【3-10-4】
「……それで? どういうつもりだ?」
『わざわざここに私を呼び出して』とリムさんがいう通りに私は彼女を地下の部屋へと連れて行った。過去何度もこの身体に移植を施したあの部屋に。
「……さっきククルと久々に戯れあってみたんです」
私は今も変わらずに置かれている手術台を撫でる。ここであの時アンジェルの身体を移植した。ここから全てが始まった。
「ああ。中から見ていたぞ。凄いじゃないか? 充分戦えるようになった」
『そうだろう?』と私を見る顔にはニヤニヤとした笑みが浮かんでいた。
「……今の私じゃ貴方達太古の神々には歯が立たない」
「クク。そうだったか? 貴様がミームを殺した事は真実だろう? また同じ手を使えばいいじゃないか」
見ていたから分かるだろうにリムさんはあえて私を挑発しているのだろう。
「あの時はククルの助けがありました。ただまだあの子は戦える状態じゃあない」
「ならどうする? どうやってギィを倒す?」
リーザを助けるにはギィと戦うしかない。ただ私の力ではとても敵わない。ククルの力も借りられない。なら別の手を考えるまでだ。
「ええ。お願いがあります」
「先に言っておくがな、私の力は頼りにするなよ?」
全くもって白々しい。私がそんな事を頼むはずないと理解しながらに、冗談混じりにそんな事を言っているのだ。
「リムさんは最近は研究は進んですか?」
「ふむ? まあそうだな。邪魔が入る事もあったし思うようには進んではいないな。そういえばリーザという小娘は生き延びたのだろう? 実に興味深い。ぜひ調べてみたいものだな」
「ああ、リーザは私とはまた別の形でその能力を開花させていましたよ。再生能力も勿論ですが」
『なに!? 詳しく教えろ!?』と興奮していらっしゃる。ただここに来たのはその話が目的ではない。
「ね。リムさん貴方の研究の目的ってなんでしたっけ?」
「その言い方ならば覚えているのだろう? ……私が悪かった。まどろっこしいのはいい加減辞めだ。何が言いたい?」
リムさんが言う通りに勿論忘れるわけなどない。太古の神々としてはあるまじき望みだろうけれども、今の私にとってはこれ以上ないほどに一致している。しかし彼女が謝るなんて珍しい。それほどにご機嫌ということだろう。
きっと勘づいているのだ。今から私が言う事を。私はゆっくりと、だがハッキリとその言葉を彼女へ伝える。
「――移植してください。まだ私は強くなれる」
「……移植しろと言っても、何をだ?」
「決まってるでしょ。――ミームの身体ですよ」
彼女のその笑みが三日月状に歪む。
「さて? 私がミームの肉体を保存しているなんて言ったかな?」
「あんな珍しい素材、貴方が捨てるわけない」
リムさんは否定もしない。ただその笑みを絶やすことはなかった。
「今度こそ死ぬかも知れんぞ?」
「死なないですよ。……死ぬわけに行かないので」
「クククッ。良い目だな。久方ぶりに見た。まるであの頃のようだ」
あの頃というのは、ミームやガブリエットへ挑んでいた時の事を言っているのだろう。
「貴様の望みは成就した。もはや無理に生命を賭ける必要もなかった。生きる必要もな」
リムさんは両腕を大きく開き天井を仰ぎみる。
「だがどうだ? 貴様はまた新たな力を求めている。以前よりもさらなる危険を冒して」
その言葉にはかなりの熱量が込められていた。改めて私の口から聞けたことで抑えきれないほどに高揚しているようだった。
「クク。これこそギィが言うところのアヌの意思というやつだな。ククククッ」
「……なんでもいいですよ。それであの子を救えるのなら」
『とにかくお願いしていいですか?』と話を進めるよう促す。なんせ時間がない。決められたものはないのであれば、急ぐに越したことはないだろう。
「ああ構わんぞ。今すぐに取り掛かろう」
リムさんがモノやジーを呼ぶ。私はふぅと息を吐く。これでまた一歩進むことが出来る。
「……待っててね。リーザ」
移植が済んだ後どんな状態になっているかも分からない。ただ他に手段などない。なら私は躊躇なくこの選択をする。この身体に神を宿してみせる。
それがこの世界において許されるものではない事だとしても、それこそ今更の話だ。だって私は既に――。
――世界の敵なのだから。
この頃からかもしれない。相対するもののに、時折淡い球体のようなものが見えるようになったのは。
いつもお読み頂きありがとうございます!
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その上で大変申し訳ないのですが、書き貯めの為に投稿を一旦停止させて頂きます……。ごめんなさい……。
これからより面白い展開をお届け出来たらと思いますので、お待ち頂けたら幸いです!
そしてこの作品に加えて、別作品の投稿もチャレンジしていけたらと思っていますので、よろしくお願いします!




