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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
13章 金星航路
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番所衛星

テラ(地球)ウェヌス(金星)・ポータル付近


マールス(火星)の同様、ポータル付近は賑わっている。


サナエさんも試験を中断して、ブリッジに来ている。

ケルンや生まれたてのセレン(トークン)もいる。


サナエさんが、ブリッジのモニターを見ながら呟く。

「ポータル付近って、どこでも賑やかなのね」


広い宇宙の人工オアシス。 賑やかにならないはずがない。 特に他宙域に入れない宙域貿易商は、ここで荷物の積み替えを行う中継ポイントになる。


「社長。 テラ・ウェヌスポータルが渋滞ですね。 明日の予約にすれば余裕がありますが、追加料金で無理やりねじ込みますか? どうします 」


アリエフさんからの報告があがる。

「じゃぁ明日でお願い――となると、ここのコロニーで一泊だな 」

「おお! いいじゃない! 」


サナエさんが、まだ来たことない場所での宿泊に少し興奮している。


「本当ですか!」

ケルンも興奮しているようだ。


「ポータル待ちだからね。 それにスケジュールに余裕はある。 問題ないさ」


「そんなに混んでいるの? 」

サナエさんが聞いて来る。


「かなりね。 まぁ無視して急ぐ必要もないし。 それにセレンの実地試験も兼ねて物見遊山もしたいしね」

モニターに映る多数の宇宙船とポータルを見ながら、タツマも呟く。


「それにしてもポータルのヘイロー(空間跳躍ゲート)ねー。 人類は、よくもまぁこんな巨大なものを作り上げたもんだよ」


「空間削孔技術を用いて多くの宇宙船を通すためには必要なのよ 」

サナエさんからの発言。


「らしいけど。それに炭塵理論だっけ? あれもよくわからないし、11次元とか言われてもイメージがねー」


タツマのその発言に食いつくサナエさん。 急に偉そうになってくる。

「ふふふー アカデミックでは私の方が上ねー。 知りたい? 」


何か説明したいような雰囲気を醸し出してくるサナエさん。

こうなっては、従った方が彼女の機嫌も取れるというもの。


「それじゃぁ、素人にもわかりやすく」


「原始宇宙は11次元であった。 それが大きなエネルギーにより次元崩壊をはじめるの。 最終的には、基底状態の3次元空間に向かって次元遷移を起こしていく。


11次元から3次元への次元遷移により発生する莫大なエネルギーは、第五の力としてその形を変え空間を作ることになるけど、それでも莫大なエネルギーは、消化不良で完全消滅しなかった。


その消化不良分のエネルギーは残滓となり燻って空間にとどまることになる。

そしてこの状態を炭の状態であると表現したの。


その燻っている炭が、ダークマターでありダークエネルギーの正体である! ってわけ? わかった? 」


「……」


――わっかたよーな、わからんよーな。 その炭で宇宙空間が、満たされているのも、よく分からない


サナエさんの独演会は続く。

「炭であれば着火すればまた燃えるとの着眼点により、実際に点火し宇宙空間に人工的に別空間を作ったのがワープバブル理論。 


それに指向性を持たせて空間を削孔するために使用したのが、空間削孔技術ってわけ。 さしずめ人工宇宙ね。 


空間理論からダークマターなどの物質の意味を解き明かし、技術の発展に寄与した過去最高位の理論ね」


「……」

――宇宙だからかワープバブルを展開すると真っ暗になるのかね? 


「マールス人の誇りよねー炭塵理論が今の時代で公表されたら惑星間科学賞は間違いなしでしょう! 」


「おう! 」


「あんた! 聞いてなかったでしょう! 」

タツマ達のイチャイチャが始まる。


この世界の空間跳躍は、ポータルを用いて通常空間に孔を開ける運航方法になる。

簡単にいうと通常空間を傷つける作業に他ならない。


そのため、孔をいつまでも開けておくことは出来ない。

一定時間が経つと傷口が塞がるように通常の空間に戻る作用が発生する。


そうなると、完全に異空間に閉じ込められることになり、通常で考えると助からない。

そのため、ポータルは一定の間隔を置いて開けて閉じる作業が発生する。


そして、開いている時間も決まっているため、跳躍できる船にも限りがある。

便利な分、何かと制約も多い。




--- テラ・ウェヌス・ポータル・コロニー


テラ・ウェヌス・ポータル・コロニーは、テラ・マールスコロニーとは少し違った歴史がある。 始まりこそ、同じこのポータル建築のための作業員や科学者のための飯場として使われていた。


しかし、コロニーが出来た当時から、イシュタル帝国の貴族主義(アリストクラシー)が横行しており、コロニーの財が無秩序に彼らの懐に流れ込む状況にあった。


状況が一変したのは、コロニー内の汚職と管理費用の重荷に耐え兼ね、イシュタル帝国がコロニーを手放したところからである。


当時の統治者は、そのまま居座る気でいたが、イシュタル帝国の(くびき)が外れたことで住民の革命が発生。 イシュタル帝国のかつての貴族はコロニーから追い出されることになる。


