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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
11章 工作活動
90/104

メンドゥーサ レーダーサイト 破壊工作

--- メンドゥーサ環境商会


その日の出勤時間。

「タツマ。 おまえ腹痛大丈夫か!」

「すみません。 迷惑かけて。 久々の金でつい、美味い物食べ過ぎて寝込んでしまって」


昨日の徹夜からの明けの仕事。 連続労働になる。

「しょうがねぇ奴だな~」


事務所内に笑い声が響く。 しかし、タツマとしては、徹夜からの連続勤務でかなりキツイ。 しかし、それを表に出す訳にもいかず、取り敢えずまずは、その場を取り繕う。


「これ。 迷惑かけましたんで皆さんで」

タツマが、焼き菓子を渡す。


「おお! クラニスの焼き菓子じゃねーか」

「まぁ。時間が経って安くなっているのを買っただけですけど」


この街一番の焼き菓子になっている。味は間違いない。 事前にケルンに買ってもらっていたものになる。 新人の急な休暇。 悪い印象を持たせないための処世術。


「そんなに気を使う必要もねーのに、わりーな。 さてと仕事終わりの楽しみもできた。さぁ今日も頑張っていくぞ!」


早朝のゴミ回収を行う。 徹夜で開けの業務。 かなり体も厳しいが、運転をしないため何とかなりそうだ。


―― くっそ! 眠すぎる! 午前中を乗り切ったら爆睡してやる。


何やら憲兵や軍関連の人が街に大勢出ており、車両に乗ってメンドゥーサから出ていく姿も多い。


ともあれ、こちらは、仕事のゴミ回収業務の実施中である。 そんなことに話題にせず、黙々と作業を行っていく。


                     *


日が一番高くなる時間になる。 最後のエリアのゴミ回収が完了する。 タツマ達の班が集積所に向かい、本日の業務が終了する。


事務所に戻りながらも、今までにないほどの兵士が街中にいる。 といってもどこかに出かけていく感じである。


「なんか街中に軍関係者が多かったな? 」

班長が何の気なしに(つぶや)く。


「そっすね。何かあったんですかね? 」

タツマが、それとなく回答する。


―― いい具合に効果が出ているようだ。

事務所に到着する。


「3班終了でーす」

班長が声を上げて、事務所に入っていく。


所長が、迎え入れる。

「おお、ご苦労さん。タツマさん悪ね―。 お菓子。頂いているよ」


「どうぞ、食べてください」

愛想は振りまくが、睡眠欲が限界に近い。


「そうそう。 聞いたか? “白翼の騎士団”が生きていたらしいぞ」

所長が話しかけてくる。


「なんすか? “白翼の騎士団”って? 」

班長は知らない様だ


「義賊としてサバエアやキンメリアで暴れていた組織だ」


「へー。 それで軍人が街中で多かったんですか?」

タツマが回答を合わせる。


「それで“白翼の騎士団”がこっちに観光にでもきているですかね? 」


「さぁ? とにかく憲兵所も蜂の巣をつついたような状況で、西のマランガ山地や南に向かって行ったようだな」

所長から回答で一端の会話が終わる。


―― キャリング奴上手くやったな。 奴らにはしばらくの間、いなくなってもらうよ。

タツマのほくそ笑みには、周囲の誰も気づかない。


                     *


自らのアジトに戻る。 同居のエリスの工作員が、状況のあらましを伝えてくる。

今朝方、盗賊にさらわれた村娘達とそれを助けた出したチンピラを確保したとのこと。


村娘の証言から キャンバリーと“白翼の騎士団” が見えない場所で戦っていることになっている。


―― 実際、まったく関係ないんだけど、状況が見えないと事態は大きく見えてくるからね。 上出来だ。


“タツマさん。仕掛けるのが上手いですね”

工作員の一人が、感嘆の声を漏らす。 


軽い相づちを打ちながら、自身の部屋に戻る。


―― まったく。 毎度毎度、綱渡り過ぎる!

