【2-7-1】ギィ
この力はなんなのか。私にもわからない。ただ、とっても便利である事は確かだ。この力さえあれば私はあの子を守ってあげられる。
まあ里の人達からは恐れられてしまったみたいだけど。そこの点はあの人に感謝かもしれない。私たちの間を取り持ってくれたんだから。
「……その力に気づいたのはいつ頃ですか?」
うーん? いつだっけ? 改めて聞かれると困るね。
「その力を使って、貴方の身体に何か変化はありませんでしたか?」
いや特にはない。これが出来たから魔法もできるのかな? なんて思ったけどもやっぱり出来ないし。
あ、強いていうならこれを使った後はめっちゃくちゃに疲れる。全力ダッシュを限界までしたような気分? まああの子の前では、疲れた様子なんて格好悪いから見せたりしないんだけどね。
「その力について私は今まで見た事も聞いた事もありません。……貴方は、特別な存在なのかもしれませんね」
おーやったー。私ったら凄いのかもー? ……なんてね。そんなのどうでもいい。他人からどう見られようが関係なんてない。だって私にとっての特別は、あの子だけなんだから。
「覚えておいてください。特別というのは、他者から畏敬されることもあれば忌避されることもあります。前者であれば良いですが後者になれば、貴方は……」
「……迫害されるって?」
彼女は私の問いに答えようとはしない。ただそういう事だろう。
「だったら、全員殺す。それだけだよ?」
「……そんな事、貴方は本心では望んではいないでしょう? 別の方法を探しましょう。私も協力しますから」
「あーはいはい。じゃあその時はお願いするね」
これ以上話したところで無駄だ。だって私も別に真面目に取り合おうなんて思っていないんだから。そしてその感情は彼女にも伝わっているようだった。
「……とにかく、私にとって貴方は里の一員で守るべき存在です。だから多少は私の指示にしたがってください。それが、貴方の大切なものを守ることにも繋がります」
ずるいなぁー。そう言われると従わざるを得ないじゃない。本当にそれがあの子を守るのに繋がるんでしょうね? そうならなかったら許さないよ?
私が手を伸ばし脅しても彼女の毅然とした態度は変わらない。流石に里を仕切る顔役といったところだろうか。
「うっそー。そんなつもりあるわけないじゃん?」
私は手を下ろす。彼女はグチグチこちらへ文句を言ってくる。私は『ごめんごめんー』と手を合わせながらに謝る。ただ、そんなつもりが無かったと言うのは本当だ。だって実は私は未だにあの力をコントロール出来ていなくて、今も発動する気配も感じなかったのだから。
家の前辺りから物音が聞こえる。私は皆に目配せをする。皆んな緊張した面持ちをしながらも、気配を消すようにしていた。
「……はぁ。では私が出るか」
リムさんは心底怠そうにしながらに家の前へと出る。私は気付かれぬように窓の端から彼らを眺めたが、十を超える程度の人達が集まっていた。
そしてその服装はラフィエルと同じく白を基調とし、アヌ教の紋章が刺繍されたローブを羽織っていた。
「……それで? 我が家に何の用かな?」
彼女は来訪者達へと声を掛ける。
「これはリム様。お会いできて光栄にございます」
先頭にいたアヌ教徒が跪くのに合わせ、全員が同じ動きを取る。
「我々はアヌ教の使徒でございます。主人であるギィ様から神託を受けて今ここにいる。……この意味が分からぬ貴方ではないでしょう?」
「ふん。回りくどいな。それで何が目的なんだ?」
「忌々しきかのスーニャ、そして使徒を裏切った小娘がこの辺りに隠れ潜んでいるはずなのです」
「そんなもの知らんな?」
リムさんはさも関係ないとでも言いたげに言葉を返す。
「そうかもしれません。ただご協力頂きたい」
「協力?」
「我々は奴らをなんとしても見つけなければならない。草の根を掻き分けても。身を隠せる場所は全て。例外はない。リム様のご住居も調べさせて頂きます」
それは事前に話していた内容だった。彼らは本気でこの家の中に押し入るつもりでいる。
「……そんなもの私が受け入れると本気で思っているのか?」
「これはアヌ神のご意志なのです。どうかご理解を」
「……アヌ神? アヌだと? ハッ。笑わせてくれる。あんなものに救いを求めているのか。だから貴様らはマヌケだと言うのだ」
その言葉にアヌ教徒達は怒りを露わにした表情を浮かべる。
「たとえ太古の神々である貴方でもアヌ神の侮辱は見逃せませんよ?」
「ハッ。貴様らよりは随分とアイツへの理解は強いつもりだがな? そもそも奴が望んでいた世界というのは――「――あーはいはい。ストップ。そこまでー」
その言葉にその場にいた全員が動きを止める。
「ったく。相変わらずだなぁ。昔から何にも変わってない」
まるでたわいない諍いを収めるかのような様子で、彼女は現れた。
「……ギィ」
「――久しぶりー。リム」
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