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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-4-4】

 近づいてから気付いたが、目的地である建物は周囲を水源に囲まれていた。湖の上に浮いているかのように見えるそれはどうやら大きな神殿であるらしい。その手前には長い長い橋が架けられていて正門まで続いている。


「他には入口はないの?」

「ない。この橋を渡るかあるいは上から行くかじゃな」


 空を指さしてそんな事を言っている。いやいや簡単に言うけどさ。


「ま、行くなら正面から堂々とってわけだ」

「……あまり物騒な事は考えないようにの?」


『なーにー冗談冗談』なんて笑ってみるがドミニクは呆れたような表情を浮かべるだけだった。


「ちなみに門番とかもいるのかなー?」


 ここからだと遠くてよく見えない。それほどに遠いのだ。でも微かに橋の先に人が立っているように見える。


「勿論いるじゃろうの。ワシも入った事はないがな」


 なるほどねー。もし中に入ろうとするならこの長い橋を渡っていく必要があって、その時にはもう門番にはバレてしまっているというわけだ。


「うーんー、夜中でも関係なくいるだろうしなー」


 こういう時にレナードがいればいつぞやの身体を透明にする魔法を使ってもらうのだけれど、今回はそういうわけにもいかない。


「周りの湖からの侵入も難しそうだしなー」


 神殿の周りは水を避けるためなのか高い塀が建てられているために、もし水中から近づいたとしても壁に阻まれてしまうだろう。


「あ、アダムとかにくっ付いて中に入るのは?」


 彼はアヌ教徒においても位の高い存在のはずだ。なら中へ入る事だって出来るかもしれない。


「無理じゃよ。あの中には入れるのはごく一部の使徒だけじゃ。付き添いも許されん。あるいはギィ様に直接呼ばれれば、というぐらいじゃの」

「つまりほとんど可能性はないって事か……」


 そうなると出来る方法としては本当に正面突破か。まあそうするしか手段がないのであれば致し方ないか。


「状況はよく分かったよ。ありがとね」


 少なくともどこにリーザがいるのかは分かった。そして何が課題としてあげられるのかも。


「さて帰ろっか。なんかお酒でも――「――頭を下げろ! 早く!」


 何事かと思ったがドミニクのその声を受けて私は慌てて頭をさげる。


「ドミニク?」

「静かにしろ! 人が近づいてきている。使徒だ!」


 その言葉に私はドクンと心臓が跳ねるのを感じた。使徒。


あの村を滅ぼした使徒が今近くにいる。耳を澄ますと確かに複数の足音が聞こえる。何やら話していたようだったけれどこちらの存在に気づいたのか話は止み、やがて足音も自分達の近くで止まった。


「あら。ドミニクさんでしたか?」


 私は顔を挙げられないために、相手の顔を見る事は出来ないが声から女性である事は分かった。


「これはこれは光栄ですな。まさか使徒様に覚えて頂けるとは」

「最近この国の商人達からお名前はよく聞きますからね。貴方の働きには感謝していますよ」

「……恐れ入りますな」

「それでどうしてこちらに?」


 今私達がここにいることを見られてしまったのは不味かったかもしれない。通常出入りする人も限られているなら、用事もないはずの私達がいるのは確かに不自然だろう。


「うむ。実はですの。……使徒様方に折り合ってご相談がありまして」


 驚いた事にドミニクは自ら話を展開させ始めた。


「相談? 私達に?」

「ええ。使徒様といえば最近何かとお忙しい身と存じます。聞いた話では何日も寝ずに働かれているとか。それでは身体の疲れも容易には取れんでしょう」

「まあ、そうね?」


 彼女は若干困惑した様子で相槌を打っていた。それは私も同様で、いやこれってもしかして……。


「そんな皆様方にワシドミニクが良い品を用意しましてな。過去ドワーフ族が飲んでいたという霊薬です。彼奴等はこれを飲んで何日も武具を鍛え続けたとの逸話もあるほど。さあさあ如何です? 今なら大特価で卸しますよ?」


 ドミニクは持っていた荷袋から数本小瓶を取り出して、彼女達に見せていた。


「……申し訳ないけれど今は手持ちがないの。また今度お願いしようかしらね?」


『それは残念。いつでもご贔屓に』と言ってドミニクは道を譲る。私も彼に習って道の端へとズレる。


「ありがとう。そちらの方は?」

「ああコヤツはワシの元で手伝いをさせておりましてな。ただどうも人と接するのが苦手でどうしたものかと思案しているところです」


『ほれ何か言いなさい』とドミニクに言われるが、私はただ頭を下げる動作をする。


「構いませんよ、人それぞれ向き不向きがありますからね。そろそろ失礼するわ」


 これで一安心だろうと胸を撫で下ろす。ドミニクもなかなか役者じゃないかと。まあそうでもないとスチャーチの村の出身で外で過ごすことなんてできないんだろう。


「ええ。何か入り用であればぜひお声がけください。――プリエール殿」


 ……今なんて言った? 私は慌てて頭を上げようとする。ただそれをドミニクが抑え付け止めていた。


「……はっは。ほれお前も頭くらい上げんか」


 なんて言ってはいるが実際は彼によって頭を上げないようにされている。ただ傍目から見れば頭を上げさせようとしている所に私が抵抗しているように見えるだろう。


 しかし思ったよりもすごい力だ。体型から肉体派ではないと思ったけれどもそうでもないらしい。


 私たちのそばから離れているのか足音が少しずつ小さくなっていく。その音が完全に聞こえなくなった頃にようやくドミニクは私の頭から手を離し私を睨みつけた。


「まったく! どういうつもりだ? 自殺願望でもあるのか!?」

「……悪かったよ」


 彼が怒るのは最もだ。ただそれでも反応してしまった。あの日ギィと共にいた女は確かにプリエールと言っていたはず。あの時の女が今目の前にいたのだ。


「……ここにこれ以上いても仕方ないね。じゃあ戻ろっか」


 急な態度の変化にドミニクは怪訝そうな表情を浮かべている。ただ私は彼の様子も気にせずに元来た道を戻った。


 今はまだ早い。乗り込んだとしてもただ殺されるだけだ。ちゃんと計画を練らないと。


 館に戻った私は、ドミニクやイオリ、戻ってきたアダムと相談をする。彼らには止められたがいつリーザが犠牲になるとも分からない。であれば早い方がいいと押し通した。


 決行は明日の深夜。人々が眠りについた頃。私はリーザを助けにあの神殿へ侵入することを決めた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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