そんな思いを抱きながら、シャワーを浴び、ひと眠り……熟睡する。


夕方になり、目が覚めるとオーソンとセレンが帰ってくる。

「タツマさん。 やりましたね」


「まぁね。 例の入江の入口は分かった? 」

「ええ。 車両は入れそうですね。 信頼できる塗装屋も見つかりました」


『“白翼の騎士団”を餌に街中の軍人を追い出すことに成功したといったところですか? 』


「そんなところだ。 ところで、セレン。 現在は1月になるが、この地域の長期の天候状況はどうなっている」


『24月の春節を過ぎています。屋外業務なので肌で感じられていると思われますが、昼の気温が高くなっています。 


ダエダリア平原の高気圧の北上とアマゾニス海の暖流による低気圧の南下により天候は非常に不安定にあります。


この時期特有の ※1春の嵐が、オリンポス湾に断続的に発生しており、発生状況は例年に比べて、少し早いとの情報が西部タニア気象台から上がっています』


「風速は? 」

『地球単位換算で10m/sといったところでしょうか? 』


「海上は? 」


『20m/sは、かたいでしょう。この時期は船の転覆事故が多発しているので、波が荒くなり陸地付近は、一般の船もいないと予測します』


「上出来だ。 天が味方しそうだな」

『文字通りの意味になるでしょう』


「女帝に連絡だ。 空母艦隊をアマゾニス海に廻す準備を連絡してくれ」

『了解です。 大掛かりですね』


「大掛かりなの」


さてと、カーゴ車のデザインを入江ルート近隣の周回ゴミの回収車のデザインにペイントし直しますか。




--- メンドゥーサ レーダーサイト 破壊工作


タツマが戻って来てから十日余りが経過する。


街から憲兵や兵士が抜けたとで、街の閑散度が、一気に増している。 ウロウロしても声すら掛けられなくなってきている。


順調に事が運んでいる。 加えて、春節を過ぎるととにかく雨が多い。


雨の夜に紛れて、カーゴからコンテナを入江の出口に出航させる。

人が少ない分、実行も楽になっている。


崖の上には監視カメラがない故、暗闇の中、岩礁に隠すようにコンテナの設置ができた。


メンドゥーサレーダーサイトの兵士もキャンバリー捜索業務に駆り出されているため、内部の人数は分からないが、相当数減ったと歩哨の人が、愚痴っていた。


気象状況も、工作物も、そして人も揃った。あとは何時決行するかのみになっている。

といっても、決行日は天気予報頼みだ。


雨天や一日中風が強すぎる日は割けないと作戦がダメになるため、その日の予報には、常に気を配る必要がある。


                     *


反抗作戦の準備が整い、後は天気任せの状況の中、タツマとケルンとセレンが、ちょうど休憩が重なる。


屋外のベンチに座り飲み物を飲みながら、タツマがケルンに話しかける。


「雨の日が、随分続いたな」

「ええ。 屋外作業には少々厳しいですが、冷たくないのが、幸いですね」

ケルンが応じる。


――これだけ続くとしばらく穏やかな日が訪れそうだが?


「セレン。 明日の天気はどんな感じ? 」


『お昼の予報ですと、しばらくは、メンドゥーサ近隣は晴れ模様です。 春季の日差しを満喫して下さいとのこと。 ただし、引き続き風が強いので洗濯物を飛ばされないようにとの注意もありました』


周囲には人はいない。それに清掃員の会話など誰も興味が無いだろう。


「春らしい天気だ。 海側は? 」


『風は多少落ち着きますが、それでも急な突風に注意してくださいとのことです。特に船舶関係者は注意とのことです』


――なるほど……悪くない。


「どう思う? 」

タツマが両名に話を振る。


「……聞いている作戦を実行するには、素人的に良いと思います」

『申し分ない状況かと』


「明日はケルンが、レーダーサイトの清掃活動だったね? 」

「ええ」


タツマはしばらく考え込み、決断する。

「明日、実行する」


『了解です』

「スキュレスにメッセージを送ってくれ」


『現地確認はどうします?  天候が、こちらの予定通りにならなかったら、作戦の停止命令も必要になります』


「セレンが主体として、バックアップは、ケルンが対応してくれ」

「了解です」


「成功した場合は、エリスの戦闘機部隊がレーダーサイトにミサイル攻撃の手はずになっている。 清掃会社の従業員を安全に脱出できる状況と誘導を頼む」


「世話になっていますからね。 わかりました」


「メイン・レーダが破壊せれてもサブシステムが起動するはずだ。 能力が落ちても、アイギスはアイギスだ。作戦では物量戦で開錠する可能性が定石。 爆発に巻き込まれるなよ」


