意しようとしていた「底の抜けた柄杓」を取り上げた。


「こんな底の抜けた壊れた道具を渡して、冷たい海水をすくわせるなんて非効率で意地悪すぎる!! どうせお湯を張るなら、もっと大きくて丈夫な容器を使いなさい!!」

『い、意地悪……!? いや、俺様は船を沈めるために……』

「今日から、徹底的な『ヒートショック予防』と『頭皮の塩分ダメージケア』を行います!!」


ヒナタは、四次元リュックから、「超特大のドラム缶(五右衛門風呂用)」「大出力のポータブル給湯器」「高保湿・アミノ酸系スカルプシャンプー」、そして「極厚のバスタオル」を取り出した。


「ゴズさん、ドラム缶に真水を張って給湯器をフルパワーで回して! ヴァレリアさん、お湯の温度を魔法で40度にキープ!!」

「ブモォッ!(おう! 冷えた体には熱い風呂が一番だからな!)」

「ふむ。この巨大なドラム缶風呂、私の野営スキルが火を噴くぞ」

『ナ、何ヲ……!? 俺様ノ恐ろしい水責メガ……!』

「【究極のヒートショック対策・洋上リフレッシュ入浴プログラム】です!!」


ヒナタと仲間たちの手により、船の甲板に設置された超特大のドラム缶に、絶妙な温度(40度)のお湯がたっぷりと張られた。


「さあ! 冷たい海から上がって、肩までしっかりお湯に浸かって!!」


ヒナタの容赦ない指示により、海坊主は恐る恐る、その巨大な体をドラム缶の熱湯の中へと沈めた。


『アァァァッ……!! な、なんだこの、体の芯まで解きほぐされるような温かさは……! 冷え切っていた内臓に、熱いお湯がジンジンと染み渡っていく……。ヒートショックで強張っていた血管が、スゥーッと開いていくぞ……!』


海坊主は、あまりの気持ちよさに、漆黒の顔を真っ赤(?)に染めて「ふはぁ〜」と極上のため息をついた。


「よし! お湯で毛穴が開いたら、頭皮の塩分を洗い流しますよ!」


ヒナタは、アミノ酸系スカルプシャンプーをたっぷりと泡立て、海坊主の巨大な頭皮を、指の腹を使って優しく、かつ入念にマッサージするように洗い始めた。


『ゴシゴシ……シュワァァ……』

『ンギモチイィィィッ!! 塩水でガサガサに荒れていた頭皮が、キメ細かい泡で優しく洗浄されていく……! マッサージの絶妙な力加減で、凝り固まっていた頭の筋肉がほぐれていくぅぅっ!』


数十分後。

そこには、夜の海で船を沈める恐ろしい妖怪の姿はなかった。


極上のドラム缶風呂で体の芯まで温まり、頭皮は塩分ダメージから解放されてツヤツヤのピカピカに輝き、極厚のバスタオルを頭に乗せて「いい湯だったぁ……」と骨抜きになった「超健康的な温泉愛好家(特大)」が、ぽかぽかと湯気を立てていた。


『……ありがとよ、ヒナタ先生。俺様、冷たい海の底でずっと体が冷え切ってて、イライラして船を沈めてただけだったみたいだ……』


海坊主は、ホカホカの笑顔で巨大な手を合わせた。


『俺様、これからは船を沈めるのをやめて、この海域で「移動式の洋上・巨大露天風呂」を開業するぜ! 冷えた漁師たちを、俺の頭の上(湯船)で温めてやるんだ!』

「それは素晴らしいビジネスですね! 頭皮の保湿ケアだけは、毎日欠かさずに続けてくださいね!」


海坊主は、ツヤツヤの頭をなでながら、波音ひとつ立てずに穏やかな海へと帰っていくのだった。


「……ゆ、勇者殿。海の絶望が……『ヒートショックを克服し、スカルプケアに目覚めた洋上露天風呂のオーナー』になってしまいましたぞ……」


セバスチャンは、すっかり温かくなった潮風を感じながら、自分も後でゆっくりお風呂に浸かろうと心に誓うのだった。


【場所:天界・管理室】

『…………』


神ドラマスは、スクワットで疲れた足を止め、静かにプロテインのシェイカーを置いた。


『海坊主が……「ヒートショック」と「頭皮の塩分ダメージ」を指摘され、ドラム缶風呂に入れられた……』

『底の抜けた柄杓は「非効率な嫌がらせ」と論破され、スカルプシャンプーで極上のケアを受けた……』


ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「海の恐怖」すら「入浴環境の改善」として論破するヒナタに完全降伏し、自らの疲労回復と頭皮の健康のため、通販サイトで「高濃度炭酸入浴剤」と「アミノ酸系スカルプシャンプー」をポチり、そのまま優雅なバスタイムの準備へと向かうのだった。

(第103話・完)


本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!


ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!


皆様からの応援トラフィックが、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!


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