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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
11章 工作活動
92/103

陰謀詭計

こちらにリーラインがいるのは心強い。 戦争を終わりにしたいというのは共通認識であえれば裏切りもない。 それに奴は王権の存続も望んでいる。


エリスの情報庁の部隊が、キャンバリー確保で動いているとの情報も“ヒルベルト商会班”から入ってきている。


キャンバリーはタニア側の沙汰が下るのでいいとして、問題はメラノだよな。


誘拐程度では、言い逃れしてまた蘇ってくる可能性すらある。 この手の輩は、完全に破滅させないと面倒くさいことになるが、こいつは厳しいな。


――どうするかなー

春季の穏やかな気候の中、考える。 難民キャンプだけど。


大掛かりな電波ジャックでも仕掛けるか?

「セレン」

『なんでしょう』


「エリスのネットワークに緊急の映像回線ってある? 電波ジャックは可能?」

『可能です。準備しますか? 』


「頼む」

『了解です』


タブレットを用いて作戦案を組み立てて入力していく。

「うーん。 陥れることはできるが、糾弾は無理だな。 どう思う?」


タブレットで作成した作戦要綱をセレンに転送すると、両名の間に沈黙が訪れる。 セレンが、情報を読み込んでいる。


『……確かに厳しいですね。 ただの無能であれば問題ないでしょうが、執政官相手となるとどうでしょう? 』


「やる価値はあると思う? 」


『一時的に、政界からの追放は可能でしょうが……いっそのこと無法組織である“白翼の騎士団”を執政官の部下に仕立て上げるのはどうでしょう? 無法組織が、スキュレス氏の配下でないことを公言すれば、彼女の立場も安定するでしょう』


「なるほど。その方向で修正するか」

タツマが端末を弄る。


―― 女帝が安定するだけでもやる価値はあるか。 しかし、最終的な奴の所業は、エリスの住民にゆだねるか。 (くや)しいが、外部からの糾弾(きゅうだん)はできそうにないな。


『それにしても随分と馬鹿げた作戦ですね。今までの行動理念とはかけ離れていますが』


「いいんだよ。 どうせ幻の組織だ。 それにここで消す必要がある。 内容から演説項目を策定して、サナエさんと相談してみて」


『了解です。 対応します』

さてさて、あとはどう推移していくか?


                    *


ここ数日間は春の日差しの中、うたた寝中をしながら過ごしている。


ヒルベルトの別班から報告を受けて、作戦内容を作り上げそれを実施する準備も整った。 最終作戦の内容の台本は、既にサナエさんに渡している。


演目も決まり、役者も決まる。 後は、親父殿からの幕開けの連絡を待つだけだ。

―― たまには、こんなミッションもいいよねー


本日も日が暮れてくる。 本日も連絡がない思い、寝床に戻ろうとした際、セレンから連絡がある。


『タツマ。ダイゴから連絡です』


            ***  ☎ 通信中 ***


≪よう! 色男。姫様救出できたかい? ≫

≪まぁな。随分と余裕じゃねーか≫


≪まぁねー少しはこっちの気持ちが分かった? 小間使いの気持ち≫

≪……≫


通話越しで沈黙する。

恐らく、ダイゴはバツの悪い顔をしながら、言葉につまっているのだろう。


≪それと、メラノってやつは? ≫

タツマから助け舟を出す。


≪ああ、生け捕りにしてある≫


≪了解だ。準備は?≫

≪できている≫


≪なら結構。それでは幸運を≫


            ***  ☎ 通信終了 ***


『相変わらずの会話ですね』

「いつも使われっぱなしだ。 たまには、つつかないとな」


さてと。状況も大団円。 締めの演目でも始めますか!

「セレン。 サナエさんに連絡をして手筈通りに。政府の緊急放送チャンネルに強制放送だ」


今のエリスは、朝から昼ぐらいか? こちらは夜間公演だな。


                 *


例の衛星のバックドアを使ってエリス内の回線を乗っ取って、放送チャネルに電波ジャックを仕掛ける。


エリスの受像機には、突如として白いコンバットスーツが現れる。

こちらもモニターにその映像を転送している。


≪みなさーん。お元気! “白翼の騎士団”でーす≫

第一声が画面から流れる。


『酷い導入ですね』

セレンから最初の一言。


―― まぁ“白翼の騎士団”とやらの崇高な幻想もここで消えて貰わないとな。


演者はサナエさんに対応してもらっている。


≪“白翼の騎士団”はーエリスのメラノ執政官の配下で沢山の諜報活をしてきたの! でも彼ったらキャンバリーやらスキュレスに浮気して3股掛けられたの。 


それが悔しくてー今回ぃー放送網をジャックしちゃいました! いぇい≫


―― とは言え、我ながら酷い理屈だな。


≪私。 頭にキています。なので、彼が大事にしているものを破壊しよう思います≫

画面が急に切り替わる。ヘレストポンス山脈の画面が映る。


≪ここには、アイギスシステム2機で守られているTF-1型と呼ばれる水爆が保管されています。彼のお気に入りのコレクション。そして≫


画面が宇宙からの映像になる


≪メラノっちが、保有しているサテライト兵器を用いて本施設を破壊しちゃいます! どうしてかって? 私を裏切った罰よ、罰≫


『なかなかどうして。 ここまでハッチャケますか? 』

「いいんだよ。“白翼の騎士団”のイメージを破壊してもらわないと困る」


『なぜです? 』


「“白翼の騎士団”は、万能な救世主じゃない。 やってきたことは荒事での問題解決だ。 ここの難民キャンプやアガニッペ集落のように明日を生きる力を与えること。 命を繋ぐこと。 病気や貧困への対応は、していない。 それは、女帝がやってきたことだ。 今後、必要になるのは、それらの分野だ。