「……了解です」

少し怖気づいている表情が読み取れるが、やってもらわないと困る。




--- 1月下旬 作戦決行日

朝のゴミ回収も動くと汗ばむ季節になってきた。 日の出も早くなっており昼間の時間が長い。


天気は晴れ。


いまのところそよ風があるため、汗ばんだ衣類も直ぐに乾き気持ちいい。


「キャミャエル! ここで最後だ! 集積所いくぞ! 」

いつもと同じような日常を送っている。


班長が、もう一人の部下に話しかけている。

「それにしは、今日は気持ちがいいな」

「そうっすね」


「お前は、午後どうするだ? 」


「俺っすか? とりあず、昼寝っすかね」

部下も当たり障りない回答をしている。


「キャミャエルは? 」

「そうですね。自分は部屋の掃除でもしようかと思っています」


「ああ、確かに今日は天気がいいもんな? 」

「班長は? 」


「俺か? 俺は酒盛りかな? 俺の仲間内で宴があるんだよ? 来るか?」

まぁ断るよね。




--- メンドゥーサレーダーサイト


基地清掃班には、セレンがいる。 トークンと言うこともあり外構清掃をしている。


午後になり陸風が、止み始めている。 周囲の状況とともに風の状態も確認している。

(いい天候です。 作戦を開始します)


セレンが、コンテナの制御系に接続する。 崖下のコンテナの蓋が開く。 中には大量のバタフライタイプのバグドローンが格納されている。 


風が止む凪のに合わせ、セレンが制御を掛けてコンテナからバグドローンを飛び立たせる。


数千に及ぶ蝶が、徐々に飛び立つ。

『ご武運を』


                     *


レーダーサイトには、海上警備の船舶もいる。 監視者二人が甲板にでて、アマゾニス海を見ている。


「今日も日差しがいいですねー」

「まぁな。キャンバリー追撃とか面倒な業務に廻されず済んで助かったぜ」


「本当にキャンバリーが、反乱なんて起こすんですかね? 」


「さぁな。 といっても政権中枢の権力争いだろ? だいたい1歳のガキに王権を渡しているのも異常だろ? 反乱の原因なんてその辺りじゃねーの」


「それに“白翼の騎士団”でしょ? 」


「ああ。そっちは拉致された娘たちの証言だからな。全員同じこと言っているらしいし、本当のようだな。 ただ、白いコンバットスーツだから“白翼の騎士団”と決めつけるのはどうかと思うけどな」


「本当にキャンバリーと知らないところでやり合っているんですかね? 」

「どっちも悪いことしているからな。 利害が衝突した案件でもあるんじゃねーの」


海上の彼らは、基地側への見張りも行っている。しかし、海面の反射もあり虫っぽい大群にそれほど注意が向いていない。そもそも気づいていないと言って方がいいだろう。


数千のバタフライタイプのバグドローンが、がけ下に集合する。

恐らく昼をそれなり過ぎた時間であろう、突如、突風が陸地側に向かい吹いてくる。


セレンからバクドローンの出力を調整する。少しでも高く風を捕まえる条件の位置へ移動し、風を受けられるようにバタフライタイプの羽の制御を行う。


突風は崖にぶつかり急上昇を始める。風を捕まえ急上昇するバクドローンの群体。

数千もの一群が舞い上がり、監視カメラにもその様子は捕らえられた。


“すげー。蝶が大量に舞っているぜ”

