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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-7-2】

「シュル? それともミホノ?」


 うーわ先客がいたよーと私は内心肩を落とす。いやまあいーんだけどさ。ちょっと間借りするだけなら許してくれるだろう。


「……あーごめんなさい。たまたまここに着いちゃって」

「……たまたま? ふふっ。可笑しな事をおっしゃいますね」


 声からして女性であることは分かった。しかし特徴的な声だ。何というか、吸い込まれるような、安心できるような、そんな声色だった。


「ここは分かりづらいですからね。これからは貴方が来てくれるのかしら?」

「ん? いやいや私は本当に偶然ここに来てですね」

「……?」


 どうも話が噛み合っていない気がする。彼女は誰かと私を間違えているのだろう。


「貴方は使徒でしょう? ここには私の身の回りのためにいらしたのでは?」


 あ、やっぱりここってアヌ教の場所なのだ。


「いえ、そもそも私はアヌ教徒ですらなくて」

「まぁ! ……そうなのですか? でもここは普通の方は立ち入れない場所でございますが?」

「はい……。ちょっと色々とありまして。あれでしたら、内緒にしておいてくれません?」


『すぐにお暇するつもりではあるので』と伝えると、彼女は驚きながらも愉快そうにコロコロとした笑い声をあげていた。


「ええ。私は勿論構いませんよ。きっとアヌ神のお考えなのでございましょう」


 彼女はいう通りに気にしていない様子だった。よもや追い出されるかとも思ったが話の分かる人のようで一安心だ。


「どうぞ此方へいらしてくださいな。といっても何かお構い出来るわけでもないのですけれど」

「いえいえとんでもない。私としては寒さを凌げるだけで充分なので」


 私は恐る恐ると中へと進む。部屋の中は真っ暗で私は手元の火を奥へと照らすように前へと掲げる。


「でもアヌ教徒でない方と会話するなんていつ以来でしょう。私上手にお話しできるかしら?」

「いえそんな。十分お上手な――」


 不意に言葉が詰まる。それは彼女の様相が目に入ったからだ。


「あら? いかがされましたでしょう?」


『何か失礼でも……?』と言われ慌てて手を振ってそれを否定する。私が驚いたのは彼女の様子が余りにも酷い有様だったからだ。


 まさしくアーガの時を思い出す。彼女も身体は傷つけられ拘束されていた。目の前の女性もまたそれは一緒で、身体はボロボロに傷を負っていて、四肢は鎖に繋がれ、瞳は黒い布に覆われ閉ざされている。


 ……一体何があったらここまでの戒めを受けなければならないのだろうか。


「……ああ。申し訳ございません。見苦しい姿をお見せしてしまって。驚かれたでしょう?」


 彼女は気まずそうに顔を俯ける。


「そんな。でも、いえすみません」


 驚いてしまった事は事実だ。謝ったところで意味はない事は理解しているがそれでもと私は頭を下げる。


「ふふっ。お優しいんですね」


 そんな言葉を掛けられて私はどう反応したら良いのかとちょっとソワソワとしてしまう。しかし目は隠されているけれども凄い美人だという事は分かる。金色の髪の毛が火の光に照らされて輝いていて、身なりを整えたらきっとそれこそ聖女のように神々しい姿になるのではなかろうか。


「申し遅れました。私、ダリアと申します」


 彼女がペコリと頭を下げてくる。拘束されている鎖がジャラジャラと音を鳴らした。


「あ此方こそ。私はスー……。いや、リムと申します」


 この人が誰かは分からないが、スーニャという名前は伏せておいた方がいいだろう。


「まぁ素敵なお名前ね! 太古の神々のリム様に肖っておられるのですね!」

「……ええ。まあそうですね」


 ダリアさんのパァと輝く表情とは裏腹に私は曖昧な反応を返す。この世界においてはそれはそれは神聖な名前だろうし誇らしいものなのだろうが、実際のリムさんのあの暴君のような姿を知ってしまうと何とも共感しづらかった。……本人に言ったら絶対怒られるけども。


「ちなみに、ダリアさんに聞いてもいいでしょうか?」

「ええ勿論。私でお答えできる事であれば何なりと」

「ありがとうございます。……ここって、どこなんですかね?」


 そもそもの質問だった。ジーにはレナードのいるマグシアに移動して貰う筈だったのだが、誤って見知らぬ土地に来てしまったので自分のいる場所すら分からなかったのだ。


「あ、そうでございましたね。ここはフクローランの領土に含まれます。ただ都市部からは大分外れてはおりますね」


 やった! とうとう自分がいる場所が分かった! いや当てもなくただ歩き続けるのって結構堪えるからさ……。


「もしフクローランの首都に行かれるのなら、ここからは北西へとお進みいただく事となりますね。ラフェシア、失礼しました。今はマグシアでしたね。其方へ行かれるのであれば、西へと行かれ南側に抜ける道が宜しいかと」

「なるほどなるほどー。私はマグシア側へ行きたくて。そらに抜ける方ですとどれくらいの距離がありますか?」

「大分距離はあろうかと思いますよ? 馬車で数日というところでしょうか。リム様はどのように此方まで?」


 喜んだ気持ちが一気に冷めていく。そうか。大分近い距離かと思ったがそうでもないらしい。ということはまたあの雪の中を歩き続けないといけないわけだ。


「……徒歩です」

「……歩くとなると、少し大変かもしれませんね」


 ごめんなさいとでも言いそうな申し訳なさそうな声でお伝え頂く。 


「いやいやダリアさんは悪くないので……」


 と慌てて伝えるものの、内心ではため息を吐いてしまう。はぁ……。これからどうしたものだろうか。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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