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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-4-2】

 私達は馬車に揺られて移動する。転移魔法を使うかとも話したけれど特に理由もなくこちらを選んだ。レナードは馬の手綱を握り前方を見つめている。私はその姿を後ろから眺めていた。


「どうかされましたか?」


 レナードは私の視線に気づいていたのか、背中越しに声を掛けてくる。


「いや、うーんなんというか……」


 どう言葉に表したらいいのか私にも分からない。ただ、胸の中にモヤモヤと煙のように掴めない何かが充満しているのは確かだった。


「……スーニャは少し雰囲気が変わりましたね?」

「え、そう?」


『ええ』とその顔が頷いている姿が見える。どこか変わっただろうか?


「昔と比べると随分と空気感が変わりましたよ。あの頃は張り詰めた印象の方が強かったですからね」

「……あーまあそりゃあの頃と比べたらね」


 前にスタン達にも言われたけれども、ガブリエットやミーム達とやり合ってた頃と比べたらそりゃ緩くもなる。ダラダラと冒険者クエストをこなし、たまの贅沢のために生きる。そんな生活をこれからも送るのだと、つい最近まで本気で思っていた。


「まさかこんなややこしい事に巻き込まれることになろうとはねー」

「ややこしいというのは?」

「だってほら、アヌ教とか全然知らないしさー。でもみんながみんな私の事を狙ってくるわけでしょ? しかもその親玉はまーた太古の神々ときた。……まったくなんの因果だか」


 それを聞いてレナードは吹き出すように笑い始める。何かおかなしな事をいっただろうか?


「いえ、ふふっ。失敬。今更ややこしいも何もないと思いまして」

「……そりゃそーかもだけどさ」

「ただ確かに、こんなに主だってギィ様が動くとは思いませんでしたよ」

「あやっぱり?」

「ええ。貴方とリーザさんを罠にかけようとしたのでしょうが、まさか自ら現れるなんて」


 それはその通りで、今考えてもあの場面にギィがいたことは不自然ではある。


「それだけリーザの事が気になってたのかなあ?」

「いえどうでしょう。使徒一人のためにそこまでする存在ではないように思ますが」


 それには私も同意見だ。では何故あの場所にギィがいたかというと、やっぱり私が影響しているのだろう。


「まぁおおかた直接私を見たかったとかかなー」

「恐らく。貴方はミーム様とククル様を倒したということになっていますから。一目見て確認したかったのでしょう。自分を脅かす可能性があるかも含めて」

「そんな警戒しなくてもいーのにねー。そんなつもりも無いっていうのにさ」


 今も生き延びてはいるが実力差は明確なのだ。別に私から噛み付くつもりもないし、ほっといてほしいのだけれども。


「もし貴方を討つことが出来れば、アヌ教としてもさらにその威光を強める事になりますしね」

「……全くもっていい迷惑」


 ハァとため息をつく。でもこれもまた今更だ。覚悟してやってきたことだ。それを悔やむつもりはない。


 なら正面から立ち向かうか、あるいは逃げ回るかのどちらかだろう。いや明らかに後者一択だけどね。


「しかし使徒というのは想像よりも厄介なのかもしれませんね。事を構えて改めて学びましたよ」

「ね。……あの人たちって自分の命をどう思ってるのかな?」

「それは、私にも分かりませんね」


 その答えを受けて私は顔を空へと向けた。広がっているのは黒くどんよりとした空で、ふとすると雨が降りそうな様子だった。


「私さ、あの人達と戦ってる時ちょっと恐かったよ」


 レナードは私の言葉をただ聞いていて、私もそれを気にせずに続けた。


「あの人達は私が傷つけても怯まない。血が流れても腕が飛んでも」


 今まで争ってきた相手はそれでも人間性は秘めていた。痛ければ苦痛に顔を歪め、命の危機には恐怖する。その姿が普通だ。でも彼らは違った。


「むしろ進んで怪我を負っていたようにも見えたよ。だって絶対避けられる攻撃だってあったと思う。でもあえて避けなかったんだ」


 レナードが黙って私の言葉を聞いていた。でも私が言っていることは確かだ。彼らは生き延びようと思えば出来たはずなのだ。その行いも、そのアヌの寵愛を受けたいが為なのだろうか? 本当にそれが神の意思だというのか?


「だとすると、彼らってむしろ……」


 進んで死を望んでいるんじゃないのか? と言おうとしたけれど口をつぐむ。


 だってそれなら、リーザはどうなってしまうのか。記憶を取り戻した時、またアヌ教へ戻ろうとするかもしれない。そうなったら、彼らと同じようにその命を投げ打つのだろうか。……私を殺すために?


「スーニャ?」


 私は頭を振る。だってあのリーザだ。人一倍怖がりででもしっかりしていて時たま生意気な彼女が、まさかラフィエル達と同じなはずがない。


「……いやなんでもないよ。なんだか雨が降りそうだなって」

「……ええ。そうですね。最近は寒くなってきましたから、身体を冷やさないようにしてください」

「……ん」


 それから私達の会話は止まりただ道を進み続けた。


 着いたらリーザの確認とこれからどうするかを話し合わなければならないだろう。考えなければならないことが沢山あるのに、どうにも考えが纏まらない。


 そのくせあの時の場面は鮮明に思い出せた。あの使徒達は死ぬ間際、みな同じ表情を浮かべていた。


 どこか安堵したような解放されたような、そんな笑みを。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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