監視の兵たちは特に気にしていない様だ。


40m以上舞い上がったバクドローン羽を切り離し、レドームに突っ込むかたちになる。


バクドローンの中には、少量の電波吸収体の液体が入っている。

1体の液体量は少ないが、大量のバクドローンが舞っている。


総計の量はかなりのものになる。


そして、その大量のバグドローンが、レドーム正面に激突し電波吸収体の液体が、レドーム表面にこびりつくことなる。


                   *


レーダー管制が、突如として各種監視機が異常を検知し、警告アラームが鳴り出した。

管制室に緊張が走る。


「おい。電波の反射値が異常だぞ。何があった!! 」

「さっきまで、正常だったろう!! どうした!!」


「これでは索敵できんぞ!! 原因を探せ!!」

にわかに基地内があわただしくなる。


真っ赤に染まったレドームを確認して、セレンが通信を行う。

≪メンドゥーサの目は潰れました。ご健闘を≫


タニアの裏口が開いているまたない好機。 セレンからの報告からアマゾニス海の空母艦隊から戦闘機がスクランブル発進がかかる。


海上の監視班から、異常の報告が入る

≪レドームに赤いペンキが、広範囲に付着しています≫


すぐに歩哨が、レドームの確認に向かうと確かに、赤い塗料が広範囲に付着していることを確認する。


「何なんだこれは……」


≪光学サイトより確認。 敵戦闘機5機編成でこちら向かっています≫

≪戦闘配備だ! 地対空ミサイルを……アイギスのサブシステムで準備し……≫


海向こうからの対地兵器のミサイルの攻撃の方が早く、メンドゥーサの設備を破壊される。大きな爆発音とともに周辺には土煙が上がる。


≪サブシステム停止! マニュアルで撃墜します! ≫


しかし、対応する前に海向こうから多数のミサイル群が襲ってくる。

≪本基地の緊急信号発令!! 全員衝撃に備えろ!! ≫


その日、巨大な爆発と共にタニアの裏口が、こじ開けられることになる。

エリスの空母艦隊がオリンポス湾のメンドゥーサを制圧することになった。




--- メンドゥーサ陥落

空爆は、街こそ焼いていないが。戦闘機が上空を舞う事態に陥っている。 メンドゥーサの都市はパニックになっている。


「タツマさん。環境商会の退避完了です」

「それは良かった。 セレン。 現状は? 」


『共生同盟によるアマゾニス海の本丸の空母艦隊が、メンドゥーサに向かっています。 ここを橋頭保にし、大陸内部に浸透する段取りだと思います――』


「だろうな。取り敢えず我々も逃げるぞ! 」

とりあえず、メンドゥーサの街から避難する。


根城にしている、ダウンタウンのアパートに戻らずに、事前に用意していたスマイル号に飛び乗る。


道路は流石に渋滞になっており、自動車が道路に溢れている。

スマイル号で少しずつ進んでいる最中、セレンが話しかけてくる。


『タツマ。 共生同盟側がタツマを探しているようです。 因みにエリスの工作員は、早々と集合現地に向かっている模様』


「女帝からの要望じゃないんだろう? 」


「えぇー 匿ってもらいましょうよ。この渋滞をからも解放されますし。それにメンドゥーサ陥落の立役者ですよ」


ケルンが、話に割り込んでくる。それを無視してセレンが、タツマの質問に回答する。


『女帝ではなく、司令部から直接です。 エリスの執政官メラノです。今回侵攻作戦の元締めですが、どう思われます』


画像を転送してくる。


「いけ好かない面だ。提案は却下」

『了解です。 タツマの直観とやらを信じましょう』


「ちょっと、人相だけで決めるんですか? おかしいでしょう!! 美人な結婚詐欺師もいるでしょう」


「個人の詐欺と国家を含めた詐欺では規模が違うよ。それに相手の立場に立てば分かる」

「……相手って」


「難攻不落に近い、メンドゥーサのレーダーサイトを不能にした“政敵の工作員”が、我々の立場だ。 ケルンならそんな人物をどうしたい? 」


「仲間に引き入れたいですよ。優秀なんだから」


―― そうだよね、平時ならそうなる。

「そうだね。 普通なら。でも今は普通じゃない。私なら、この期に乗じて政敵を排除したい」


「完全に内輪もめじゃなないですか?」

「共通の敵がいても起きる現象だ。 気にするな」


「……嘘でしょう。 共生同盟にも追われるんですか? 」


「おそらくね。 それにあのアジトにいた工作員。 女帝スキュレスと呼んでいた。彼女の部下は、トリフィナ様といっていたからな。 あいつら執政官が掛かっている連中だ」


「でも同じエリスでしょう! 」

「アルバテラはどうだった? 奴らの内部抗争で梯子を外されたんだぞ? 」


「……」


「今、奴らに近づくのは、危険すぎる。 最悪消されるかもしれない」

ケルンは黙っている。


とりあえず、メンドゥーサからスマイル号に乗って北部王国街道を用いて脱出することが今の最優先項目だ。


「これからどうするんですか? 」

不安そうにケルンが尋ねてくる。


「“アルシア山麓集落”へ向かう。エリスは街の場所は知っているが、詳細までは知らないはずだ」


数日後、回転翼から降下部隊がメンドゥーサに降下し、街は制圧されることとなる。


※1:春の嵐:ダエダリア気団が徐々に温められ、結果アマゾニス海の温暖な低気圧がダエダリア平原内に雨をもたらし豊かな耕作地を形成する春季の現象。


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