【2-6-4】
閉じた目を開ける。周りを見渡し、フゥとため息を吐く。あーあー。無事にレナードの所に行けるかなぁなんて思っていたけれど、それは甘かったみたいだ。
「……で、ここはどこなんだろね〜?」
辺り一面雪景色。ただただ白一色の光景が広がっている。
「まったく。次会ったらリムさんに文句言ってやらないと……」
風景だけ見ると昔に訪れたディーヴァヌ山脈を彷彿させる。ただあの時には山頂を目指していたために斜面であったが、今はただ平坦で見渡す限り建造物はおろか木々すら見えない。
「はぁー。なーんも手掛かりなし……」
どちらの方角に進めば人がいるのかもなにも分かりやしない。いやそもそも私達はどこにいるのか。
「……陸の孤島とかそういうことないよね?」
まさか見知らぬ島とかに送り込まれちゃったりなんかして? いやそんなものがこの世界に存在してるのかも分からないけどさ。
「ったく。……もーとりあえず進むしかないかぁ」
私はその場の雪を踏み抜きシャクシャクと音を立てる。
「あ゙ー寒いし疲れるし最悪だよ」
誰が聞くでも無く一人ぶー垂れる。だってそうでもしないとやってられないのだ。
「ねーリーザもそう思うでしょー?」
私は背中におぶっているリーザに話しかける。ただ当然ながらに返答はなく私の声は足元の雪に吸い込まれてしまうようだった。
「はいはい。行けばいーんでしょ行けばー」
『分かってますよーうるさいなー』とぼやきながらに足を踏み出す。とにかく気の向いた方向へ進むほかなかった。
「――でさぁ、その時にはラフィエルとかいう奴が出てきて」
ただ歩き続けるというのもあまりにも退屈だし、私は最近あった出来事をリーザに話していた。
「ほーんとアヌ教徒ってのはやばい奴ばっかりでさー。あ、でもリーザも元アヌ教徒か」
もしかしたら、記憶を取り戻したらリーザもあーいう感じなんだろうか? ……いや流石に考えすぎか。アヌ教の考えに背いたという話もあったしそこまで狂信的ではないという見方が適当だろう。
でもなんでまたあんなにも厳格なのか。好きにさせてあげればいーのに。あそこまで追いかけ回す必要はないだろう。
「……あ。もしかしなくても、私のせい?」
元アヌ教徒が、しかも使徒が、まさかあのスーニャと一緒にいるなんて世間に知られてしまってはアヌ教の信用を揺るがすものになるのだろう。聞いているとアヌ、ひいては太古の神々への信仰が絶対的なものであるようだし。
「そう考えるとリーザが追われてきちゃったのって、私のせいだったり……?」
そもそも私がリーザと会うことがなければギルドと関わることもなかったろうし、名前が噂されることもなかった筈だ。当然アヌ教に知られることもなかった。
……あの時孤児院でリーザを身請けしないで、去ってしまえばよかったのだろうか。彼女の表情なんて見ないで、さっさと振り向いて去ってしまえば。
「……いや、やめよやめよ」
私は頭をフルフルと左右に振る。
「喋る相手もいないとなんだか悪い方にばっか考えがいくねー。まったくリーザが早く起きてくれればなー?」
『ほーんと早く起きるんだよー?』と言って身体を揺らす。
「とんだ寝坊助さんだねー。せーっかくの久々の二人旅だっていうのにさー」
実際二人だけで一緒に行動するのなんて本当に久々なのだ。
「リムさん達の所には当分行けないし、バルディアとかもどーなってんだろ?」
レナード曰くはマグシア内にはアヌ教徒が入ってきてるというような事を言っていたはずだ。それであればやっぱり気軽に街々を訪れるわけにもいかないのだろうが……。
「でもちょっとくらいなら……いいよね?」
だって折角なのだ。今まで訪れていない国や街に行ってみてもいいだろう。ほら今まではマーニャさんへの借金返済に追われていたわけだし。
「やっぱりスウェールとかも行ってみたいよねー。海がめっちゃ綺麗らしいよ? 透明度がすごいっていうかさー。それに海の幸も有名だし」
『お酒もグイグイ進んじゃうってもんだよー』と頬が勝手に弛む。グンネラの隠れ家にはお酒は置いてなくて実はかなりご無沙汰なのだ。
住んでる人たちの年齢が年齢だからなんだが、ジーに『お酒ないのー?』と聞いた時は、『あんな身体に悪いもの飲んでるの?! 即刻やめなさい!』と凄い剣幕で迫られた。あわよくば持ち込めないかなぁなんて思ったけれど彼女のその反応を見て断念したのだ。
「ねー? リーザは起きたら何が食べたい? どこに行きたい?」
スゥスゥという寝息が聞こえる。
「……リーザさんや。なんか言ってくれてもいんだよー?」
私はフッと笑みをこぼしながらに歩き続ける。ふと後ろを振り向く。
「うわぁ。結構歩いたなぁ……」
そこにはただひたすらに自分の足元が続いていた。
「うっし。気合い入れていこ」
私は歩みを再開する。どこへ行き着くかも分からないままに。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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