金星着星
サナエさん達と別れアフロディア大陸のユルト地域に降下したタツマとアルプ。 東部地区にありつつも島嶼国家群に属しているユルト自治区からウェヌスの彼らの足跡が始まる。
--- ウェヌス降下
「ウェヌスかー」
“マラム地域”の ユルト自治区のユルト宇宙港にいる。
ユルト自治区は、島というには広く、大陸には小さいといったところだろうか?
それにしても日差しが強い、マールスとは真逆の環境になる。
……夏季とはね。
宇宙港のロビーから出て日差しを浴びているタツマとアルプ。 長旅でのぼやけた感覚も日差しを浴びることでリセットした感覚になる。
『本日も暑そうですね』
“おーい。タツマ― ”
遠方から声が聞こえて来る。
『相変わらず、大きな声ですね』
向こうから副社長が、やって来る。
――アロハシャツかよ
徐々に近づいて来て、普通の声でも会話できるまでになる。
「よータツマ。 よく来たなー」
親戚のおっさん様に振舞ってくる副社長。
「よく来ましたよ」
呆れ具合にタツマが返答する。
「運搬ありがとうなー 荷物はこれから俺たちの船に乗っける予定だ」
そんな感じにフレンドリーに接してくる副社長の後ろに綺麗めな女性がいる。
「へー。あなたが、キャミャエルさん?」
ムサイオッサンの脇にホットパンツにタンクトップで露出多めの美女が、こちらに話しかけてくる。 因みにウェヌス人だけあって、タツマより大きい。
―― おっと。美人の娘がいるぞ! 褐色系の肌が健康そうだ。
「あたいは、ティルパ・ケーネス。 よろしくね~。 あんたの名は聞いているからいいわよ」
黒髪のショートカットで活動的な恰好している。 ウェヌスの女性らしく体が大きく筋肉質であり体躯はあるものの、凹凸の迫力は、その風姿から見て取れる。
―― ウェヌス編のヒロインか? ついにハーレム形成に向けて動き出すか?
その視線に気づき副社長から釘が刺される。
「タツマ。 こいつは俺の娘だ。 まぁ無いとは思うけど。手出したら絞め殺すからな」
「恋愛は自由でしょう。 既に成人もしてるし! 」
タツマが言い返す。
「お前は結婚しているだろう! 」
「大丈夫よ。パパ。あたいは、パパ以外とは無理だから」
なにやら不穏な発言にタツマは、目を細め副社長を疑いの目で見る。
「まってくれタツマ。 お前は何か勘違いしている。 俺が娘に手を出すような外道に見えるか。 ティルパも少しは、他の男に興味をもってだなー」
―― 彼女はファザコンなのか?
それにしてもあの強面で体がでかい副社長が、娘の前ではこうもコミカルになるとは――いや、意外でもないか、家族仲がいいことは良いことだ。
『タツマ。先ほどの件はマスターに送信しますか? 』
アルプからの指摘。
「ダメに決まっているだろう! 問題しか起こらない状況を作るなよ! 」
端末にサナエさんからメッセージが届く。
<5浮気ポイント。100浮気ポイントに溜まったら、切るから>
―― ……おかしくない? いつも。 いつも。
*
そんなこんなで“マラム地域” ユルト宇宙港で、旅客自動車を捕まえて出発する。 運転手と合わせて5人乗車しているため、車内はかなりきつい。
旅客自動車の窓からの景色は、幻想的というのかなんか不思議な感じがある。
―― 基本的に街並みが、白だな。
副社長が話しかけてくる。
「良い街並みだろ? 」
「ええ。 お洒落な街並みですね」
タツマが答える。
「日差し対策だ。この辺りは、日差しが強いから白い石灰で太陽光を反射させるんだ。それに石灰自体も潤沢にとれるからな」
「人が呼び込めれば、観光地にでもなりそう」
「そうだな、アフロディア大陸の治安イメージが良くなれば、少しは変わるだろうがな。これだけの観光資源が埋もれているのは寂しい限りだ」
「お客さん。ここは初めて? 」
旅客自動車の運転手が話しかけてくる。
「こいつは、初めだ」
助手席に座っている副社長が親指でこちらを指名してくる。
「ようこそウェヌスへ。 治安の悪い場所も多いが、楽しんでいってくれ」
「大丈夫だって。俺がいるかなら! 」
「お客さんは “マラム地域”の出身かい? 」
「おう! そこの住民よ」
「気を付けてな。アッカの代表が代ったらしくて、色々ごたついているらしいから」
「アッカ? 」
『マラム地域の農業中心のコミュニティになります。 マラム地域は、いたるところで断続的な衝突が頻発しており、治安は良いとは言えません。 観光をする際には、現地人のガイドをつけることを推奨します』
アルプが説明してくる。
「おお、そのトークン随分饒舌だねー。 まっ。 そうゆう地域だ。 お客さんも地元住民さんの意見を尊重したほうがいい。 そうすれば、大概のごたごたは回避できるさ」
「内乱地域に観光資源なんかあるの? 」
タツマが、アルプに疑問を呈する。
『旧ウェヌス人類の遺跡が、樹林地帯の多く残っています。 “ラドゥニッツァ遺跡”など考古学が好きな方には垂涎の代物でしょう。
