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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
11章 工作活動
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争いの行方


再びのアルシア山麓集落。

メンドゥーサ陥落から1ヵ月ほど経っている。三回目のアルシア山麓集落になる。


あの時の脱出から2日かけて、ようやくアルシア山麓集落に到着した。

確かに距離はあるが、ここまでの渋滞になるとはね。


検問の憲兵も最前線に向かっているため事実上検問はなかった。

タツマ達は、この地で一旦鳴りを潜めることになる。


風聞によるとメンドゥーサの郊外に前線が構築されつつあるようだ。アルシア山麓集落にも多くの人が溢れている。もともと難民キャンプからの始まりだったようだが、そのころもこんな感じだったのだろうか?


そして、タツマも毎日に女帝に、講和条約の早期締結を求めたメッセージを送っている。議会対策が難しいらしいが、ここまでやったんだからしてもらわないと困る。


そんなタツマと思いとは裏腹に戦線は、さらなる膠着状況に陥っている。


共生同盟側は、アマゾニス海の制空権は確保でき、そこから大陸内部への侵透作戦を諦めていないようである。 


メンドゥーサを橋頭保にし、大規模空母機動艦隊の海上基地ができている。


空母艦隊からの 航空支援により共生同盟司令部は、王都ノクティス・ラビリントスに向け戦線構築を試みている。


北部王国街道は、避難民が多く、また樹林帯広がっておりゲリラ戦の発生を予見し、大陸中央部の穀倉地帯、ダエダリア平原から進行計画を想定しているようだ。


確かにメンドゥーサの目が潰れ、ある程度の航空支援がある。 しかし、ティファー大陸中央部の制空権の確保できておらず、安易に侵攻した場合、容易に撃墜されるのは目に見えている。


仮にその状況下で地上軍を動かしても、白兵戦最強部隊の土地での陸上戦。 激戦と消耗は目に見えており、メンドゥーサに郊外までの戦線維持がやっとのようで、都市内に籠っている状況が続いている。


一方、サバエア大陸でのタニア連合王国も戦線の立て直しを図っている。 当初のレーベ進行が上手くいかず、本来の懲罰侵攻の戦略を無視して、北部エリスへの侵攻に梶を切った。 しかし、何かしらの原因で侵攻は失敗。 


これにより、タニア軍がサバエア大陸からの撤退の雰囲気もあったものの、戦線拡大が、サバエア大陸の各都市国家へ威圧となり、レーベに呼応してタニア軍撃破を唱える都市国家は現れていない。


戦線拡大は、期せずしてサバエア大陸の都市国家に畏怖をバラまいたことになり、作戦失敗の修正を与える機会になっている。


これにより、レーベは、引き続き周辺諸都市からの支援が得にくい状況が続いている。 現状、地形的有利があるものの、厳しい状況には変わりがない。 


双方がじり貧の状況に陥っている。 ここでレーベが陥落した場合、そこからプロメンテまでほぼ平地が続くため、防衛ライン構築が厳しい状況になる。 


つまりは、レーベの陥落は、プロメンテ制圧に直結していることになる。 こうなるとタニアは、レーベ陥落。 共生同盟は、ダエダリア平原突破。 どちらが先に目的を成功させるかで、戦局が大きく変わる。 


「もう、マールス(火星)から逃げたいんだけど」

タツマが愚痴のように呟く


『軌道エレベーターは使えませんよ』

セレンが、変わらず冷淡に答えてくる。


「戦争とか止めようよ。まじでいいことないじゃん。この労力を経済発展に使おう? 24時間、人を殺すための労働って、8時間モノを産む方が絶対生産的だって。 残業4時間だって、戦争より時間のおつりがあるはずだろ」


『商社プロメンテは、プロメンテウィード(プロメンテ産の小麦)の価格上昇で大儲け中ですよ。 戦争が長引けば、それだけ利益も膨らみます。戦争万歳。資本主義万歳と思いますが? 』