その後、統治方法で2転3転と政権の変遷があり、最終的にマキナクラシー(機械政体)に落ち着くことになる。


特権階級がいなくなったことで、汚職の一掃を実現することになり、結果、行政効率が向上し、余分な資金の流出がなくなったことがあげられる。


今では、AIに立法と行政を任せて対応しているようで、選挙もAIが選出した重点政策に投票する形で行われる。選ばれた政策を中心にリソースを割くといった具合である。


議員がいないため、変な扇動家も現れていない。

このような改革を通して、それなりの住みやすさになっている。


「やっぱりいつ見てもコロニーの大きさには、圧倒されるわね」

サナエさんが、ブリッジのモニターからコロニーを見て感嘆している。


タツマも見慣れているとはいえ、やはりその大きさに関心はしている。

とはいえ、ウェヌス系のコロニーは、マールス系のコロニー比べて大きくできている。




---テラ・ウェヌス・ポータル・コロニー ベイエリア


カムカム号が、コロニーのベイエリアに着岸する。

マールス(火星)とほぼ同じシステムのため、惑星間貿易商のためIDだけで出入りが可能になっている。


ケルンも一緒にコロニーに入るかと思えば、カムカム号のブリッジでシップマスターに宇宙でのマネジメントを叩き込まれている。


『コロニーに入りたいのであれば課題を終わりにしてからです! まず、惑星上と違って、宇宙は死近い場所です。 甘い判断はクルー全員の命に関わります! もっと鋭敏な判断を! 』


AIといえど、スパルタ教育になっている。


そんなケルンを横目にタツマ達は、ベイからテラ・ウェヌス・ポータル・コロニーに入る。

コロニー内は、相変わらず天井に巨大なビル群が張り付いているのが見える。


高層タワーというと豪華で、リッチマンが住むイメージが強いが、ここの様子は少し違う。どちらかと言えば無機質なビル群といった感じである。


言うなれば、効率性重視で建築された住居との表現が適切になる。


「これがコロニー? 」

サナエさんもその様子に圧倒されているようだ。


マールス系のコロニーのような少し未来的なものをイメージから、かけ離れた異様な雰囲気を漂わせているのがこのウェヌス・ポータル・コロニーである。


「感想は? 」

「なんか、圧迫感が凄い。 なんか……その……刑務所みたいね」

言い得て妙な感想を漏らすサナエさん。 そして感想を続ける。


「マールスのポータルコロニーは、緑もあって中空が開けて、開放的だったのに。 ここは空間密集率が凄い」


「テラ・ウェヌス・ポータル・コロニーは、マールス・ポータルコロニーと経過が違うからね」


「経過? おなじポータル労働者の居住空間でしょ? 」


テラ・ウェヌス・ポータル・コロニーは、治安が良くなったとは言え、それは、ウェヌス基準でしかない。 周囲の人間が、マールス(火星)人の彼女を見る目が、多くなっている。


ここで変に絡まれても面倒なので軽食屋に案内する。


「まーそろそろお腹も空いたでしょう? あそこの軽食屋でも入らない? 」

サナエさんとアルプを連れて軽食屋に入る。


軽食屋と言っても喫茶店ですね。サーモンサンドとティーを注文する。サナエさんはホットサンドを注文している。相変わらずホットサンド好きですね。


「で? 経過って」

ウェヌス(金星)の状況って知っている? 」


「歴史や資料で読んだだけだけど、※1ビッグフォール後の大洪水時代との認識はしているわ。 多少、水は引いているらしいけど」


「そう。 大洪水の発生で多数の人と多くの土地が水の中に消えた。今から2000年前の話かな? 


多くの人が消えたが、それ以上に陸地が消失し、住民の密集率の異常な上昇で深刻な環境問題を引き起こしたんだ。


人口を最適数にするために、当時のウェヌス各国政府は、宇宙にウェヌス人を上げざるを得なかった。 良く言えば大洪水からウェヌスの民を救う方舟っといったところかな? 」


「方舟? 」

テラ(地球)の神話に出てくる話さ。大洪水時に動物の(つがい)を乗せて、災害を生き抜いたっていう物語」


「へー悪く言うと」

「宇宙棄民といったところかな」


喫茶店もお昼を過ぎているため客も少ない。

室内に音楽が流れているため、話している内容は聞こえづらい。


「最初の避難場所は衛星クピドー。 大洪水前まではウェヌスは3惑星屈指の科学技術力をもっていたからね。 衛星に居住できるスペースを確保していたんだ」


「へー中々に歴史が長いのね」


「確かにクピドー利用の歴史は長い。 その様に宇宙に人を上げても地上の人はなおも多かった。 当時、クピドーを中継地としてウェヌス宙域にコロニー群を作る壮大な計画を立てて実施していたからそれらのコロニーに分散して民衆を分けていったんだけど――色々ね」


「……」


「そのような背景もあり、ウェヌスのコロニーが空間を住居として使う建築が多いんだ。 デザインや風景よりも実用性を重視しているからね」


「ほー」

サナエさんは、中々驚いた顔をしている。


話している間に注文したものが到着する。 焼きたてのいい匂いがする。


「それでここで何をするの? 」

「まぁそれは食事の後に説明するよ」


タツマがサーモンサンドを一口かむ。 養殖であってもサーモンはサーモンだ。

―― 中々良いじゃない。


※1:ビッグフォール:氷彗星の片割れが、ウェヌス(金星)に衝突した甚大災害。 氷彗星であったため、多くは大気圏で燃え尽きたが、莫大な水をウェヌスにもたらすことにより、大洪水を引き起こした。


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