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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-2-2】

「それで? じゃあひとまずアンタ以外はあの村と繋がっている人はいないと。なら誰かに伝える必要はないわけね」

「そ、そうだ! そもそもがあの村は隠れ里だぞ! 今こうして話しているのだって本来はダメで」

「あーもう五月蝿い五月蝿い」


 そんなワーワー喚かないでよもう。苛々が募るだけなんだから。


「じゃあ質問を変えよう。リーザって子に聞き覚えは?」

「リーザ? そんなもの知らん! ワシはただの行商人だぞ!? そんな名前……」


 ドミニクの言葉は途中で止まる。酒で赤くなった顔色が、ドンドンと青ざめたものになっていく。


「……リーザ、だと?」

「ああ。これくらいの身長の、金色の髪をした可愛らしい女の子だ」

「そ、そいつが何だと……?」


 なんだ? どうもおかしな反応だ。何かしら引っ掛かる部分があるのだろうか?


「私はその子を探している。今すぐにでもどこにいるのか知りたいんだ。アンタに構っているヒマも無いくらいね」


 スチャーチの村と関わりがある人がドミニク以外にいないと言うのであれば、これ以上は詮索する必要もない。もし誰かいるのなら伝えておくことは私の義務と思っていたけれど。


 それならば彼からは引き出せる情報は聞いておこう。そもそも私もフクローランに来たはいいが、どこに何があるのかも分からないのだ。それもあって酒場に来たのがそもそもの目的なのだから。


「リ、リーザというものはワシは知ら――「――ああ? いーじゃねえか。ソイツもリーザを探してるってんなら、オレらと目的は一緒だろ?」


 背中越しに聞こえた声は、男口調ではあったものの、声は女性のそれだった。私はドミニクから目を離して彼女へと目を向ける。


 そこにいたのは長い黒髪の細身の女性で、やたらと鋭い目付きが特徴的だった。歳の頃はリーザよりも上だがそこまで離れていない程度だろう。


「どーも。どうでもいいんだけどさ。そこのブタをあんまり虐めないでくれるか?」

「……アンタ、誰?」

「おいおい。そりゃこっちの台詞だぜ? 一応オレはソイツの用心棒でね。あんまり手荒な真似されると黙ってられなくなる」


『ほらこれとかな』と腰に掛けた剣を撫でている。それはどこかで見たようなまるで日本刀のような剣だった。ただいずれにせよこれ以上勝手をするのなら容赦しないという警告だろう。


「別にやるならやるけど?」

「まあ待て。……アンタ、リーザとどういう関係だ?」


 彼女は私を品定めするように此方を見ていた。


「……それを聞くなら先に自分の身くらい名乗ったら? 得体の知れない相手にベラベラと自分の話をする程抜けちゃあいない」

「ハッハ。それもそーか。ならさ、ドミニク? この人アンタの屋敷に連れてくよ。そこで詳しく話そう」

「は!? イオリ!? なんでこんな奴を――「――いいだろうが? 何か文句あるのかよ?」


 どうやらこの女性はイオリというようだった。ドミニクは『いや、しかし、でもだな……』なんてタジタジになっていたが『なんだって?』と彼女の剣幕の前には、頷くしかなかったようだ。


「うし。決定だ。じゃあ今から行こう。少し歩くが構いやなしないだろ?」

「構わないよ。こっちは宿もないし。少なくとも有意義な話になればいーけどね」


『そりゃそーだ』なんてイオリは笑い目的地へと歩き出す。私も無言で彼女の後を着いていく。確かに若干の距離はあるようで十数分程度は掛かったものの、着いた先は随分と豪華な屋敷だった。


「……でだ。早速だけどアンタの名前は?」


『あ、オレはイオリね』と彼女は勝手知ったる人の家というやつで、ドミニクの許可も得ずに備蓄されていた酒瓶を取り出していた。『いや、それは私の秘蔵の……』『あ゙?』『いやなんでもない……』なんてやり取りが聞こえるが私にとっては関係のない話だ。


 私は受け取った杯をクイと傾ける。それを見てイオリは

にやーと笑っていた。


「……なに?」

「いやイケるクチだと思ってな」


 そして自分も同じく酒を煽る。……リーザと大差ないだろうに、酒なんて飲んでいいのだろうか?


「それで? オレは名乗ったぞ? 名前くらい聞かせて貰ってもいいと思うがね?」

「……リム、だよ」

「ふーんー? じゃあリム、改めてよろしくだ」


『かんぱーい』なんて彼女は私へと杯を向けてくる。私はそれを受ける事はしなかったが、イオリは特段気分を害した様子でもなかった。


「で、だ。イオリって言ったっけ? アンタはリーザとどういう関係があるわけ?」


 早速本題へと入る。こうしている間にもリーザは危険に晒されているかもしれないのだ。一刻も早く手がかりを掴む必要があった。


「直球だな。まーいいが。ドミニク?」

「な、なんだ?」


 部屋の隅でちょこんと座っていたドミニクだが、急に話を振られて動揺している。……イオリはドミニクの用心棒だとか言っていた気がしたが立場が逆じゃないだろうか?


「そんな怯えんなって。酒が足んないからさ。他にも持ってきてくれよ?」

「だから、それは全部ワシので……」

「いーから。ほらさっさと行った行った」


 彼女の言葉にドミニクは抵抗することも諦めたのか素直に従う。部屋から彼が出ていったのを確認して、イオリは私へと向き直った。


「……それで話を続けようか?」

「ああ。彼女についてアンタは何を知ってるんだ?」


 そもそもがリーザの名前を出して直ぐにイオリは私の前へと現れた。その後の彼女の口ぶりからするに何かしら関係がある事を匂わせていた。


 もしかしたらリーザを助ける手助けをしてくれるかもしれない。態度には見せていないもののそんな事を内心期待していた事は事実だ。


「うん。まーそうだな。知っちゃいるよ。というか探してるっていった方が正しいか?」

「そっか。それなら私にとっても都合がいい」

「そうかい? ならオレ達は協力し合えるわけだ。仲良くしようじゃねーの」


 彼女はご機嫌そうに笑顔を浮かべる。


「じゃこれからはオレたちは仲間って事でいーか?」

「構わないよ。私の邪魔さえしなければね」

「ハッハ。いいねー。じゃあ仲良くしよーや。――リーザを殺すためにさ」


 放たれたその言葉は私の浅はかな期待を即座に打ち砕くものだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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