【3-10-3】
「ふん。らしくないんじゃないか? 貴様ならそのままに飛びかかっていくものかと思っていたがな」
「……流石にそこまでの間抜けじゃないですよ」
「で、なんだ? ただ様子見にきたわけではないのだろう?」
勿論そうだ。明確に目的があってここに来た。
「ええ。話というのは――「――スーニャ!! 遊ぼ遊ぼー!!!」
「ちょっと待ってねククル。今大事な話を――「――えー!! ダメだよ!! だってずっと遊んでないもん! もう絶対許さないからね!?」
ヤダヤダと駄々を捏ねる彼女に、リムさんはため息を吐く。
「……スーニャ。付き合ってやれ。話はその後だ。喧しくて敵わん」
「……うーん。分かりました。じゃククルいーよ?」
『やった! 早く早くー!』なんて弾んだ声と共に外に出ていく彼女を追いかける。事態は一刻を争うものだけれど、今無理に話を進める事も難しそうだ。確かに明確にその日が決まっているわけでもないし、リムさんもああ言っている事だ。ククルに付き合ってやるとしよう。
マーニャさんと話した後私はグンネラの隠れ家へと向かった。ドミニクには大分渋られたけれども途中までは馬車で送って貰ったのだ。そして久方ぶりにリムさん達の家に着いた。……なんだか若干戦闘の痕跡があるような気がしたけれど気にしない気にしない。
出迎えてくれたのはモノで、彼女は驚きながらに私を家の中へと迎え入れてくれた。ジー、ククルは私を歓迎してくれたけれど、リムさんは不機嫌そうにこちらを一瞥するだけだった。
ジーが出してくれたお茶を飲みながらに今までの状況を説明して、さて本題と言うところでククルに呼ばれたわけだ。
「何して遊ぶ!? 最近はね、誰が一番大きな穴を開けられるかで遊んでるんだよー!」
「……そりゃまた物騒な遊びを」
けして可愛らしいスコップで砂場遊びをしているわけではないだろう。……やっぱどう遊んでるのか想像するのはやめておこう。
「じゃあ何がいいかな!? 獣狩りにする!? ブルとか!? 最初は弾けさせちゃったんだけど、最近上手になったの! 綺麗に仕留められるようになったんだよー!??」
「うーんいや、それよりも……」
確かめておくべき事がある。それもあって私はククルの誘いに乗ったのだ。
「……ちょっとだけ遊ぼうか?」
私は手から炎を出す。ククルは最初はキョトンとしていたけれども、意図を汲み取ったのかニンマリと笑みを浮かべる。
「いーよ? ――アそぼ?」
その声が引き金となり、遊びという名の戦闘が始まった。
「――ッ!!」
私はククルへと炎を放ちながらに剣を構える。掛け値なし。全力で戦う。そうでないと意味がない。
彼女に炎や魔素の攻撃が効かないことは想定内だ。今まで嫌というほどに味わっている。今も魔素の塊を直接ぶつけても多少蹌踉めく程度だ。
「ほラ。――ワタシの番」
鉄球でもぶつけられたような衝撃が身体を襲う。思わず倒れそうになるも私は身体に魔素をありったけ込める。そしてその場を駆け、剣でククルの身体を横凪にする。多少なりとは効果があったようで彼女の身体には若干の血が流れた。
「痛い。イタイ。いたい。イたい?」
ククルは指で傷口を拭う。付着した血を指で伸ばしては遊んでいる。
「……うふ。ふふふ。キャハ。やっぱり、スーニャって面白い」
「……スイッチ入ってきたかな?」
続け様に剣を振るう。右に左に、上に下に、ククルはそれらを避けようともしない。傷はどんどんと増えていく。……ただそれのいずれも、とても命を奪うに至るものではない。
「あはっ。早い早い早い。すごーいスーニャ!」
クッソ。全然効いていない。私は内心仕打ちをする。どうすればいい? 何が彼女達への有効打になる? どうしたら倒す事ができる?
「じゃあ次は私の番。――ポンッ」
「ッッ!!」
私も咄嗟に魔素を放つ。何もないはずの空間からバリバリと衝突音が鳴った。ククルは驚いた表情で、ただ嬉しそうにしていた。
「凄い凄い!! これ防げるようになったんだ!?」
「何とかね……」
大体太古の神々が行う攻撃は似通ったものが多い。手を向けたり、指を刺したりというのは大体魔素を放つ時だ。ならそのタイミングに合わせて防御すればいいだけだ。
以前にはギィの攻撃も防ぐ事が出来た。とはいっても、明確な殺意を持って放たれたものならああはいかなかっただろう。それは今のククルのものも一緒だ。
「ね。……本気でぶつけてみてくれない?」
私の言葉にククルの瞳に爛々とした火が灯ったように思えた。
「いいの? 本気でやっちゃうよ? コロしちャうカモ?」
このような機会だからこそ試しておかないといけない。それに、死んだところで私に関係などないのだから。
「大丈夫。ちゃんと分かってるからさ」
私の言葉を聞くまでもなくククルはその手に魔素を込め始めていた。
「いーよ? スーニャもっともっと遊ぼ? もっともっともっともっと……!!」
「……ッ。いいよ。ほらおいで」
私もまたあらん限りの力を込める。自分の力がどの程度太古の神々に通用するのか確かめる為に。
「じゃいくよ? スーニャ。――死なないでね?」
その言葉と同時に私の身体が引き裂かれる。腕が飛び、身体に風穴が開く。伸ばしていた手の肉が剥がれ落ち、肉や骨が顕になり、そして粉微塵になる。
まだこれだけの差があるのか。私は自分の身体がボロボロになる様をただ眺め、そしてククルへと声を掛けた。
「……ククル。もういいよ。……ククル?」
知りたい事は知れた。これ以上は必要ない。ただ声を掛けたのに返事がなかった。どうしたのかと様子を見ると、ククルは『キュ〜〜……』と目を回しながらに倒れていた。
「……え。ちょっと大丈夫!?」
私は慌ててククルに駆け寄る。怪我なんかの心配は無く、単純な魔素の使いすぎのようだった。
「まだまだ本調子じゃないって事かな……。ごめんね〜、ククル」
彼女を抱き抱え家の中へと入る。ジーとモノは中からこちらの様子を見ていたのか『こっちこっち』とどこにククルを寝かせるべきか教えてくれた。彼女をベッドの上に置き、フウと息を吐く。
以前のククルならこれで倒れる事なんてなかったはずだ。まだ回復していない中で無理をさせてしまったのだろう。申し訳ないことをした。
それに、そんな本調子でないククルに圧倒されていたという事は今の私はギィには到底歯が立たないということだ。
「……ようやく五月蝿いやつがいなくなったな。それで? 話とはなんだったか?」
リムさんが私へと声を掛けてくれた。私は覚悟を決める。何回頭を捻ったって、他に手段はないのだから。
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