もし”白翼の騎士団”が神聖化され、問題が起きた時にこの組織を(すが)り、頼りにすることがあれば、悪用する輩が必ず出て来る」


『災い芽を自ら摘むのですか? 』

「ああ。 そのために、徹底的にイメージを破壊する。 少なくとも頼ろうとは思わないくらいにね」


道化の演技で何とかなればいいけど。

『……完全にマールス(火星)から手を引くのですね』


「いやいや。商社プロメンテの上りがあるから、手を引くわけないでしょう。 上りがないと借金が残ったままになって、本当にマールス(火星)移住になるからね」


放送は続いている。


≪さてお立合い!! 保管施設には2基のアイギスシステムがあります。 あのポンコツ航空戦力しかないプロメンテが、大都市国家テッサリを退けた偉大な立役者、最強の盾。


攻めるは“エリシウム戦時協定”にその破壊力から使用禁止になった通称”鉄の杖”。サテライト兵器の最強の矛。


古来より強いもの同士の対峙は、心が躍り興味が湧くもの。その一戦の開幕だー≫


(あお)りますね』

(あお)るね」


―― サナエさん。 ショービジネスの司会でもやったら? 


≪じゃぁいくよー。邪魔者は消えちゃえ! 殲滅のー マジック・シャットダウン! ≫


号令と共に”鉄の杖”が落ちていく映像が流れる。 完全に条約違反の光景になる。


≪さーていつ頃落ちてくるかな? それでは私の下僕が現場にいますので中継しますね≫


画面が切り替わる。


ボコボコにされたメラノ執政官、ボロボロの女帝、さらに銃撃戦後のようなコンバットスーツが二人いる。場所は広い邸宅内のようである。


コンバットスーツの形状からして親父と副社長か?


メラノ執政官と女帝はこちらに気づいていない。

恐らく複数いる武装トークンの一体からの映像を配信しているのだろう


≪貴様ら! 執政官たる私をこんな目に合わせてタダで済むと思うなよ! ≫


≪私を誘拐監禁してよく言えたものね。加えて強姦未遂と随分とやってくれたわね≫

≪我がエリスを大国にする理想が分からんのか。 これは偉大な事業だ! ≫


≪タニアと組んで、惑星の2分割統治とか資金がいくらあってもできないわ! ≫


≪はっ! これだから。 私には大いなる力がある。神の聖剣をもってすれば多くの民はひれ伏すしかない。 そうゆう仕組みを作るのだ! 分かったら協力しろ! ≫


≪どの口でほざくのかしら。 恐怖による支配には、限界があるぐらい知っているでしょう! ≫

≪タニアからの言質も取ってある。 優良な指導者によって民は導かれる。 これは歴史の必然だ≫


両名とも口論の真っ最中である。


―― まぁあそう言って、口先だけの煽動家に追従して滅んだ国が如何に多いかも歴史は、示しているけどね。


≪お二人さん。歓談中のところ悪いが俺らのボスが、話があるそうだ≫

この声は親父か?


親父がモニターを彼らの前に出して映像を見せている。


≪お元気―。 メラノっち! 私の純情を弄んで、キャンバリーとかそこのスキュレスとかに浮気したって聞いたんだから!  許さない! 世界を一緒に征服しようねって言ったから一緒に行動したのに≫


