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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-4-1】 救済

 クソッ。ぜんっぜん分かんない。何回聞いて試してもできるイメージが浮かばない。最初はあの玉みたいなのが壊れてるんじゃないかって思ったんだ。それでバンバン叩いてみたらめっちゃめちゃに怒られたんだけどさ。

 

 でもどうにかしないと。お父さんとお母さんの焦りようからするとこの結果はどうにも宜しくない。


 別に私だけなら気にもしなかった。でも想定外だったのはこの子もそうだったことだ。本人は気にしていない様子だったけれど内心は落ち込んでいるに違いない。

 

 ならやっぱり私が守ってあげないと。まずは魔法の使い方を自分なりに解読していこう。この世界では魔素が身体に流れていない人はいないらしい。なら、感知はされずとも私達の中にもそれはあって、ちゃんと魔法として変換できれば周りだって何も言えないはずだ。


 やってやる。何としても。だから安心して。――大丈夫だから。




「この人達、なんだったんだの……?」


 目の前には死骸が散らばる凄惨な光景が広がっている。


「こんな、こんな事する必要ある?」


 自分の命をここまで投げ出す必要があるだろうか? だって、生き延びられたはずだ。私は確かにリーザを馬鹿にされて怒ってはいたけれど命まで奪うつもりはなかった。


「これが使徒ですよ」


 傍観していたレナードが後ろから声を掛けてくる。


「貴方は彼らの事をどう思いましたか?」

「どうって……」

「狂気的と思いましたか?」


 私は目の前の彼らの死体に目を向ける。どの瞳も死してなお未だ爛々と輝いている。


「……それは、そうかもしれない」


 私のことがスーニャだと分かった瞬間のラフィエルの喜びよう、そして彼らの自分の命への顧みなさは同じ人なのかと疑いすらするものだった。


「別に話している間は普通だったよね? でも全然雰囲気が変わって……」

「そうですね。僕も別の使徒と会ったこともありますが、それほど特殊な印象はないです。彼らは通常の時は、普通の人とは変わりませんよ」

「……これは通常ではないからって?」


 レナードは『勿論ですとも』と頷く。


「アヌ教にとってスーニャは神を殺した憎き存在。悪魔と同義なんですから」

「それでもあんな命を投げ捨てるみたいな……」

「それは単に考え方の違いです」


 レナードは彼らの馬車に繋がれていた馬を離してやり、そして遺体に魔法で火を放つ。人肉の焼ける嫌な匂いが辺りに立ち込める。


「アヌ教の教えの終着点はアヌに還ることなんですよ」

「還る?」

「ええ。アヌから生まれた我々は、死んでアヌに戻る」


 輪廻転生に近い考え方なのだろうか? いやでも転生するわけではないか。


「全ての生物はその流れの内にある。ただ生前より善行を積んだものは、その分死後にアヌの寵愛を受ける事が出来る」


 目の前でパチパチと火種が弾ける音が聞こえる。煙がモクモクと立ち昇る。人が燃える匂いにも慣れてしまったのか何も感じなくなっていた。


「じゃあその善行ってので、私を殺すことが出来れば大殊勲ってわけだ」

「その通りですね」

「でもさ私はこうして生きてる。そしたらあの人達の行いってあんなに命を投げ打っても意味なんてないんじゃないの?」

「まあ結果が出ればそれは一番でしょうが。人それぞれでまた出来ることも変わりますからね。絶対的な評価になってしまうと、ごく一部しかアヌの寵愛を受けられなくなるのでは?」


 まあ確かにそれもそうか。私を殺したものしかアヌに戻れないのであれば世界に一人しか戻れなくなってしまう。


「……そろそろ行きましょう」


 レナードの魔法の効果のおかげで彼らの遺体、馬車は完全に消失した。勿論炎の後は残っているけれどこれなら誰がいたのかも分からないだろう。


「私達も移動しましょう。誰かに見つかってしまっては後々厄介です」

「そうだね。でも移動するってどこへ?」

「決まっているでしょう? グンネラの隠れ家へ」


『いったん落ち着いて話す必要があると思います。それにあの場所は今この世界において一番安全な場所の一つですからね』と続ける。


「まさかこんな形で戻る事になるとは思いませんでしたがね……」

「まあ、確かにね……」


 リムさんの事だ。もし厄介事を持ちこんだと分かれば大層お怒りになられるだろう。ただリーザの様子も気になるし戻る他ない。

 

 リーザはアヌ教徒、更には使徒だった。私は本人すらも忘れてしまっている情報を知った。でも何故彼女は忘れてしまったのだろう? 

 

 それは今の私には知る由なかった。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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