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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第3部】 うつろわざる世界

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【3-7-1】 ダリア

「リーザ。どうぞこちらへ」


 私は手を引かれながらにお城の中を進みました。ここは一体どこでしょう? どこか懐かしい気がします。


 それに先程まで長い長い夢を見ていたようでした。それはとても懐かしく温かく、ただ悲しい。そんな夢です。今も私の胸の中には喪失感がありました。


 この目の前の女性もどなたなのでしょうか? 私はぼんやりと頭を動かします。なんだか霞が掛かってしまったように思考が定まりません。確か私はリムさんと一緒に……。


 女性は訝しむように私の身体を見回しました。どこか変な所でもあるでしょ――。


 ――そうだ。私はリムさんと共にディーヴァヌ山脈へと向かいました。目的地の付近でこの女性、確かプリエールという名前だったはずです。そして太古の神々であるギィ様に出会ったのです。


 私は自分の身体中を確認します。あの時私の身体はボロボロというにも足りない状態だったはずです。それなのに身体の欠損どころか痛みもありません。あの後に治癒頂いたのでしょうか? でもそれでも回復出来る怪我ではなかったように思えます。


 それに何故今このプリエールさんと一緒なのでしょう。リムさんはどこにいるのでしょうか。……もしかしなくても、これってかなりピンチな状況なのでは。私はリムさんから頂いた短剣を握りしめます。どうか、守ってくださいと。


 辿り着いたのは大きな扉です。プリエールさんはトントンと扉を叩き声を掛けました。


「ギィ様。失礼致します」


 ゆっくりと扉が開かれます。私は今すぐ走って逃げ出した方がいいのではないかと思いました。けれどもここが何処なのか今どのような状況なのかもわかりません。それに、逃げた所ですぐに捕まってしまうでしょう。なら今は従っておいた方がいいと考えたのです。


 開かれた先で、一番初めに目が付いたのは最奥の壁一面に飾り付けられた色鮮やかなステンドグラスでした。アヌ神を中心に六体の天使が囲う図柄です。あいにくと今は夜中の為に薄暗くなっていますが、日中のお天気が良い日にはそれは美しく輝くことでしょう。


 しかしこの部屋は礼拝のための広間か何かなのでしょうか。かなりの人数が入れそうですが。


 最奥には数段の階段の上に椅子があり、座っていらっしゃるのはギィ様でした。隣にももう一名いらっしゃるようです。フードを深く被っている為にどなたかは分かりません。


「お。ようやく起きたか。リーザ調子はどうだ?」


 その声に私の身体は突如として震えが止まらなくなりました。冷たい汗が吹き出して背中を伝うのが分かります。


「そんな所にいないでこっちにくればいい」

「……リーザ。言う通りに」


 私は一歩一歩と前へと進みます。


「ホントよく助かったな。かなりの重傷だったと思ったが」


 私が歩く様子を見ながらにギィ様はそんな事を仰っていました。


「あの時私は本気でお前をアヌ神へ還そうと思っていた。それにも関わらずまだ生きているというのは、きっとお母様のご意志なんだろうな」


 段々と距離が縮まっていきます。


「喜ばしい事だよ。まだリーザと共に在れるんだから。こんなにも嬉しい事はない」


 私は階段の手前で立ち止まりました。ドンドンと緊張感が高まっていきます。


「私は、この世界が大好きだ。愛している。生まれた子らも何もかも。でも許せないものもある。なあ何だと思う?」


 私はただただ立っているだけです。でも意にも介していないようでした。


「それはこの世界を汚される事。分かって貰えるかなぁ?」


 私は何を言っているのか分からず首を横に振ります。


「うんうん。素直で宜しい。この世界はお母様が作られたもの。だから全ては完璧って決まってる。それ以外の存在はいちゃいけない」


 それ以外というのは一体なんでしょう? 私の疑問を汲み取ったのかギィ様が補足をしてくれます。


「産まれたままの姿でいい。与えられた生命のあるがままに。そうでないとこの世界は壊れてしまう」


 そうなのでしょうか。確かにアヌ神が形創られた世界は美しいものでしょう。でも、だからといって何も変えてはならないという事になるのでしょうか。


「私はずっとずっと守ってきた。この世界を、この世界を汚す毒から。それなのに何処までも出てくる。消して消してもその膿は産まれる」


 ここでギィ様は私の方をキッと睨みつけました。


「……リーザ? お前、とっても変だよ。気付いてる?」


 ……え。変というのはどういう意味でしょうか? 別に身体に違和感があるわけでもないのですが。


「分かってないんだろうな。 ……お前混じりあってるよ」


 混じりあってる? その意味が私には分かりません。でもけして良いことではないのだろうとは感じ取れました。


「その傷を回復させる為なんだろうな。普通生きていられない程のものだったから」


 やっぱり私の記憶違いではありません。あの時に大怪我を受けたのは事実なのです。ギィ様達が治してくれたわけではないということは、リムさんのご関係なのでしょうか?


「全く……。耐えられない。許せない。信じられない」


 ギィ様からは明らかに殺気が迸っていました。私は無意識に後退りをします。本能がそうしろと命じていました。ただすぐ後ろにはプリエール様が立っていて、私が逃げるのを阻んでいました。


「……ただ一つだけ救われる道がある。それこそがアヌ神のご意志なのかもしれない」  


 私はギィ様からの圧力はどんどん、どんどん増してきていて気を失ってしまいそうでした。


「新たな神託を授けよう。リーザ。この意味が分かるな?」


 神託? 確かそれはアヌ教の使徒の方に与えられるご指示でしたでしょうか? でも何でまた私にそれを出すのでしょうか。


「その神託は、――自身の死を受け入れること」


 その言葉に私は絶句してしまいます。なん、ですか。それは? 到底受け入られるものではありません。ただギィ様のお言葉はまだ続きます。 


「そしてお前へも神託を与える。今度こそリーザを殺せ。――ダリア」 


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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