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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-4-4】

「じゃあいっくよー!」


 ククルの声と共に地面に砂塵が巻き起こる。次の瞬間彼女は目の前に現れ、その手にもつ木剣を振り翳していた。


「ほいっと」


 私は振り下ろされた剣をヒョイと躱わす。ククルは続け様に剣を振るってくるがそれらも私はかわしつづける。


「むーー!! 全然当たんないよー!!」

「んふふー。ククルもまだまだだねー」


 なんておちゃらけてはみるが、剣自体には凄まじい程の力が込められている。当たったら痛いどころではすまないだろう。実際当たった岩とか粉砕してるし……。


「ほらほらー。じゃあこっちからもー」


 今度は私が構えてククルへ向けて木剣を振るう。


「よっ。とっ。ほれ」

「わっわっ」


 ワタワタと私の攻撃を受けている。ククルはそもそも剣の扱い自体が拙い。武器を使った戦いなんて殆どしたことがないのだろう。


「あ、隙ありー」


 彼女の頭にパシリと剣を当てる。勿論手加減してだ。でもククルは『いったいよーー!』なんて言って頭を抑えている。


「ふっふーん。見たことかー」


 私は腰に手を当て分かりやすく自慢げな表情を浮かべる。


「ぶーー。スーニャもう一回もう一回!!」

「もう疲れたからダメー。また今度ねー」


『えーなーんでー!?』と肩をユサユサと揺らされる。『はっはっはー』と笑ってやる。あ、こらこら強くするんじゃない。頭がガクガクするでしょうが。


 しかしククルの調子はまだ回復していないのだろう。彼女が本調子なら私は攻撃を避けることも当てることも出来ないはずだ。


「ククルはさ、身体は大丈夫なの?」

「身体ー?」

「そ。ほら私が巻き込んじゃったわけだし」


 あの時にミームとの戦いに巻き込んだのは私だ。勿論本人の合意のもとではあるが流石に気にもなる。


「んー? なんか思うように力が入らないのはあるかもー。でも全然大丈夫だよー?」

「そう、なの? それならいんだけどもさ。大丈夫? 不自由してない?」

「うん! モノやジーとの追いかけっこも楽しいんだよー!? 二人ともすっごく早くて中々追いつけないの! あとねあとね。獣をみんなで狩りにいってね――」


 早口で捲し立てている。ただその様子から、ククルが何か困っているわけではない事がわかり安心する。


「うんうん。楽しそうでなによりだよ」


 しかし随分と彼女の情緒が安定してきた気がする。モノやジーと接してきたからだろうか。以前は下手に刺激をしたらすぐにでも殺されそうだったというのに、変われば変わるものだ。


「もー、ちゃんと聞いてるスーニャ!?」

「聞いてる聞いてる。それで狩った獣がどうしたって?」

「そう! そしたら後ろからまた別のおっきな獣が出てきて、攻撃しても中々倒せなくて――」

 

 レナードと共に帰ってきた後、彼女から熱烈に遊ぼうとの声を受けて私は断りきれずに了承した。その後私とクーヤの二人は家の前に出て、彼女が言うところの遊びに興じていたわけだ。

 

「――ちょっとスーニャ聞いてるの!?」

「ああ勿論聞いてる聞いてる。ククル凄かったんだねー」


 頭をポンポンと叩いてやると、本人も満足したようにムフーと微笑んでいた。本当に、良い意味でそのあたりの少女と変わらない。ククルが不安定だったのは、その強すぎる力と周囲との関係性だったのかもしれないと思う。


 ククルの話が落ち着いたために私は近くにあった小岩へと近寄っていく。彼女も私の後ろを付いてくる。


「……久しぶりだなぁ」

「あ! これ知ってるよ! ジーに教えて貰った! お墓なんでしょ?」


 そうこれはいつぞやにレオが作ったカイリの墓石だ。手入れがされているのか汚れてはいなかったが、薄っすらと苔が生えていて、あの時からの年月を感じさせた。私は自然と手を合わせる。


「カイリが今の私を見たらなんて言うかな?」


 彼女とは別に近しい関係でもないし、過ごした期間なんて一瞬だ。だから別に何を思うわけでもない。


 でもあの時、彼女は平和の世界を築いて欲しいと言っていた。私は応えられないかもしれないと冗談混じりに答えた。そして彼女は笑っていた。なら、今の私を見てもまた笑うだろうか。それとも自分の選んだ結果だと呆れられるだろうか。


 私は自分の目的を確かに果たした。宿敵であったガブリエットとミームを殺した。その結果私は世界の敵と言える存在になった。それは私が望んだ事だ。


 だから別に私が何をされようが気にもしない。どんなに罵られようと貶されようと、それこそ殺されたって。


 でも私のせいで他の人が傷つけられるのは違う。私は、別に他人を巻き込むつもりは毛頭なかった。リムさんやモノ、ジー、レナード、そしてリーザ。皆んなに迷惑を掛けることは私が望んだものとは違う。


 そんな風になるくらいなら、私は――。  


「――スーニャ?」


 沈黙していた私を怪訝に思ったのかククルが話しかけてくる。 


「ごめんごめん。ちょっと考え事してた」


『んー?』と納得いってなさそうな反応ではあるものの、それ以上の追求もなかった。


「じゃそろそろお家に戻ろっか」


『ジーにお菓子でも食べさせてもらお』と言うとククルは手を挙げて『さんせー!』なんて手を挙げながらに言っている。本当に成長したもんだ。前だったら駄々を捏ねていただろうに。


 その後お菓子を食べている間も、私は今どうすべきかを考える。でもこの足りない頭では、何が最善かなんていつまで悩んだところで分からないのだった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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