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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-9-1】 代償

「あーなんだってテメーらはッ!!」


 イオリが使徒の男性へ怒鳴り声をあげています。ただとうの彼は満足げな表情を浮かべながらに既に事切れていました。


「早くしろ!! 馬車に乗ればまだ――」


 ハッとイオリは言葉を止めました。彼女は私たちの後ろ、街の方面を見ていました。私達も釣られるようにそちらへと目を向けます。


「クソがッ!!」


 イオリはその苛立ちを隠そうともしません。


「今すぐだ!! 間に合わなくなるぞ!!」


 街の中で行く当てもなく揺らめていた灯りは、今や此方へ一直線に向かってきていました。それも物凄いスピードで。


「リーザ大丈夫? ちょっとごめんよっと」


 リムさんは私を担ぎその背に乗せてくれました。そんな子供じゃありませんよ! 自分で走る事くらいできます!


 と言いたい所ではあったのですが、実は今ももう意識が朦朧としています。立つのもやっとなくらいで、今すぐこの場に寝転んでしまいたいほどでした。


「……やっぱ体温がおかしい。戻ったらリムさんに診てもらおっか」


 リムさん? あれ。貴方がリムさんなのでは? あいやでもギィ様はスーニャさんだと仰っておられました。


 ……確かに、それであれば合点がいく事は多いです。スーニャさん自体も炎を操り、どんな傷でも再生して、赤い髪を持つ。そのどれもがリムさんと合致します。


 でも、リムさんはけして世間で言われているような悪い人なんかではありません。きっと何かの間違いのはずです。ミーム様やククル様を倒してしまうなんてそんな事するはずがないのです。


「本当に大丈夫……? 馬車に乗ったらもう大丈夫だから。休んでていーんだからね」


 だってこんなに優しい言葉をかけてくれる人がそんな悪人であるはずがないのです。でもどうか、そんなに心配そうな悲しそうな顔をしないで下さい。――私は大丈夫なのですから。


「あ、あうぅ」


 今だにちゃんと言葉を発する事はできませんが、それでも少しずつ音が出せるようになってきました。何とか喉を震わせると、リムさんは驚いたように私の顔を見つめてくれました。


「さっきもだけどさ、リーザ。随分と喋れるようになったんだねー!」


 上手く雰囲気を変える事が出来ました。しかし記憶を取り戻せたとはいえまだ喋る事はできません。毎日練習すれば回復するのでしょうか? でも何故だかそのようなイメージが頭の中に浮かばないのです。自分が喋っている姿を。


「よしドミニク! 待たせたね!」

「本当じゃわい! 早く乗れ! すぐに出すぞ!」


 私達は慌てながらに、ドミニクさん? という方が用意されていた馬車へと乗り込みました。


「ドミニクお前これどういう事だよ!!」

「そりゃこっちの台詞じゃ!! イオリ!! 作戦と違うだろうがのお!!」

「その文句はコイツに言え!!」


 イオリはリムさんの方を指差しながらにそう言いました。かたやリムさんは肩を竦めるだけで、気にも留めてもいなさそうでした。……相変わらずですね。


「それよりドミニクは大丈夫だったの?」

「昨日くらいからどうやらつけられていたらしい。抜け目のない奴らじゃよ」

「あーそれならドミニクが悪いんじゃん? ちゃんと撒いておかないと」


『喧しいわ!』なんてガヤガヤと皆さんが話しています。私は話についていけずでしたが、なんだか仲良しさんなんだなーなんて思っていました。


「ひとまずフクローランを抜ける! その先は行けるとこまでいくぞ!」


 ドミニクさんはお馬さん達へ強く鞭を打ちました。べチンと乾いた音が鳴り馬車が走り出します。


「使徒達の様子はどうなんじゃ!?」

「うるせーな。ガタガタ騒ぐなよ。アイツらとはまだ距離がある。この調子なら何とかなるかもな」


 イオリの言う通り使徒達は街から出て此方へと向かっているようではありましたが、まだ大分離れています。それに徒歩でしょうから、こちらが馬車であれば追いつかれる事はないでしょう。


「あのさー思ってたけども転移魔法とか使えないの? あれだったら一発じゃん」

「……お前は使えんのか?」

「いや私は使えないけども」

「ならそーいうことだ」


 リムさんはぶーと口から音を鳴らしながらに、分かったというポーズを取っていました。


「……あのなあんな魔法そうそう使えねーんだぞ。めちゃくちゃ魔素の消費は多いし扱う難易度も高い。送り手と受けても必要になる。普通な奴らにゃ縁遠い魔法だ」

「え、そうなんだ」


 リムさんの反応にイオリは呆れた様子をしていました。

「過去に無理に試みた奴がいたがな。大概失敗した。で失敗したらどうなると思う?」

「あれじゃないの? 全然別な場所に出ちゃうんでしょ?」

「あーそうだ。雲の上やら水の中やらな。それならまだ良い方だ。身体の一部だけが移動したなんて例もある」


 身体の一部って……。それは頭や胴体だけと言う事でしょうか……。


「その話が広まって今扱う奴はごく僅かだ。まあ火遊びしたいってんなら止めないがな」

「……冗談。ってかこれから使う時が怖くなっちゃったじゃん」

「はっ。まだ使おうって思うだけ狂ってるがな」


 あれ? 私はお母様に確か転移魔法を使って逃げさせて頂いたような……。もしかして大分ギャンブルだったのでは……。


「とにかく今はここから逃げるぞ。行くアテもねーけどな」


『ほらもっと飛ばせ!』『もうしとるわ!』なんて声を受けながらに先へと進みます。前方は暗く月明かりが照らす範囲はごく一部でした。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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