【3-8-1】 脱出
「――ほら。リムさんですよー?」
目の前にいるリーザは驚きからか呆然としていた。
「あれ? 結構感動の再会の筈なんだけどなー。それにタイミング的にも完璧じゃない?」
リーザの頭を撫でてやる。彼女は意識が追いついたのかハッと表情が動いた。最初は困惑が、次に喜び、そして最後には悲しみの色が浮かぶ。
「……ま話は後でゆっくりにしよう。今はそれどころではないみたいだし」
チラリと視線を向ける。先にいるのはギィだ。何やら身体はボロボロで、えらくご機嫌斜めなご様子だった。
「……スーニャ? なんでこんな所に」
「今はリムって名乗ってんだけど? ……そんなん決まってるでしょーが。――リーザを助けに来たんだよ」
「……あっそ」
よく見るとその体には傷が付いていて血すらも流しているようだった。……太古の神々が怪我をしたってこと? 俄かには信じられないけれども。
「なんだか凄い音がしたから慌てて来てみたけどさ、ひとまずリーザが無事でよかったよ」
とはいっても間一髪だった。ギィは今まさしくリーザを殺そうとしていた。手遅れでなくて本当によかった。
「さてじゃあこれからだけど……」
「……私からすればちょうどいい。お前もここで死んでいけばいい」
「……おっと」
ギィが放った魔素を慌てて相殺する。
「随分と乱暴だなぁ。こっちは久々に話してるんだ。ちょっとくらい時間くれたって罰は当たんないんじゃないのー?」
「……罰?」
あれ? 何故だかギィの様子が変わる。
「お前みたいな存在が何を知っている。適当な事を言うなよ?」
「……よく分かんないけどさ。随分イラついてんだね?」
前に会った時とはまた印象が違う。今は何というか、まるで……。
「――ただの駄々こねた女の子みたいだ」
「――ッ!!」
私の呟きが聞こえたのかギィは更に怒りを露わにする。そして所構わずと魔素を放ってくる。
おいおい。建物壊れてるけども大丈夫? 床とか柱とかも砕いちゃってるけどさ。
「ま何でもいーけど。ひとまず私達は逃げさせてもらうわ。元々の目的はそれだし」
「……素直に逃すと思ってるのか?」
「まさか。でも逃げさせてもらう。アンタと直接ぶつかっても勝てないし」
いくら私が強くなったといっても太古の神々は別だ。彼女達と真っ向から戦っては勝てる見込みはない。……まだ、ね。
「だからここでサヨウナラ。出来ればもう二度と会いたくないね」
私は体に魔素を込め魔法を放つ。
「何を!? 待っ―「――エクスプロージョン」
辺りが灰燼に包まれる中私はリーザを抱えその場から離脱する。追いつかれる前に少しでも距離を稼がないと。
「ほらリーザ急ぐよ!!」
リーザの手を引きその場から離脱する。身体に魔素を込め可能な限り速く。後方には使徒らしき女性が立っていた。確かプリエールと言ったっけ?
「……?」
逃がさないように邪魔をしてくるものだと思ったけれども、プリエールはすれ違い様も何をするでもなくその場に立つのみで私たちを追いかけてくる様子もない。
「……なんかよくわかんないけど。まあいっか」
神殿の構造はある程度頭に入っている。元々は誰にも気づかれない内にリーザを救出する作戦ではあったけれどこうなっては仕方ない。
途中途中使徒らしき人達がこちらに気づいた。皆一様に驚いた表情を浮かべ止めた方がいいのかと逡巡しているようだった。
「ほら! 邪魔だよ!!」
私はその隙にどんどんと先へと進む。すぐに外へと出て、橋までも到着する。まだ辺りは暗い。橋の先は真っ暗で、まるで闇の中へ突き進んでいくようだった。
「……リーザ? 大丈夫? 街を抜けたら馬車を用意してあるからそこまでは何とか我慢してね」
リーザは首をふるふると首を振っている。それに何故かその場に留まろうとしていた。
「こらこら。どしたの? ここにいたらヤバいって。逃げてお菓子でも食べよ」
私はリーザを改めて抱き抱え橋へと進む。後ろからは使徒達が気づいたのか慌てた足音と話し声が聞こえた。
「……まそりゃ追いかけてくるよね」
再度身体に魔素を込める。橋を抜けたら街へと入る。そこまでいけば奴らも下手な事は出来ないはずだ。路地に入ってしまえば、身を潜ませる事も出来る。そこまでが勝負だ。
「リーザ。大丈夫?」
私は走りながらに彼女へと話しかける。何やら様子がおかしい。意識を取り戻した事と無事に出会えた喜びが薄れてしまうくらいに。
「……何があったかは後で教えてよ」
あの部屋の中は明らかに戦闘の痕跡があった。床や壁は傷ついていたし何よりあのギィが血を流す程の痛手を負っていた。
「一体誰が戦ってたの? その人はもしかしてリーザを守ってくれてたのかな?」
ハッとリーザは顔をあげる。その表情はとても悲しいもので彼女は涙を瞳に溜めていた。
「やっぱり? でもじゃあその人は……」
あの部屋の中にいたのはリーザとギィ、プリエールの3人だけだったはず。ということは、その人がどうなったのかは想像に難くはなかった。
「……その人の為にも何とか逃げないとね」
私は誰とも知らないその人を想う。生命を賭してまでリーザを助けてくれた事へ感謝をしながら。
「よっしじゃあそろそろ橋抜けるよ!!」
橋の先にはイオリがおり驚いた表情を浮かべながらにこちらへと手を振っている。横には男性と思われる人がもう一名フードを深く被りながらに立っていた。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――
評価・ブックマーク・ご感想という形で、どうかあなたの想いをお残しください。続きを書く励みになります。
(……でないと、力尽きるかもしれません)
※評価は星マーク、ブクマはお気に入りからお願いします。