―― キッツいなー。 巻き込まれているため余計に身につまされる。


『レーベに大量の物資がプロメンテから送られていますからね。前線の兵士が空腹になることはないらしいです』


―― いいことなんだか、悪いことなんだか。いいことなのか? といっても、こっちはギリギリの難民キャンプだけど


内戦に巻き込まれて、インフラ整備が遅れによる利子の追加や食品工場の物資徴発で損させられ、今度は戦争で物資を大量に売って儲けている。


何この状況。と現実に愚痴を言っても、ここで成行きを見守るしかない状態ではある。

ケルンは、難民キャンプへのボランティアに出かけている。


春季になり季節がいいのが幸いして、難民キャンプでも寒さ対策への心配がなくなり、避難者の気分も殺気も和らいでいるのがせめてもの救いになる。


山麓の水場もあるため、清潔な水も提供できている。

難民キャンプであっても治安も確保され食料支援もそれなりにある。


難民キャンプとはいえ、ここはかなり恵まれている。

南部地域や山向こうは衛生面や食料面でかなり悲惨な状況に陥っているようだ。


“ガラスの雪”で悲惨な目にあったためか、色々設備が整っているのもなんとも皮肉としか言いようがない。


そんな様子をスマイル号のカーゴの上から周囲を眺めながら微睡(まどろ)んでいる。


『タツマ。良い情報と悪い情報があります』

突然セレンが話しかけてくる。


「おおっ。なに急に。何かあった……んだね。じゃぁ、悪い情報」

『サテライト兵器が、何者かに奪われました』


「……っは? 一大事だろう!! あれのコード知っている人間なんて3人しか……」

一瞬焦るが、セレンが落ち着いているのが気になる。


タツマも一旦落ち着き、再びセレンに質問する。

「それで。 良い情報というのは? 」


『サテライト兵器が、エリス(サバエア最大都市国家)の宇宙ネットワークに組み込まれています』


「ほぅ……良いじゃない」

その情報にタツマの顔が、悪い顔になっていく。


「あれには、バックドアがあったよな? 」

『ええ。今も健在です』


―― 色々使えそうだな。しかし、制御コードが漏れたか。そうなると


『タツマ。ヒルベルト商会班から連絡が入りました』

―― 何というタイミング。


「了解だ。 繋いでくれ」




            *** ☎ 通信中 ***


≪どうしました? ≫

≪西部方面で派手にやったそうだな≫


≪まぁね。それで≫

≪あんたに話してほしい人物がいる≫

――(エンジニア)さんが、アンタと呼んでいる。近くに誰かいるのか?


≪お久しぶりですね、“白翼の騎士団”。 といっても私はあなたの顔を見たことがないのですがね≫


……この声


≪どうも。リーライン殿のお出ましとは、こんなチンピラに何の用でしょう? ≫

≪まさか、メンドゥーサを落とすとはね。貴方の戦術眼は、私の想定以上ですよ≫


≪お褒めにあずかり光栄です≫


≪平時であれば、即刻縛り首にしたいところですが、まぁいいでしょう。本題に行きますか、我々はこの戦争を終わりにしたい≫


随分と物騒な内容をスルーしていない?

≪私もですね≫


≪目標が一致していれば結構。ただ、戦を続けたい連中もいますので、それらの対応をしてもらいたいと思いまして≫


≪キャンバリーか? ≫

≪流石ですね≫


≪奴の目的は? ≫

≪正確には奴らになりますね。簡単に行ってしまえば、火星の2分割統治といったところでしょうか≫


≪なに? エリスも関わっているの≫


≪ええ。戦争を起こしてタニアが無条件降伏として、名目だけエリスの配下に加わる。そして西側大陸の統治権を与えられるといったものです≫


≪最強国家がそんなことするのか? ≫


≪彼は王族ではない。どんなに頑張っても宰相止まりです。国を統べるには、国家機構の破壊が前提となります≫


≪ほう、降伏で王権を廃止し、自ら国を統べる。野望成就のため国を売るか≫

≪合理的ではありますがね≫


≪あんたの元上司だろ? あんたが裏切る可能性は? ≫


≪私もキンメリア南北戦で切られた身ですから。 彼に何の感情もありませんよ。どちらかと言えば、やり返したいといったところです≫


ムカついているからぶっ飛ばしたいとのことか?


