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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-9-1】 再花

 手に持った工具で屋根に開いた穴を板で塞ぐ。釘打ちもして。よしまあこんなもんだろう。


「こんな感じでどうですかー?」


 屋根から下にいる女性に話しかける。彼女から『大丈夫ですよー!』と声が聞こえて私は分かったと手を振る。


「はーい。じゃこれでお終いっと」 


 私は屋根からゆっくりと降りる。雪が家の中に入ってきたら大変だし今のうちに対処できてよかっただろう。私は彼女からのお礼も程々にその場を後にする。


「えっと次はー……」


 確か二軒どなりの家も同じように家が老朽化してたんだっけ。私はのんびりとそちらへと足を向ける。


「さて今日も一日美味しいご飯と夕飯のために頑張りますかねー」


 私はあの宴会の後もこの村にいた。別にあの時の飲み比べに負けたから、というわけでもない。ただなんとなくもう少しこの村に滞在してもいいかと思ったのだ。


「ま、リーザもいるし下手に動き回らない方がいいかもだしね」


 なんて自分に都合のいい言い訳をしながらに日々を過ごしている。やることといえば村の周りの警備であったり、食材の確保、あとは今のような村人達の困り事の対応だ。ギルドの時も似たような事をしていたので慣れたものだ。……まさかこんな所であの頃の雑用経験が活きることになるなんて思わなかったけれども。


 といっても勿論そんな依頼が沢山あるわけでもなく、私は悠々自適な暮らしを満喫していた。何もない日には日がな一日昼くらいまで寝て日が沈むと共に床に着く。随分と健康的な生活だ。……こら、自堕落とか言わない。


 村人とも随分と仲良くなった。最初は当然ながらに距離もあったが今では自然と声も掛けられるようになった。差し入れだとかで食材も毎日とどけられる。


「そんな大した事もしてないんだけどなぁー」


 実際それは本当で私がしている事はただの手助け程度なのだ。別に感謝される謂れもなかった。


「でもまー、なんだか懐かしい気もするかな」


 思えば化け形族の里の頃にはこんな生活を送っていたような気もする。あの頃も周りに住む人達との距離は何だか近くて、何かあれば助け合って支え合って生きていたように思う。


「そっか。だから私はきっと――「――リムさんー? いるっすかー?」

「あーはいはいー。ちょっと待ってねー」


 私は自分の家の前に現れたカナンの元へと向かう。


「約束してたっすからね! お願いしますっすー」


 家の前で仁王立ちしている彼女は、気合い十分な様子でフンスと鼻息すら聞こえそうだった。


「いーけどさー。本当に期待しないでちょーだいよ?」


 私は改めてカナンに伝える。話しているのは彼女がずっと嘆願してきた特訓のことだ。


「……あれ? 改めて考えるとだいぶ時間早くない?」


 確か約束していた時間はもっと後だった気がするけども。


「……気のせいじゃないっすかね?」


 ピーピーと下手くそな口笛を鳴らしながらに目を背けている。コイツ確信犯だな?


「あーなんか気分が乗らないなぁ。特訓やめちゃおっかなー?」

「それは約束が違うっすよー!!」

「えー? そもそもそんな約束したっけー? 気のせいじゃないー?」


 なんてカナンを揶揄ってみると彼女は『謝るっすからー!!』なんて言ってくる。勿論私も本気では無いし彼女もそれは分かっているだろう。でもこんな風に冗談を言い合う関係というのは何だか久々で心地よいものだった。


「――で、だよ。教えて欲しいって具体的に何をさ?」


 私達は村から少し離れた場所へと移動して、二人向き合っていた。辺りには何も無く開けておりこれであれば多少魔法を放ったっていいだろう。


 結局もう少し滞在する事にした私はカナンからの申し出を断りきれず、その剣技だったりを見てやることにした。……まああんまりにもしつこいから根負けしたともいえる。


「私は見ての通りに精霊族の出なんすけど。魔法はともかく、武芸にはとんと縁がなくて」


 といいながら手元の短槍をクルクルと回しながらに話している。いや十分過ぎるくらい扱い上手じゃん。


「別に私に教えて貰わなくても、誰か村に適任の人いるんじゃないの?」

「いーやダメっす。やっぱり私はリムさんに教えてもらいたいっす」

「なんでまたそんなに……」

「……リムさんだから言うっすけども、私はいつかこの村からの出たいと思ってるんす」

「あ、そなの?」


『そーなんだー』と軽く返した反応に、カナンは若干ムッとした表情を浮かべていた。


「……リムさん分かってます? 私はこの村で生まれて今日まで育ってきました。病で亡くなった両親もそうっすが、村の人は元々は外から来た人が多いっす。でも私は違う」


 カナンは私が思っていたよりも真剣な表情を浮かべていて、軽薄な返しであったことは申し訳ないと思う。それに彼女の両親を見かけない事は不思議に思ってはいたが亡くなっていたのか。


「……ごめんて。でもそれがどう関係してくるのさ?」

「この村の外の事を私はほとんど知らないっす。いえ知識としては多少は教えて貰いましたけど。あの洞窟の先すら私は想像も出来ないんす」


 ダリアさんの話などもその流れで聞いたのだろう。しかし、外の世界を知りたいというカナンのその姿はなんだか化け形族の里にいた頃の自分と重なってしまう。


「ですから外の世界で生きていく方法だったりをリムさんに聞きたかったんす。戦い方はあくまでその一部っす」


 この子はこの子なりに自分の人生を生きようとしていて、そんなところに偶々に私のような異物が現れた。彼女にとって私はまさしく青天の霹靂とでもいえる存在で、だからこそ彼女にとっては逃せない好機だったというわけだ。


「……事情は分かったよ。ひとまず出来るとこからね」


『宜しく頼むっすよー!』なんて燃えていらっしゃるけども、私は村の人間でもないわけだしどこまで踏み込んでよいものやら。でも武芸の手ほどきくらいなら、まあこの村にとっても有益だろうしいいだろう。


 なんてこの村に来てから何度目かの自己肯定をし、カナンの動きに助言をしてあげる。彼女の特訓は日が暮れる前まで続いた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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