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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-3-2】

 煙が昇ります。曇り空にその煙が吸い込まれていきます。まるで煙が空に浮かぶ雲へと姿を変えているようだなんて思いました。世界の一部になっているかのように。

 

 アヌ教にとって死はけして後ろめたいものではありません。むしろ祝福されるべきものです。元々この世界に産まれた生命は全てアヌ神から産まれました。それがアヌ神に還るだけ。


 ただアヌ神が受け入れてくれるかは別問題です。アヌ神に認められなかった場合、私達の生命は還る行き場もなくただ無明の空間を彷徨い続けます。でも無事に認められた場合にはアヌ神と共になるという永遠の安寧を得ることができます。そこには苦しみも痛みもありません。あるのはただひたすらな幸福。その世界に至るためにアヌ教徒は日夜厳しい戒律に勤しんでいるわけです。

 

 しかし今回は少し毛色が異なります。だって亡くなったのは、――ミーム=ラフェシア様とククル=マグノリア様なのですから。


 今日は使徒を始めとした多くのアヌ教が一カ所に集いました。目的はミーム様とククル様への追悼です。私たちフクローランの風習ですが葬送の儀礼として炎を炊きます。焚べるのはその人の遺体。その身体を燃やし尽くす事で全てをアヌ神へとお返しするのです。といっても今回は当然お二人のご遺体などありませんため形だけではあるのですが。


『……うゔ、ミーム様、ククル様』『どうしてこんな事に……』『スーニャって奴は一体何者なんだ?』なんて言葉が耳に届きます。殆どの人が目に涙を浮かべ鎮痛な表情を浮かべていました。


 ただ、際立っていらしたのは当然ともいうべきあのお方でした。


「……ッ」


 皆の前に立つは我らが神、ギィ=フクローラン様です。揺らめく炎をただじっと見つめて佇むお姿は毅然としたものであり、同様を見せないそのご様子に私達もまた勇気づけられました。


「……プリエール。使徒は集まっているのか?」

「無論です。神託を受け任に着いているものを除き、皆集まっています」


 その声にギィ様は頷き、私たちを見回しました。私達は彼女の様子をただ一心に見つめます。


「……私はいまだに信じられない。リムもククルも。まだ生きてるんじゃないかって本気で思っているんだ」


 ギィ様の声量は大きな物ではありませんでしたが、ただハッキリと私たちの耳へと届きます。


「今までに沢山の死を目にしてきた。でもまさか私達、太古の神々が死ぬなんて事考えもしなかった」


 仰られる通り、私達も想像だにしませんでした。彼女達はアヌ神の後に産まれた、この世界の神様なのですから。


「言った通り今も信じられない。本当は違うんじゃないかって。ただそうだとしても、二人が今も姿を現さない事は何か事情があるに違いない」


 それは私たちの誰もが考えた事です。本当は生きていらっしゃるんじゃないなって。何度でも言いますが、神様が殺されるなんてあり得ない事なのですから。


「だからそれは確かめる。そしてそのスーニャってヤツは事は絶対にどうにかしないといけない」


 新しくマグシアという国が生まれ、スーニャを国敵とした事は伝え聞いています。でもまだその人物を捕まえたという話は受けてはいませんでした。


「マグシアへ連絡はしているが、どうにも動きが鈍い。それなら私達が直接動かないといけないだろうな」


 それはつまり私達がスーニャを探し、ミーム様とククル様の仇を取るということなのでしょうか? 私たちの中からはそうすべきと合意する声が四方から上がりました。


「そう言ってくれると思っていた。ただ、それともう一つ協力して欲しい事がある」


 何でしょう? ギィ様が改めて何かを仰られる事は珍しいです。


「今この世界は耐え難い痛みを受けた。誰しもが救いを求めてる。希望に喘いでる。誰かがこの世界を守らないといけない」


 私達はギィ様のお言葉に聞き入りました。先程までの喧騒が嘘のように鎮まり返っています。


「それが出来るのは、私達アヌ教だ。改めてみんなの力を、生命を、私に委ねてほしい。 ――全てはアヌ母様の為に」


 当然でしたが、異議を唱えるものは誰一人いませんでした。皆がその言葉を神託であると見做して、そうあるべきと理解したのです。


 その後は程々に皆はその場を立ち去りました。私も人の流れに応じて一人家路につきます。周りの人々は皆一様にミームギィ様の先程のお言葉について話しているようでした。


 本来であればダリアお母様もこの場に同席するはずでした。使徒の中でも高位であるお母様が欠席するなど普通ではあり得ないことです。


 ただ、お母様は今別の任についていました。具体的な内容は口外出来ないらしく私もお聞きしておりません。ただそれ程には重要なものなのでしょう。是非この場に来て頂きたかったと思っていたのですが残念です。本人も歯痒い思いだったのでしょうが致し方ありません。


 でも今日の事はお母様にもちゃんとお話ししておきましょう。これからは改めてアヌ教が世界を守らないといけません。それが私達の使命でありアヌ神のご意志なのですから。


 ――思えばこの時なのかもしれません。アヌ教が変わり始めたのは。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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