≪メンドゥーサとガレの交換で手打ちをしたいと考えていましてね≫

≪吹っ掛けてきたのはそっちになるが? ≫


≪プロメンテの件を流しましょう。私有財産を奪われる辛さはお判りだと思うが? ≫


こいつ……お前らの工作だろうがと言いたいが物的証拠がない。加えて、最重要関係者が

死亡しているのがつらい。


≪どうやら政治力は、私の方が上でしたね≫

≪各方面との話し合いは付いているんだろうな? ≫


≪キャンバリーの煽動で対応します。全てを奴に被せますよ。1歳の女王では無理でしょうからね。女王の擁立に対して、対抗馬を立てて国政を乗っ取ろうとした黒幕とします≫


―― 誰かが責任を取るか。


≪煽動した貴族院の人間も例外なく戦争犯罪者として引き渡しましょう。ただしエリス側にも相応の報いを受けてもらいたいですね≫


―― 国を生かすといつもこうなるな。個人の責任にして、大を生かす。 どこの星でも歴史でも変わらないな。 そして、王権を守るか。


≪で、自分へのオファーは? ≫

≪エリスを止めていただきたい≫


≪止めると言っても、具体的には? ≫

≪TF-1型の保管場所を叩いて頂きたい≫


―― また、狂った指令だな。おい。

≪場所は知らないし、今から探すのは不可能だ≫


≪エリスの奴らは、あれを地上で運用する気でいるようでしてね。 メンドゥーサが開城している今、あそこから入り込まると非常に困るのです≫


≪破壊してもいいが、あんた達が共生同盟側に使用しない保証はないだろう≫


≪タニア宇宙艦隊を引き上げ、我が宙域に共生同盟艦隊を駐留させます。如何ですか?≫


≪本気か? ≫

≪ええ≫


≪まずの証明としてこちら側の進軍停止を指示しております。同盟からの攻撃もないようですが。


直ぐにでも|エリス《サバエアの最大都市国家》と協議は、行いたいぐらいなのですが、メラノ執政官は本野望の中枢人物。交渉の信頼に値しない。


できればスキュレス氏との交渉が、我々の希望です≫


≪伝えればいいだろう? 我々の要望は、スキュレス氏を筆頭に話い合いたいって≫

≪彼女は、今行方不明です≫


なりほど、やはりコード流出は女帝からか。

≪彼女への対応は? ≫


≪ダイゴなる方が、動いているのでその結果次第ですかね≫

親父……


≪あなたには、スキュレス氏解放後、示す場所の基地撃破をお願いします。ご要望の位置データをお送りします≫>

座標データが送られてくる。


―― 簡単に言ってくれる。

≪以上です。何か質問は? ≫

≪……成功報酬は誰から貰えばいいんだ? ≫


≪おや! あなた方は、信義に基づいて行動していないのですか? PMCとの噂はありましたが、本当だったとは! ≫


意外との感情が、声に乗って伝わってくる。この手の輩では珍しい。


借金抱えているんだ。減らしたいに決まっているだろう。とは言えないか

≪まぁそんなところだ。質問はない。問題があればそこのエージェントを通して対応する≫


≪では、幸運を≫


              *** ☎ 通信終了 ***



「でっ。座標データはどこを指しているの? 」

『ヘレストポンス山脈中緯度ですね』


挿絵(By みてみん)


「今からあそこに行けって? 無理だろう。それに保管基地の内部侵入って今から間に合うのか? 」


『通常の破壊方法では無理ですね』

「だろうな」


『それと、位置データと一緒にこれも送られて来ました』


録音された女帝の音声が流される。

<お願い……誰でもいいの。 この戦いを止めて…… >


泣いているような声で、短いが切実に訴えてきている。

『ほんとに女性泣かせですね』


―― 泣かされているの。 頼み事聞いても、お礼が一つもないってどうゆうこと? 本来であれば、これだけの問題を解決していれば、ハーレムじゃないの? なぜにおっさんや爺さんばかりが、寄ってくるのよ。


タツマが妙な考えをしているのを知ってか知らずか、セレンから報告が上がって来る。


『現在サテライト兵器は、エリスの宇宙システムに組み込まれている状況になっています。 制御コードは、タツマ・ダイゴ・トリフィナの3名が知りえています。 先ほどの音声データから推測するに漏れた出所は――』


「女帝からか。 なんとなく、分かっていたけど。タイムリーに連絡がきたね。音声から判断すると拉致されて、吐かされたと言ったところ? 」


『故に、加害者には相応の懲罰が、必要と思われます』

「乗った。 バックドアからの制御は可能だよな。」


『はい。 バックドアを使えばエリスのシステムを配下に治めることも可能です。児戯に等しいですね』


「しかし、まだだ。 女帝の安全を確認が取れてからだ」

『了解です』


親父が対応しているため任せておける。

問題は、ティファー大陸の遠方からメラノをどうやって追い詰めるかだな。


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