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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-3-1】 歪み

 死人族の一件の後から、現在までのお話をしましょう。

 

 帰った際にダリアお母様は数日間自宅から隔離されました。プリメール様がおっしゃっておられたように罰が与えられたということだと思います。


 私達の家はフクローランの首都であるカナンベルクにあります。家々が立ち並ぶ区域からは少し離れた場所で、昔にどなたかが住んでいたお家を譲り受けたそうです。煉瓦造りの家は年季を感じさせるものではありましたが、しっかりとした作りの為に今も不自由なく暮らす事が出来ます。お母様と私の二人で暮らす分には程よいお家です。


 お母様が不在とされた数日は一人自宅で過ごしました。使徒としてのお勤めもなかったためにお家の事をして、残りの時間は与えられていた神託をこなすくらいでした。


 その時受けていた神託は、アヌ教の戒律を唱える事。私は目を瞑り言葉を繰り返します。主を否定してはいけない。主を疑ってはならない。主を貶してはならない。他の神を信奉してはならない。主と、主が創られた全てを愛し敬うべし。自らの魂は主の為にこそ用いられる。主に与えられしものは、主に返さなければならない。


 ふうと息を吐き、再度続けます。主を否定してはいけない。主を疑ってはならない。主を貶してはならない。他の神を信奉してはならない。主と、主が創られた全てを愛し敬うべし。自らの魂は主の為にこそ用いられる。主に与えられしものは、主に返さなければならない。


 この時のご指示は四十三回ということだったので、あと四十一回、この言葉を繰り返しました。


 他にはアヌ神の像の前で三時間ほどのお祈りを捧げるというものもありました。お祈りをしている間私はこの世界に生まれてきた感謝の思いをアヌ神へお伝えしています。……時々は別の事を考えちゃう事もありますけれど。


 あるいは食事や睡眠を禁じられたり自らの身体を棒で叩いたり、大変なものもありはしますがそれらは全て邪な思いを払うというアヌ神のご意向なので異論などあろうはずもありません。


 お母様が戻られたのはアヌ神へのお祈りを終える頃でした。


「リーザ。いるのですか?」


 私はパタパタとお出迎えにあがります。


「ああリーザ。心配を掛けてしまいました。ごめんなさい……」


 いえいえ。お帰りなさいませお母様。お疲れでしょうから湯をすぐに沸かしますね? それともご飯が先でしょうか?


「それでは、湯をお願いできますか? 少し汚れてしまいましたので……」


 分かりました。すぐにご用意しますね。どうぞ座ってお待ちください。


「ええ。ありがとうございます。……ふぅ」


 お母様は随分とお疲れのご様子でした。お顔もやつれたように思います。少しでもお母様を休ませてあげないと。


 私はお風呂の薪に火を付けます。大体の方々は魔法で火を焚べるのですが、残念ながら私は使えませんので火打石です……。風を送り炎が定着した頃私はお母様に声をかけます。


 お母様。もう暫くお待ちくださいね。今のうちにお召し物をお変えになりますか?


「そう、でございますね。そうしましょうか」


 はい分かりました。ではご用意しますね。


 いつお帰りになられても問題ないよう準備をしておいてよかったです。お母様は私にお礼を言うと共に服を脱がれてその柔肌が露わになります。――瞬間、私は身体が強張るのを止める事が出来ませんでした。


 傷一つないダリアお母様のお肌に見るも無惨な切り傷や打撲痕があったのです。それは、神託でいつも行われる程度を遥かに超えているものでした。私の視線に気付いたのかお母様は慌てて傷跡を隠されました。


「……お見苦しいものを見せましたね。忘れてくださいませ」


 そんな事を言われても無理があります。お母様何があったのですか?


「貴方にお伝えすべきものではございませんよ。全ては私の不徳の致す所。アヌ神への不敬の為なのでございますから」


 でもそんな……。


「ありがとう。それにごめんなさい。そろそろ湯が沸いた頃でございましょうか? 少し、休ませて下さい」


 お母様はそのままにお風呂へと向かわれました。私もそれ以上口を挟む事はしませんでした。お母様のその鎮痛な表情を見ては何も言えなくなってしまったのです。その後互いにこの話をすることはありませんでした。


 この頃からお母様の様子が少し変わられました。以前と同じく優しい雰囲気はお持ちではあるのですが、ただ時折どこか思い詰めたような、あるいはどこか遠くを見ているような表情を作られるようになりました。それに、私にもお伝えにならず出掛けられる機会が増えたと思います。


 ただ一方で、使徒としての任へは以前よりも更に熱心に従事されるようになりました。それを受けてアヌ教内でも改めてダリアお母様を信奉する声も聞こえた程です。私もまた内心安心する思いでした。お母様もアヌ教のお考えが正しいと再度理解してくれたのだと。

 

 そんな毎日を過ごしていた中で世界は大きく動きました。ラフェシアとマグシアが争いミーム様とククル様が亡くなって、マグシアが生まれました。 


 お二人を倒したというスーニャなる人は世界の敵として認識され、日夜その行方が探されています。私はその彼? 彼女? が一体どんな人物なのか自分の中で思い描いていました。私の三倍はある背丈? 屈強な体つき? 射殺すような鋭い視線? 触れるもの全てに噛み付くような鋭い牙?  


 手配書に似顔絵がありはしましたけれど噂によると姿を変えるというお話もあり、私の中のイメージはモヤモヤと幾度も姿を変えます。浮かぶのはどれもとてもとても恐ろしい人物。会う事なんてないのでしょうが、もし機会があるのであれば一目だけでも見てみたいものです。


 そして、聞いてみたいです。――なぜ貴方はミーム様やククル様を殺したのですか? 何がそんなに憎かったのですか? と。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。

(……でないと、力尽きるかもしれません)


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