【2-6-2】
ハァとリムさんのため息が響いた。
「……それで、何のようだ? 私は忙しいんだが」
あからさまに厄介そうな表情を浮かべている。
「こんな大人数で来て、だ。貴様は私が邪魔をされる事をどれほど嫌うか知っているだろうに?」
「……」
リムさんの言葉にギィが反応する様子はなかった。いや、なんだか微かに身体が揺れているような……?
「……何故黙っている? 何か釈明でもあるのか? そもそもが貴様は――「――プッ。クク。アハハハッ」
どう反応するのかと思ったが、ギィは突如噴き出して、腹を抱えて笑っている。そしてひとしきり落ち着いた頃改めてリムさんと向かい合った。
「随分とご無沙汰だってのになにも変わらないなぁ。久々のお姉様だぜ〜? 抱っこしてヨシヨシしてやろうか?」
その言葉通りにギィはリムさんの頭へと手を伸ばすけれども、ペシリと叩かれ止められる。
「可愛がりがいの無いやつめ。ところで、他のはどうしているか知ってたりするか? ミームやククルはよく分かんないし、クーヤなんてなんて門前払いなんだ。サラは、まあいっか」
「知らん」
リムさんはピシャリと返す。その返答にギィはさして気にした様子もなかった。
「あっそ。ったく。みんな好き勝手しちゃってさ。私としちゃ仲良しファミリーライフを送りたいところなんだ。昔みたいに一緒に暮らすのも検討してもいいとも思ってる。なんならリム、フクローランに来ないか? 信徒のみんなきっと喜ぶ――「――もういいから、話を進めろ」
呆れたようにリムさんが言葉を遮った。
「……全く。ギィ、貴様は本当に昔から変わらないな」
「はあ? リムの方が変わらない気がするけどな?」
『昔の可愛い妹ちゃんのままだぜ〜?』なんてギィが言うものだから、リムさんはムッとしたご様子だ。
しかし新鮮な光景だった。今までは絶対的な存在であったリムさんだが、ギィと共にいる姿を見ると確かに姉妹であるというの理解できる。
「それでどうだ? リム、一緒に暮らしてみないか?」
「……冗談だろう? 考えただけで怖気が走る」
「ハハッ。そりゃ残念」
そう言いつつもギィも本気ではなかったのだろう。想像していたかのような反応だった。
「……それでなんでわざわざ貴様がここまできた?」
「あー? 今エルミカが言った通りだよ。人を二人探しているところなんだ」
「ふん。それなら私も言ったがな。ここにはいないぞ。別の場所を探したらどーだ?」
「やっぱそう? はぁ。どうしたもんかなぁ」
ギィは顎に手を当てて明後日の方向へと目を向けている。
「それならもっと南の方とかか。でもそんな遠くへは行けてないと思うんだよなー」
「……知ったことではないな。ほらとっとと行ってくれ。私も研究に戻る」
「あー、じゃもっと別の場所を探してみるかー」
ギィはアヌ教徒へとそう言っていた。想定よりもかなり素直な反応に驚いてしまうものの、よかったと思うべきだろう。どうかこのまま帰ってくれと祈る。
それが通じたのか彼女達は私達に背中を向け、この場から立ち去ろうとしていた。
「――そうだ。一個だけ聞いてもいいか?」
ギィは帰り様に振り返りもせずに話を振ってきた。
「……なんだ?」
「リムは、あのスーニャってのと何か関係があんの?」
「……何をいっているのか分からんな」
「へーそっか。でもさリムはスーニャのこと何にも知らないの? 関心もないって?」
「ああ。知らんな。……興味深くはあるがな。本当にミームやククルを殺したのであれば、研究のしがいがあるというものだ」
「ふーんー? そうかぁ〜」
ギィはそのままに話を続ける。彼女がどんな表情をしているかは分からないが、その言葉は先ほどまでとは違いどこか無機質に聞こえた。
「……私さ、ぶっちゃけリムが噛んでると思ってるんだ」
「私が? なんだまた?」
「違うならいいんだけどさ。でもリムやクーヤって、昔からそんな研究をしてたじゃんか? 私がどんなにダメだっていっても陰でコッソリやってさ。その度私は二人のオモチャを壊して恨まれた」
「……ああ。全く忌々しい記憶だがな。貴様のせいでどれほど研究が遅れたことか」
『ダメって言っているのに、聞き入れない二人が悪いんだからな』とギィは言っている。半分呆れ混じりだ。ただ、彼女からはどこか確信めいたものを感じる。
「……実はスーニャってのに直接会ったんだけど、変な感じがしたんだよ」
「……変な感じ?」
「そう。どこか不可思議な形をしていた。なんていうか、――寄せ集めたような」
私は自分の喉がごくりとなるのが聞こえた。
「それって、リムの昔のオモチャ達とソックリと思うんだよなー」
ここに来てギィはようやくこちらを振り返る。その顔には先ほどまでの笑みはなく、爛々と輝く瞳がただリムさんをまっすぐに射抜ていた。
そして再度、ギィはリムさんへ質問を投げかける。
「――もう一度聞く。本当にスーニャと関係はないのか?」
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