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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-6-3】

 少しの間、リムさんとギィが視線が交差し合う。辺りには緊張感が流れていて身動きを取れるものはいなかった。ただふわりとギィは表情を和らげる。


「……なーんてやっぱりそんなことな――「――もしそうだと言ったら?」


 ギィの表情がリムさんの声によって固まる。


「もし私がスーニャを造ったのだとしたら、貴様はどうするのだ?」

「……言うまでもない。お前は嫌という程に知っている筈だ。私が許すわけないという事を。――そうだろう?」


 ギィの表情は、まるで剥がれ落ちたかのように、感情を感じ取れない能面のようなものに変わった。


「――私は、アヌ母様は、この世界は、そんな存在を認めることは出来ない。しない」


 ギィの雰囲気が一変する。


「この世界はアヌ母様が作られたものだ。この世界にある全てのものは母様の寵愛を受けている。それを崩すことはあってはならない」


 淡々と、ただ有無を言わせない口調だ。


「ああ。昔からそう言っていたな。だから研究の邪魔をしていた」

「……この世界を歪めることになるのだから、許すわけがない」

「全てのものは今のまま生きて滅びろと? 変化も許されないなら何のための生命だ」

「そこまでは言っていない。ただお前の研究は意図的過ぎる」

「より良い種族を作ろうとして何が悪い? 生命としての命題だろう?」

「……お前も分かっているはずだろう? 全ての生命は母様に還るということを」


 そのギィの言葉を受けてリムさんは一瞬口籠る。


「その意味が分からないお前ではないはずだ」


 彼女の言葉に、リムさんはフンと鼻を鳴らすだけだった。そしてギィはハァと溜息を吐き、雰囲気が元へと戻る。


「……なぁリム? やっぱお前の家の中を見せてもらうとするよ」

「……スーニャのことは知らんと言ったはずだが?」

「それでなくてもだ。ホント後々のために処分しておいた方がいいものもありそうだし」

「……素直に見せると思うか?」

「はぁ。……じゃあ力尽くでいいか」


『お前達はちょっと離れてろ』と、ギィはアヌ教徒達に指示している。


「姉妹喧嘩なんていつぶりだ? ……ちょっとだけ楽しみ。なんてな」

「……最近むしゃくしゃすることばかりでな? 手加減など出来んぞ?」

「あれ? 昔から手加減なんてしてくれてたか?」

「……上等だ。後悔するなよ?」


 リムさんがゆっくりと手を前に掲げる。ギィもまた体勢を整えている。今にも二人の戦いが始まろうとしていた。私は彼女達の動作に見入っていた。


「……ーニャ?」


 まさかこんな所で太古の神々の戦いが見れるなんて。前の時はミームとククルの戦いを間近で見たが、暢気に観戦などしている暇はなかった。今回は第三者として見ることが出来るとあって私としても興奮を禁じえなかった。


「ーースーニャ!!」

「え!? ちょっとなになに?!」


 耳元でジーが叫んでので、私はあわや座っていた椅子から転げ落ちそうになってしまった。


「……ジー? どしたの? 大きい声だしたら聞こえちゃうよ?」

「いいから、早く準備してください」

「え? 準備?」

「ここから逃げる準備です」

「……え?」


 ジーは真剣な表情で私を見ている。


「ご主人とギィ様が争っている間にここから離れてください。出来るだけ遠くまで」

「……それはリムさんが負けた時に備えてってこと?」


 ジーはフッと笑い、首を振る。


「ご主人は負けませんよ。でももし万が一家の中に侵入された時、貴方達がいると話がややこしくなりますので」


 それは確かにその通りだ。でももうこうなってしまったら、大して変わらないのではないだろうか……。っていうかそもそもリムさんも自分からギィを煽っていなかったっけ?