“アフロディア大陸 西側のエイストラ地域”のような、激しい戦闘に巻き込まれていないのが功を奏しているようです』
「へー」
―― 知らんけど
「とはいえ、お客さん。 東側の散発的小競り合いが続いて収束の目途が立っていないともいえる。 一発ドカンとした方が何かとはかどるかもね~」
旅客自動車が、悪気なく話してくる。
「タツマは、帝国領か、島嶼、クピドーあたりが多かったからな。 こっちのことは、知らないだろ? 」
副社長からの発言。
たしかに、この辺りはごたごたが多かったため、“衛星クピドー”での荷の取引が多かったことは覚えている。
「たしかに……。 安全のためガイドよろしくお願いますね」
旅客自動車は、海を目指して進行中。
--- ユルト自治区 港湾エリア
海だ……船もそこそこ停泊しており、それなりの規模の港街だ。
旅客自動車を途中で降りて、繁華街を一行が歩いている。本来であれば、港まで一直線の方が、早いが昼食を取りたいとティルパ嬢からの要望のためである。
繁華街と言うこともありそれなりに人も多く、賑わっている。
先に歩くのは副社長とタツマ。 後ろからついて来るのは、ティルパ嬢とアルプになる。 後ろの両名は、周囲の店を物色している、
観光気分の後方を置いてタツマが、副社長に話しかける。
「で? 副社長。 そろそろ本当のところ聞きたいところですが? 」
「……まーお前さん相手に、いつまでも隠せるとは思っていないさ。 俺の家に着いたら説明でもいいか? 」
「分かりましたよ」
「それは良かった。 とりあえず、腹ごしらえの後、荷を確認して、船に乗り込む感じでいいかな?」
「了解だ」
「おーい。“ティルパ”!! この辺りにうまい飯屋はないか? 」
副社長が大声を出して、指示を出す。
ティルパ嬢は、かなり後方の方でアルプとの会話を楽しみながら、歩いている。
我々の歩く速度が速かったようだ。
まぁ、あそこまで流暢かつ語彙が多いトークンは、なかなかいないからね。
「ちょっとまってー」
返事が返ってくる。 アルプと何か相談しているようだ。飯屋の検索でもしているのだろうか?
それにしても、彼女が副社長の娘というのが信じられない。
--- シーフード・ダイナー
ウェヌスは、海が広いため、海洋生物が豊かである。そのため海の幸も豊富である。
「マールスでは、海の幸はあまり食せなかったが、ウェヌスは、牧畜より海産物だからな。 とりあず、食べてくれ! 」
副社長が、かなりの料理を注文した。 魚貝類の基本はグリルだが、蒸し料理や煮物? もある。 テラの海産物料理とあまり変わらない。
「テラと余り変わらんだろう? あいつらの調理手法や味付けも取り入れたんだ。 流石に生は、この辺りは抵抗が強くないけどな」
食事の好みだけは、他人が口を出せない領域になる。 とはいってもレアのグリルは、いける。 かなり美味しい。 赤身に白身、甲殻類までさまざまである。
「この辺りは、海産物が特に旨い。 白い建物に海産物。良い観光資源なんだけな」
「でも、観光客のような人は少ないよね。 さっきの運転手もアフロディア大陸の治安って言っていたけど」
「正確にはアフロディア大陸南部マラム地域の治安だな。 先ほど言っていた通り、どこかで何かしら、ドンパチが発生している。 そして常に火薬のにおいがあるとのイメージが着いちまっている」
「どうして、そんなことに? 」
「国というか、人の居住地全てが、コミュニティレベルなんだ。 ゆえに法律も条約もない。 つまり、寄り合いしかない場所ってやつだ。 だから地域が不安定なんだ」
「なるほど、そうなると頻繁に色々おきると」
「ああ。 しかし、そんな混沌の大地アフロディア大陸マラム地域の中にあって、タミナやアッカは、それなりに大きくて法治管理が機能している」
「へー」
「といっても、人は普通に生活し、毎日戦争ってわけでもない。 まぁここからすると、海向こうは地獄との認識が強そうだがね」
副社長の顔に不満げな表情になりながら、話を続ける。
「それにこの辺りは、航空便が無いのも陸の孤島に拍車をかけている」
「飛行機なら先ほど乗って来たけど? 」
タツマが反論する。
「あれは降下用の宇宙船だろ? 日常の足としての航空便がないんだ」
「なぜ、そんなことに? 」
「長引く内戦で、航空部品がなくなっちまってな。 特に航空部品が西側地域から手に入らなくなったのが痛い」
「なるほど。 それで船移動か」
「ああ。しかし、遠くから客を呼ぶにはどうしても航空機は必要だ。それに治安の良さだな」
そんな憂鬱な会話している隣では、ティルパさんが料理にがっついている。
「いやー。こんな美味し料理! 久々だー」
ティルパ嬢が、ムシャムシャ食している。
――よく食べるなー。食用旺盛ですね。
そんな光景を見ていると多少憂鬱が削がれていく。
「そうか……ところで、ユルトから副社長のタミナまでの移動時間は、どのくらい? 」
「明後日の朝にだな」
――また随分な船旅だな




