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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-7-4】

「……ふふっ。すみません。あははは」


 私の言葉を受けて、ダリアさんが笑い始めた。思いもよらない反応に私はキョトンとしてしまう。


「いえごめんなさい。でも、ふふふ」

「……あれ? そんな変なこと言いました?」


 止まる事なく笑い続ける彼女に、私は自分があまりにも間の抜けた事を言ってしまったかと思ってしまう。そりゃいきなり世界の敵なんて言ったら笑われてしまうか。


「いえいえそんな事はございませんよ。でもそんな事仰られる方初めてお会いしましたので、申し訳ございません』

「それは全然気にはしてないですけども。……やっぱ変な申し入れでした?」


 改めて考えるとダリアさん側の事も何も考慮してはいない。急にこんな事を言って所で笑われてもおかしくはないだろう。


「いえ。……私は嬉しかったのですよ」

「うれしかった?」


 唐突な言葉に、私はただ聞き直してしまう。


「ええ。……貴方のような人がいてよかった。私が信じた世界は間違ってなかったって改めて思えましたから」

「……それは、どうも?」


 でも大層な言葉を言ったつもりはないし、そんな言葉を贈られるような存在ではないんだけども。


「この世界は、残酷ではありますがでもやっぱり優しい。私もまた信じてみようと思います」


 私は彼女の言葉になんて返すべきなのかがわからない。だって彼女が何に傷つけられて、そして今の私の何によって救われたのかも分からないからだ。


「それでお声がけ頂いた事なのですが……」

「あ、そうですよ。ダリアさんどうしますか?」


 彼女を捕えている鎖は私の炎で焼き切ることが出来るはず。本人が怪我しないように気をつけないとだが。


「ええ。せっかくのお声がけなんですが、お断りします」

「ああ。じゃさっそく隅の方から焼き切って、――え?」


 あれ? 今お断りって言ってたような?


「……本当にごめんなさい。私は、貴方とは一緒に行くことは出来ません」

「え? え? なんでです? ほら迷惑なんて毛ほども気にしてないですよ?」


 いやむしろ気にすべきは貴方の方で、私がスーニャであるという事から迷惑を掛ける可能性の方がよっぽど高いわけで。


「いえ、私はやはりここから逃げるわけには行きません。でも貴方のお言葉には感謝しております。本当に、ありがとう」


 彼女の言葉にはどこか有無を言わせぬ迫力があった。だから私は口から出そうになった言葉を飲み込んで、それ以上追求することも出来なかったのだ。


「……貴方とはまた何処かでお会い出来たらいいですね。いえ、きっと会える。そんな気が致します」

「……決心は固いんですね?」


『あーあー残念。いい道案内を見つけたと思ったんだけどー』なんてお茶らけてみる。さっきからちょっと空気が固かったし少し緩めないと。


「まー貴方がそうまで決めた事なら、私も無理強いなんてしないですよ。なんでこれ以上は言いません」


 実際言ったところで意味もないだろうし。道連れが出来なかった事は本心から残念ではあるけどさ。そんな私の言葉にダリアさんは笑っていた。


「さーてこれからどうしたもんか。やっぱフクローランの方へ行くしかないですかね?」


 話を元に戻すがマグシアへ行くとなるとかなり距離があると言っていた。しかしこんな雪の中そんな長時間歩けないし。


「……いえ、もう一つだけ別の案もございますよ」


 唐突にダリアさんから三つ目の案が掲示される。それは私にとっては願ってもないものだった。


「別の案?」

「ええ。……実はここからそう遠くない場所に、とある村があるのです」

「……とある村ですか?」

「黙っていてごめんなさい。でも、初めは貴方がどんな方かも分かりませんでしたから……」

「えーと、それはいいんですが。でもなんで黙ってたんですか? 何か問題でも?」


 彼女が黙っていたというのにも何かしらの理由があるはずだ。


「はい。その村は、私と一緒なんです」

「……一緒?」


 フウとダリアさんが息を吐く音が聞こえた。


「ええ。その村にいるのは元々がアヌ教徒。でも自らの意思でアヌ教を離れたもの達」

「……え?」


 その言葉に思わず聞き返してしまう。そんな人たちがこの近くにいて村を形成している? 一体どんな理由があって?


「彼らはアヌ教徒から逃げ落ちて、その場所に逃げ込みました。一人また一人と増えやがて小さな集落となって、今の形になっています」


 それなら私にとっては好都合だ。アヌ教に出くわさずにすむルートも知っているかもしれないし。


「でもいいんですか? もし私がアヌ教徒にその事を言ってしまったら」

「ふふっ。……貴方は言わないでしょう?」


 そんな声で言わないで欲しい。いやそりゃ言わないけどもさ。別に私は善人ってわけじゃないんですよ?


「ではここからの道のりをお伝えさせて頂きますね」


 そこからは丁寧に目印なりを彼女から聞く。確かに歩いて行く分にもそう遠くない距離のようで、今から向かっても日が暮れる前にはつける事だろう。


「いや本当に助かりました。ありがとうございます」


 素直に彼女にお礼を伝える。大分長居してしまったことだしそろそろお暇しなければ。


「……最後になりますが一つだけ宜しいですか?」

「はい? 何なりとどうぞ?」

「ありがとうございます。もし、もしあの子と会う機会が……」


 ダリアさんは言葉を途中で止めた。


「ダリアさん?」

「……いえ。何でもございません。貴方にアヌ神のご加護があらんことを」


 彼女からそれ以上の言葉はなく、私が問いかけても返事はなかったためにあえて詮索はしなかった。


「……ありがとうございます。ダリアさんもどうかお元気で。また会いましょうね」


 私はダリアさんに挨拶をし階段を登って外へと出る。相変わらずの雪景色だ。そしてそれからは彼女に聞いた方向へと歩みを進める。


「リーザー? またここから寒いからねー?」


 背中でスヤスヤと寝息を立てているリーザに声を掛け気合を入れる。さて体が冷えないうちに移動してしまおう。


 そういえばダリアさんにちゃんとリーザを紹介するのを忘れていたと今更ながらに気づく。いやほらタイミングを見失っちゃって。途中にまた言うのもなんだか変だし。まあ次に会う時に紹介してあげよう。

 

 ――ダリアさんとはこのようにして別れた。そしてもう二度と会う事はなかった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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