【2-5-2】
「ふむ。特に異常はないようだな」
リムさんは興味深そうに私の身体を診ている。
「あんな戦いを経ているのだから、どこかしらに皺寄せが出てもいいものだが貴様は思った通りに頑丈なようだな」
「……ま元々それだけが得意だったので」
彼女は私の身体に手を当てながら『ああそれは確かにその通りだな』と言っている。……なんかそれっぽいけれども何をしているのだろうか?
「……貴様の魔素の流れを診ているんだ」
「あーそーいう」
まあそんな感じかとは思っていた。ほのかに暖かかったし。
「大体のことはソイツの魔素を診ればわかる。健康だとか病んでいるだとかな」
「そりゃ便利なことですね」
すっかり診察そのものだ。その方法が世の中のみんなが扱えれば医者も不要になることだろう。
「……しかし改めて凄まじいな」
リムさん曰くは、私の魔素の流れは普通の人たちとはまた別ものらしい。良い意味で力強く悪い意味では荒々し過ぎる。普通のものなら、自らの身体を傷つけかねないそれを、私は特に何ともせずに受け入れていた。
「ええ。全部が全部みんなのおかげですけどね」
アンジェルやカイリ、その他にもこの身体の礎になっていったもの達。彼らのおかげで今の私がある。
「……いやそれは謙遜しすぎだな。私から言わせれば貴様こそが十分な化け物だよ」
「え?」
いやいや私は別に何もしていなくて、彼らの素養をただ借りただけですけれど?
「貴様はこう思っているのだろう? 自分など大したことはないと」
いやそれはその通りだ。だって私自身には何の才能もなかったのだから。
「その考え自体誤っている。貴様は何よりもその頑強さは他にはないものだぞ?」
つまりは普通の人では移植なんて耐えられないし、耐えられたとて通常の生活は送れない。長生きできるものも少ない。だから私は稀有であると言いたいようだった。
「確かに上手くいったと思いますが、それだけでそんな」
「フン。自分では受け入れ難いものか? そもそも不死鳥の再生力を抜きにしても貴様は随分と特殊だったぞ?」
『あの時なぜ貴様が生きているのか理解に苦しんだからな』というのは、初めてリムさんと会った時の事を言っているのだろう。
「いやいやあれだって、リムさんに見つけてもらわなかったらどうなっていたことか」
「どうだかな。何があろうと貴様は生き残っていたと思うがな」
「えー流石にそれはないと思いますけどね」
あの時スーニャにリムの身体を移した。リムの残された生命力を全部渡したことでスーニャだけが生き残った。
「身体はボロボロでしたし、血も足りないんで体温も下がっていく一方。……あれ? 確かによく生き残れたな」
本当にもう少し遅れていたら死んでしまっていたんじゃなかろうか。
「その上普通では到底耐えられない手術をいくつも乗り越えた。これが異例と言わずして何なのだ?」
「うーんー、いやでもなぁ……」
頑強さなんて目にも見えやしないし、結局自分ではそんな大したものではないと思ってしまうのだ。
「まあいい。特殊な生き物は自己が持つその特殊性には気づないものだ」
「……それ自分のこと言ってます?」
リムさんこそ、この世界において特殊の最たる生物だろうに。ただ『生意気な口は塞いでやっても構わんがな』と言われて私は慌てて冗談だと弁明する。
「ところで、だ」
「? なんですか?」
「……貴様の姉の話だ。あの時、扱っていた技は今だに分からんのか?」
言っているのはガブリエットを迎撃した時の攻撃のことだろう。
「……正直全然分からないんです」
リムさんがガッカリとした表情を浮かべている。ただ分からないものは分からないのだ。
「その力があればミームも簡単に倒せただろうにな?」
「それはそうなんですけどね……」
私としても勿論その力があればと思わないことはなかった。
「もっと簡単に私の復讐も為せていたかもしれない。でも、やろうにも皆目見当も付かなかったんです。だから仕方ないでしょう?」
リムさんは私の反応に肩を竦める。
「だとしても、だ。私としてはその力が何なのか興味は尽きん。可能な限り思い出せ」
そんな事を言われても……。私としても思い出したい事は山々だが全然イメージも浮かばないのだ。
「え〜。でもどーですかね〜……。こういうのってやっぱり命の危機に瀕したりした時に思い出すんですかね?」
『そんなものは知らん』とバッサリ切り捨てられる。まあ曖昧な質問だったとは思うけどさ〜……。
「フン。貴様は名目共にこの世界のお尋ね者だろう? そういう機会には事欠かんだろうが」
「いやまーそれは、あるかもしれませんね……」
一応最近は比較的平穏な日々を送っていたのだ。でもアヌ教の件で一転してしまった。ここにいる分には変化に気づく事はないが、世間はどうなっているのだろうか。もしかしたらアヌ教がマグシア内を捜索しているのかもしれない。
そうなると、リムさんがいうようにまた争いの日々になってしまうのだろうか。
「そろそろレナードから連絡が来る頃だろう? 報告が楽しみだな」
『私にとっての厄介ごとであれば許さんがな』と悪い予感しかしないような言い方をしていらっしゃる。
「まあひとまず連絡を待ちましょうか――「――ご主人達ー! マーニャさんから連絡が入りましたよー!」
「……レナードではないが、タイミングがいいことで」
私達は二人ジーの声の方向へと向かう。……何となくだが、悪い予感はこのあたりから感じ始めていた気がする。
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