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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-10-1】 極夜

 起きた時には景色は大きく変わっていた。白一色だった視界は今は緑が多くを占めている。暗がりだったはずなのに、今は陽も指していて時間が経過している事が伺えた。


「……起きたかの?」


 声はドミニクのものだ。彼はこちらを見る事なく馬を走らせ続けていた。


「……どこへ向かっているの?」

「言われた通りにバルディアじゃよ。他に行く当てもない」

「……そ」


 私はドミニク越しに前を眺める。今は森の中にいるようで辺りは木々に包まれている。人が通れるような小道が随分と先まで続いていた。


「……聞かないのかの?」


 ドミニクはここにきてようやく私へと振り向いた。肉付きのいい頬は、疲れからかどこかコケて見えた。


「……はは。聞きたいような、聞きたくないような」


 私は乾いた笑いをあげる。記憶は鮮明だ。どうなったのかも覚えている。あの時の瞬間も。


 リーザは私を守ったんだ。私の為にその身を犠牲にした。そんな事する必要なんてないのに。


「……イオリも一緒に行ったの?」


 あの時馬車を降りたのはリーザだけだ。といっても私が記憶しているまでの話だが。


「ああ。リーザが降りてすぐイオリは追いかけた」

「……まそうするよね」


 私はハァと大きく息を吐く。まったくもって度し難い限りだ。


「……怒らんのか?」


 ドミニクは意外そうな表情を浮かべていた。


「すぐにでも飛び出すかと思っとったがの」

「……一体どんなイメージ持ってんのさ」


 私は身体を大の字に床に寝転ぶ。木で出来た馬車の天井が目に入った。定期的にキイキイと鳴る木が軋む音が嫌に不快に感じた。


「……リーザは生きてんでしょ?」


 ドミニクはそれを肯定も否定もしない。ただ沈黙で返すだけだ。


「ギィは私も殺したいはずだから。そうなるとリーザを餌に私を引きつける方が早いはずだし」

「……そうだとしてどうするんじゃ?」


 どうする? そんなの決まっているじゃないか。


「――助けに行く。それ以外の選択肢ってある?」


 私の言葉にドミニクは呆気にとられた表情をしていた。


「……予想はしておったが、本気か?」


 彼は言わなかったものの『死ぬぞ?』という言葉を飲み込んでいたことは感じ取れた。


「分かってる。今のままではギィに太刀打ち出来ないって事くらいさ」


 そう力の差は歴然だ。あのディーヴァヌ山脈での一件で改めて痛感させられた。今の私ではとても歯が立たない。


「では何か策があるのか?」

「んー。まあ、ね」


 ミームの時はククルの力を借りた。でも今回は望めないだろう。リムさんだって頼んでも断られるはずだ。それなら結局頼れるのは自分の力しかない。


「上手くいくかは分からないけどさ……」


『それはどんな作戦なんじゃ?』というドミニクに私は曖昧な反応を返す。事実どう転ぶのかも分からない。その土台に乗る事さえ出来るか分からない。意味などないけれども、変な言葉を吐いたら未来に影響してしまいそうで嫌だったのだ。


「ところで、あとどれくらいでバルディアに着くの?」


 というか氷漬けになった所までは覚えているがそれからどの程度時間が経っているかも分からなかった。


「今日中には着くだろうの」

「え?」

「お主、相当意識を失っとったぞ。それこそ何日も」


 ドニミクの言葉に驚いてしまったが、話を聞くとどうやら私が意識を失っていたのは一日、二日では効かないらしい。身体の周りを覆っていた氷はどんな事をしても溶けず、ただ時間と共に少しずつだが水に変わっていった。


 ドニミクは私が死んでしまうのではと危惧していたようだが、顔が露出してからは意識は戻らないもものの呼吸もしており、血色も悪くないことから問題ないだろうと判断したのだとか。


「体調は大丈夫か?」


 ドニミクからそんな話を聞いた上でも体に特に気になる部分はなかった。腕や肩は問題なく回るしどこにも違和感はない。ただただ長い眠りから覚めたようだった。


「……あの氷はなんだったんだろうね」

「元々扱えたんじゃないのか?」


 いや違う。リーザはお世辞にも魔法の扱いに秀でていたわけではない。それなのに苦もなく氷を出していた。私が溶かすことも出来ないほどのものを。


「となるとやっぱり……」


 間違いなく移植の影響だ。きっと私と同じように不死鳥の力の一部を受け継いでいて無意識にも周りの魔素を吸収していたのだろう。だからこそあんな魔法を扱う事が出来たのだ。


「何にもないならいいんだけどね……」

「ん? 何じゃって?」


 ドミニクに私は『何でもないよ』と返す。今は何が真実なのかも分からないし思い悩んだって仕方もない。ならせめてこれからの事を考えよう。


「ドニミクはバルディアついたらどーすんの?」

「ワシか? またすぐにフクローランへ戻るぞ。置いておいた荷物も多いしの」

「は? でも危ないでしょ?」

「なーに言っとる。商人を舐めるでないわ。結局は地獄のサタも金次第よ」


 人差し指と親指で丸を作りながらにニタリと笑っている。……如何にも悪役ぽい顔だこと。


「……やめといた方がいいと思うけどねー」


 使徒にそういう交渉って有効的なのだろうか? あまり世俗的な所には興味無さそうだけれども。


「心配いらん。これまでも危機はあったが生き延びてきた。詳しく説明しようかの?」


『いい、いい』と返す。まあドミニクがいいならそれでいいのだろう。 


「とにかくワシがお前さんを届けるのはバルディアまでじゃぞ? それ以降は好きにしたらいい」

「それでも充分助かるよ。ありがとさん」


 私は起き上がり壁に頬を付ける。木でできているもののなぜか温かく感じた。


「……ちょっと寝る」


 ドミニクの返事を待たず私は目をつむる。今のうちに身体を休めておくべだろう。これから先の、息をつく間もないくらい苛烈な日々にむけて。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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