「でもそれならリーザは?」


 私一人で逃げるわけにはいかない。行くなら勿論リーザもだ。


「ええ。ですから彼女も貴方と一緒に連れてって貰います」

「……え?」


 でも本人は寝たままだし、まさかおんぶして行けというのだろうか? まあやれと言われたらやるけどもさ。


「よしわかった。じゃあおんぶして連れてけばいいのかな?」

「いやそんなわけないでしょう?」


 バッサリとジーに否定される。ですよねー。


「――レナードまだ繋がってますか?」

『ええ。繋がっていますよ』


 あそうか。そういえばレナードとマーニャさん混えて話をしたままだったんだ。


「今からそちらにスーニャとリーザちゃんを飛ばします。あとはよしなにして下さい」

「あそういうこと!?」

『ええ。構いませんよ。いいタイミングでしたね』


 レナードの言う通りだ。転移魔法は双方どちらかの場所に指定した人物を転送する魔法のはず。魔法の使用者一人だけでは意味が無いし今のような意思疎通も必要だ。


「じゃあすぐにリーザちゃんを連れてきますよ。ご主人が時間を稼いでくれてる間に。モノは外を見張っててもらっていいですか?」


 モノはコクリと頷いてジーの代わりに家の周囲を警戒している。ジーは言葉の通りにパタパタと地下へ向かっていった。あ、あれもしかしてリムさんってこれを考えて時間を作ったってこと? 


 ……いややっぱりそれは違う気がする。


「……スーニャ、帰っちゃうの〜?」


 ずっと静かにしていたククルがトコトコと私のそばに駆け寄ってくる。


「うんそうみたいー」

「ぶー。もっと遊びたかったのにー」

「またすぐ来れるよー。……多分」


 本当に思いがけずの別れになってしまった。それに果たしてすぐに来れるのかは甚だ疑問だが、こう言っておくしかないだろう。


「あーあ。私も混じりたかったなぁー……」


 ククルは羨望の眼差しでリムさんとギィさんを見つめていた。ちなみにククルは初めからずっと家の外に出たがっていたのだが、ジーとモノの二人がかりで止めていたのだ。


「でも流石のククルもギィと対峙するのはちょっとなんじゃないのー?」


 まだ本調子とは程遠いはずだ。流石の彼女もこの状態で、太古の神々と争うのは――。


「――ナンデ? トッテモ、タノシソウダヨ?」

「……そ」


 落ち着いたと勘違いしていた。ククルの中の狂気はやっぱり秘められたままで、いつまた復活してもおかしくないのだろう。


「イイナァ……」


 と外を見つめる爛々とした瞳は、やはりギィやリムさん、ミームと姉妹であることを否が応でも理解させられた。


「――スーニャー!? 準備はいいですかー?」


 ジーがリーザを連れて戻ってくる。私は寝ている彼女を受け取り背に乗せる。


「ん。こっちはまあ特に準備するものもないし」

「じゃ、早速やりましょ。レナードもいいですね?」

『ええ。いつでも』

「では、始めますよ」


 ジーが手を前にだし、自分の足元に魔法陣が展開される。その輝きは徐々に身体にも移り始める。


「あ当分は戻ってこない方がいいかもです。アヌ教徒がいるでしょうし」

「うん。りょーかい。みんなありがとねー。リムさんにも宜しく言っておいて?」

「はーいー。ではまた落ち着い――ッッ!!」

「――ッ! ああなんだ? 邪魔したか?」


 轟音と共に、部屋の中に突如リムさんが突っ込んでくる。その勢いに押されてモノも体勢を崩す。


「――おーいリム? もうお終いかぁ?」


「ちょっとご主――「――冗談。ここからだろう?」


 モノが文句を言う前にはリムさんを部屋を飛び出してしまう。


「もう! ――あ、やば……」

「――え?」


 魔法が発動していたのだろう。私の身体はもう淡くなっていて視界も朧げになっている。


「スーニャ!! もしかしたら魔法が上手く発動しないかもしれま――」


 彼女の言葉を聞き終える前に視界は暗転する。


 気がつけば、私とリーザはレナードのいるマグシアとは違う場所に移動していた。


 ……ちなみに、少し前くらいに『私も一応、繋がっとるんですがー? みなさん忘れとらんですかね?』なんてマーニャさんのぼやき声が聞こえた気がした。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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