【2-8-3】
「ゔ〜〜。頭がガンガンする……」
朝起きてからはすっかり二日酔いに陥っていた。あのお酒美味しかったけども結構強かったからなぁ。
「お水……」
部屋の隅にある水差しからお水を頂く。部屋の中に置いていたはずだが未だに冷たいままで、熱った身体にはちょうどよかった。
「ふぅ。美味しい。この辺りの雪解け水なのかな?」
身体を芯から冷やしてくれるようなそんな気がした。
「ね、リーザ。無事に休ませてくれそうでよかったね?」
隣で寝ているリーザに声を掛ける。
「貴方は一体いつになったら起きるのかなー?」
『本当寝坊助さんだねー』と顔をツンツンとしてみるが反応もない。たまにだが、本当に生きているのか心配になってしまう程だった。
「ぼちぼち起き上がってもおかしくないらしいんだけどなー」
身体自体はすでに傷は治っているので、あとはきっかけ次第らしいんだけども。
まあそれはそれとして今日は――。お、ちょうど外からコンコンとノックの音が聞こえる。『入るっすよー』とカナンの声が聞こえる。
「はーいー。どうぞ」
「おはようございますっす。よく寝れたっすかー?」
「お陰様でねー」
今は村の空き家にお世話になっていた。古風な内装で、中には囲炉裏なんてものもあり、薪で火を焚いては暖を取るという生活ぶりだ。
「昨日結構飲んでたっすから心配でしたけど、リムさんもお酒強いんすねー」
『尊敬っす』なんて私には分不相応な視線を向けてくる。昨日自分が冒険者であることを説明したのだが、それが余計に彼女の琴線に触れたらしい。大した事はないと強調はしたんだけども。
「……ん? もしかしてお酒残ってたりします?」
「あーいや、大丈夫大丈夫。で何だっけ。スノウベアを狩るってのでいーんだっけ?」
「そっすそっす。でも無理しないでいーんすよ? そもそもが私らの無理なお願いですし」
「構わないよー。こっちもお世話になってるわけだし。じゃちゃちゃっと準備して向かいますかー」
昨日酔ってる時気軽に約束してしまったが、この辺りには最近凶暴なモンスターがチラホラ出没しているのだとか。
「本当にリムさんだけにお願いしていーんすかね? 普通だったらそれなりの人手が必要になる狩りっすよ?」
「大丈夫大丈夫。道案内だけはお願いね?」
若干腑に落ちていない様子ではあったが、彼女は『了解っす』なんて言い私も準備を始める。リーザは身体が冷えないようにしつつそのまま寝かしておく事にした。またすぐ戻ってくるのならわざわざ連れて行く必要もない。
「じゃあ行こっかねー」
一応剣も持ったし。あとは寒く無いようにあったかくすれば、うん。オッケーオッケー。
「……鎧とかはいーんすか?」
「大丈夫大丈夫ー」
私が手をヒラヒラとさせると、カナンは再度若干疑わしそうな表情を浮かべていた。
「リムさん。本当に危なかったら逃げてくださいっすね? まだ今からでも間に合うんで無理なら無理ってハッキリと言ってもらった方が……」
「ほーんと大丈夫だから。行こ行こ」
私はカナンの背中を押しながらに強引に家を出る。心配してくれるのは有難いが説明しても通じないだろうし、なら見せてしまうのが一番早いだろう。
「――ほんっとうに凄いっすね!!」
「いやもういいってー」
件のスノウベアに私達は無事に? 遭遇した。思ったよりも大きいその体格は、確かに普通の人なら随分と手こずることだろう。ただそれはあくまで普通の人で、私はその範疇ではないのである。
「だって一発じゃないっすか! 一発!」
『あんなの見た事ないっすよー! 痺れましたっすー!』なんて興奮冷めやらないご様子だ。標的のモンスターと遭遇して私は早速魔素をぶつけて退治した。さて帰るかとカナンに振り向いたところで、彼女は目をキラキラとさせながらに私を見ていたわけだ。
「でもほら、オルダークさんなんかも強いんじゃないの?」
直接も聞いたが彼はエルフだ。であればあの程度のモンスターを退治するこもは容易だろう。
「いやぁ? あの爺さんはダメっす。戦っているとこ見た事ないですし」
『もう年っすかねー?』なんて酷い言われようだけれども、そうなのか。あのカイリと同種族ということであれば魔法には長けているのだろうけども。
「じゃあ村帰ろっかね」
「ん。あれこの子どーする?」
この場にそのまま放置しておいていいわけないだろうし。
「そっすね。お陰様で今日は夜が楽しみっすねー」
「夜? ってなにかあるんだっけか?」
「……? ああ。このスノウベアってお肉が美味しいんすよー。中々取れないんで一年に一度あるかないかっくらいっすけども」
あーなるほど。そういうことね。確かに見た目はクマそのものだし食べても美味しいかも。
「ちなみに、お酒にもあうっすよ?」
「よっしゃ。急いで帰ろう」
そそくさと移動する私を追うように、背中からはカナンの『ちょっとちょっと待つっすよー!』なんて声が聞こえた。むふふ。一宿一飯の礼はあるけども、一働きした分またご相伴に預からせて貰おう。
その後は私達はさっさと村へと戻った。仕留めた獲物は布の上に乗せ雪の上をズルズルと引き摺りながらに運んだ。途中途中には血の匂いからか別のモンスター達が寄ってきたが、私は危なげもなくそれらを排除しつつ前へと進む。
「リムさんってホントお強いんすねー。冒険者の人ってみんなそんなんなんすか?」
「そんなんて。でもどうなんだろね? もっともっと凄い人達もいるかもだよー?」
なんて言ってみるけども、実際他の冒険者達がどんなもんかっていうのは私も知らない。スタンのパーティとは何度か関わりがあったためにその実力は何となく把握しているけれど、それくらいだった。
「いいっすねー。……ね、リムさんお願いがあるんすっけど」
「んー? どしたん?」
「いえいきなりなんですけど……」
ん? なんだろう。カナンがモジモジと言い及んでいる。ただ少しして意を決したように私に向き直る。
「……私を弟子にして貰えませんか!? 雑用でもなんでもするんで!」
思わずはぁ? と声を上げる。まさかそんな事を言われるなんて。
「いや無理無理。とんでもない。私、誰かに教えるって苦手だし」
両手を振って彼女の提案を断る。リーザの時だっててんでダメだったのだ。誰かに教えるなんて正直もう懲り懲りだ。
「そこを何とかっす!!」
「え〜〜、あ! ほら見えてきたよ! この話はまた今度ね!」
自分でも露骨に話題を変えていると分かっているし、隣ではカナンがピーピーと抗議の声を上げている。そんな彼女をよそに、私は歩くスピードを早め逃げるように村へと向かうのだった。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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