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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-8-2】

「ささっ。どーぞこちらへっす!」


 態度が一変したカナンに案内されながらに奥へと進む。どうもこの子はカナンという名前で、村の人達はかわるがわるにこの洞窟で門番をしているらしかった。


「いやーあのダリア様にお会いしたなんてリムさんめっちゃ幸運っすよ!」


 ……なんだろうこの後輩感は。いやいたことないけどさ。


「なにダリアさんてそんな凄い人なの?」

「え〜リムさんそんな事も知らないんすか?」


 大袈裟に肩をすくめてはぁ〜なんてため息を吐いてる。むっ。だってこっちはアヌ教徒でもないし、あの時が初めてあったわけだし。


「あの方はっすね。アヌ教徒の中でもめちゃめちゃ有名な方で、使徒の上層部の一人だったんすよ! でもそんなに偉いのに貧しい人たちにも優しく接する姿はまさしく聖母で、むしろダリア様が神様なんじゃないかって――」


 一人興奮して話を続けている。こちらからすると、へーとしか反応出来ない。でもやっぱりダリアさんは普通の人ではなかったわけだ。


「私も実際お会いしたことはなくて、いつかはと思ってるんすけどもこればっかりは中々。だから本当にリムさんは幸運なんすよ? 人生の運全部使い果たしたって言ってもいいくらいなんじゃないすかね?」

「おいこら」


 まったく好き勝手に言わせておけば。


「まあ大体はダリアさんの事も分かったよ。それで? カナンの村はもうこの先なのかな?」


『えー? まだダリア様のお話はいくらでもあるんすよー?』なんて言っているがこれ以上はもう十分だ。彼女の過去を無闇矢鱈に詮索するつもりはない。それに目の前にはもう出口が見えていた。


「ダリアさんには勿論感謝しているけどもさ。今はほらちょっとあったかい飲み物とかお風呂とかが恋しいかなぁ? なんて」

「むー、そうすか? じゃあダリア様のお話はまた今度するとして」


 不満そうな表情ではあるもののカナンは言葉を止める。そして洞窟の外へとピョンと飛び出し、手をこちら側へと広げた。


「――ようこそっす。私たちの村スチャーチへ」


 私はその後を彼女に連れられて村へと進む。家々が連なって形成されているが、数としては数十程度だろうか。家自体は藁や木で作られていて、雪により崩れないよう三角形の屋根の形をしていた。


「じゃあまずは村長に挨拶するっすかね」


 私はとりあえずと彼女に従う。途中途中には物珍しそうに見てくる村人もいたがカナンが追い払ってくれた。


「やっぱり来客は珍しいのかな?」

「そうっすね。でもあんまりないすけど行商人なんかもきたりするんすよ? 確かそろそろ来る頃だったと思うんすけどね」

「あそういう人もいるんだね」


 てっきり外との関わりは薄いものかと思っていたが違うらしい。


「自分らで行ってもいいっすがやっぱ大変すからね。確か村出身の人が行商になったとか」


 なるほどなるほど。じゃあ半分身内というわけだ。それなら勝手もわかるし安心だろう。


「着いたっす。これが村長の家っす」


 作りは同じであるようだが、一際大きな家が目の前に広がっている。というか気軽にきてしまったけども、自分とリーザのことを聞かれたら何て答えよう。赤裸々に言うわけにはいかないし不自然に隠しては疑念が生じるかもしれない。


「村長ー。入るっすよー」

「え、ちょっ」


 考える前にカナンはスタスタと中へと入っていく。ノックもせずだがいいのだろうか?


「村長ー。いないんす――」


 ゴンッ! と何かがカナンの頭に命中した。彼女は『ゔ〜〜』なんて呻き声をあげながらに蹲る。


「え? ちょっ、大丈夫?」


 私は慌てて彼女に声を掛ける。だがその前にツカツカと足音が聞こえ壮年の男性が現れた。


「――コラァ!! 帰ってくるのが早い!! まーた警備をサボったんじゃろカナンッッ!!」


 その声量に耳がキーンと鳴る。いやすーごい怒鳴り声。


「……ん? 隣におるのは? うちの村のもんじゃないのぅ?」


 キョトンとした表情でこちらを見ている。カナンよりも更に耳が長い。カイリと似た空気を感じるが、エルフなのだろうか? 爺さんのエルフってあんまり見聞きしたことないけど。


「こんのクソジジイ!! この世界に誇る美少女顔が傷付いたらどうするつもりっすか!?」

「ほー? そんなものどこにあるのかのー? うーん見えん見えんー?」

「はぁ!? そのど玉カチ割るっすよ!?」

「へっへー。やってみたらどーじゃ? まだ若いもんには負けんわい」


 なんてやいのやいのと話し合っている。うーむ何ともパワフルな爺さんだこと。


 ひとしきり怒鳴り合った後、彼らはフゥフゥと息を吐きながらようやく私へと向き合った。


「……で、この人は誰なんじゃ?」

「すいません。リムっていいます。少しの間だけで結構なので休ませて貰えないでしょうか?」


 私は遅ればせながらに名前を名乗る。極力刺激しないように声色も丁寧に。ここに来てダメなんて言われたら堪らないからだ。


「ふーむー? こんな所に人がきたじゃとー?」


 ジロジロとこちらを見ている。まあ確かに怪しい事には違いないだろうが。


「村長、この人はダリア様に会ってここにきたらしいっすよ!! 凄くないっすか!?」

「はぁ? ダリアに会ったじゃと?」


『本当か?』と何だかより疑惑の目が強くなっている気がする。


「……ええ。ダリアさんにこの場所を教えてもらってきました」


 ただまあ嘘をついたとて仕方がない。実際に彼女に紹介して貰ったんだし。


「……あやつは今幽閉されとる。そうそう簡単には会えないはずじゃが?」


 ジッとこちらを射抜く視線に私は内心冷や汗を流す。


「……まあよい。とにかく一旦中に入るがいい。話はゆっくり聞かせて貰うからの」


 その言葉に従い家の中へ入る。しかし何だか嘘も全部見抜かれてしまいそうだけれど、このままうまく隠し切れるだろうか。ただそんな緊張とは裏腹に、彼からは思わぬおもてなしの声を頂く。


「……ちょうど上手く果実酒が漬け上がった所だが、飲むかの?」

「頂きます」


 即答だった。迷う余地もなく。だって念願だったわけだし……。この疲れの中でお酒なんて飲んだらさぞ美味しいだろうし……。仕方ないじゃない……。でも失礼のないよう程々にしておこう。下手な事を口走るわけにはいかないし。

 

「――はっはっは!! いやリムちゃん中々いける口じゃな?」

「あっはっは。いやいや、オルダークさんもじゃないー?」


 当初の思惑とは真逆にこのオルダークさんとは意気投合し、何回、いや何十回も杯を重ね合うのだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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