≪なんなんだ! こいつは! 誰だ! こんな奴知らんぞ≫

メラノが取り乱し様子が画面越しにもよく分かる。


≪枕元囁いてくれたのは嘘だったんだね。だから私も怒ったの。貴方が大切にしているものを破壊しちゃう! ≫


≪何を言っているんだ。こいつは≫


≪ボスは、あんたのその“聖剣”とやらを破壊する気だ≫


≪はっ。できるものか!! あそこ守りは何人たりとて突破できん≫


≪ボスは、あんたのコレクションを使うと言っていた≫

≪はー? あそこを破壊できるもの――! ≫


≪そうだ。サテライト兵器を奪取したようでね。もう発射されている≫


≪馬鹿じゃないのか? お前らどうかしている≫


絶望に似た感情を見せてくれる。公開放送で条約違反を公開しているからね。

正気を疑うよね。といっても向こうはまだ、現状に気づいていないもよう。


≪まぁ。あそこには2基のアイギスがあるようだ。最強の矛と盾という前代未聞の大型イベントって言っていたな。地上最大級だ。生きている間に見られてよかったよ≫


画像が空を映しだす。 何か遠方で光が見える。


≪ああぁぁ……。嘘だろう……。お前ら本当に撃ったのか! ≫

≪そうよん。私を弄んだ罰ね≫


≪貴様なんぞしらん!! 一体だれなんだ! ≫

≪見ての通りよ。あなたが決めてくれた名前でしょう? ≫


≪そもそも“白翼の騎士団”は、スキュレス(トリュフィナ)の私兵だろう! ≫


≪酷い! この期に及んでまだそんなこと言うの? そこの汚い雌犬なんか知らないわよ≫


女帝の顔が引きつっているのが見える。まぁ女性同士色々あったのかな? 画面の中の光は徐々に大きくなっていく。昼間であってもはっきり見える。


≪もうじき到着するわー皆さんその瞬間を楽しんでー≫

カメラ映像でも落下する光が見える。


『流れ星ならロマンチックなんでしょうが――兵器ですからね』


≪アイギスシステムが起動するわよ≫

画面が衛星からの映像とアイギスシステムのコンソール画面が分割されて映し出される。


衛星からの映像では、ヘレストポンス山の保管場所周辺の防衛システムが稼働し、ミサイルなどの航空兵器が自動で準備されていく。


第三者の立場で見ると、その戦闘準備の光景は圧巻になる。

――あれだけのシステムに一体どれだけかけたんだか。


コンソール画面では、対象物を大きさ、速度、進路を算出し、サテライト兵器の結論を出している。 本施設への着弾時刻まで割り出している。


――スゲーなこんな風になっているのか。


≪なぜ。この画面が……貴様らエリスにハッキングを仕掛けたのか! ≫


≪やっだー。メラノっちが教えてくたんじゃん。忘れたの? ≫


実際は強奪されたサテライト兵器のバックドアを使って侵入しています。

エリスのシステムにこちらのサテライトを組み込んだのが、運の尽きといったところか。


メラノは何も言えず、唖然とした状態になっている。彼の頭の中では、様々な思考が巡っている。言うことなすこと全て訳の分からない、回答が返ってくる。


メラノは思う。

なぜ、私の配下と言う内容を強調するのか?

なぜ、私がシステムの仕組みを教えたといっているのか?


この場でそんなことを言う意味はあるのか?

多くの疑問がよぎる。


相手は、あの“白翼の騎士団”無意味なことをするはずもない。

誰かに聞かせるのであれば筋が通るが――。


じっと見つめているトークンと目が合う。

何故こいつは、先ほどから我々微動もせずこちらを見ているのか?


トークンであれば保護対象者周囲の監視の方が適役のはず。なぜだ?

疑問からの自問自答の末、導かれる結果は最悪のものであった。


≪ああああ。貴様ら……≫

そこで周辺映像に切り替わる。もちろん音声は入らない


『気づいたようですね』

「さすが、執政官。 あの状態で気付くんだ。 優秀だよねー」


火の玉の映像が、画面に映し出される。

<ターゲット1。排撃を開始します>


表示がコンソール画面に映し出されている。

対空用兵器がピンポイントで“鉄の杖”に襲い掛かる映像が映されている


現地では爆音が鳴り響いているのだろうが、音声をカットされているため、音は聞こえない。 画面も対空用兵器の爆発の煙で周囲が見えない。


映し出されるコンソールに、

<ターゲット1 撃破>

の文字が映る。


「サテライト兵器を排除したのか!! 」

タツマが思わず声を上げる。


『さすがですね。マールス(火星)が、誇る最強の盾ですから』


<ターゲット2 排撃開始>

<ターゲット3 排撃開始>

との文字が映る


「サナエさん何をやっているんだい? 」

『騒ぐのが好きですからね。 大盤振る舞いといったでしょうか? 』


<ターゲット4 捕捉>

<ターゲット5 捕捉>

彼女に兵器を使わせるとなんかとんでもないことしかしなさそうだ。


『アイギスの残弾数が減っていますね。 アイギスシステムがかなり押されています』

衛星兵器の飽和攻撃だ、恐らく耐えるのは厳しいか?


相変わらず、排撃中の状況は煙幕でよく見えない

<ターゲット2 撃破>


<ターゲット3 撃破>


<ターゲット4 破壊失敗。 着弾まで……10>

カウント画面になり、“0”になるとヘレストポンス山脈から煙が、上がる。


コンソールが赤く点滅している。

“アンコントロール”の文字が浮かんでいる。


先ほどの衝撃とダメージで主用兵器の制御ができないのだろうか


<ターゲット5 直撃>

再びの攻撃が、ヘレストポンス山脈を襲い、さらなる煙が上がっている。


白いコンバットスーツが、映し出される。

≪これに懲りたら、浮気はダメだぞ! ≫

放送が終了する。


ジャックされた放送が解かれ、通常状態に戻る。


「……リーラインに報告しろ。約束は果たしたと」

『了解です』


タツマは思う。


―― エリス国内はとんでもないことになっていそうだな。 といっても。 これでマールス(火星)のイベントも終局。 致命的な環境破壊は免れた訳か


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