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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
4章 再禍動乱
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凱旋 プロメンテ 

まさに大鉱脈を発見して一躍、時の会社になる商社プロメンテ。

巨大な成果を持ち帰り、凱旋といったところタツマであるが、人生はそう上手く運ばないものである。

--- プロメンテ・ビャーネ邸内

シメリア(鉱山都市国家)から戻ってきて暫く経過している。


爆雷石オガネソン鉱床の発見により、くたびれた鉱山が一気に復活し、鉱山経営が多忙に陥っている。


優秀な人物を社長の座に付けたため、会社は以前に増して活気を取り戻している。


――― ショーンさんは、渡りに船だったよなー。 自分でやっていたら、今もシメリア(鉱山都市国家)に張り付いていたままだよ。


ヘスベリア(港街)への鉄道敷設の仮設道路により穀物を輸出することでレーベ(サバエア大陸の南部最大の都市国家)までの輸出販路も確立し始めている。


プロメンテウィード(小麦)等の生産改革に成功しており、かなりの量が出荷されていく。

その他、穀物の収穫・出荷も順調に進んでいる。


商社プロメンテは、超繁忙状態になり、その処理能力を超えているところで稼働している。


温室と客室が合わさったいつもの執務室でお茶を頂いている。

多忙の中の僅かな癒し。一時の休憩が終われば、また多忙な日々である。


「やっぱりビャーネさんのお茶は美味しいですね」


「あなたは一体何者なんですか? 」

ビャーネさんからタツマに驚愕と恐れの視線が向けられる。


「彼はただのヘタレよ」

ばっさり切り捨てるサナエさん。


「サナエさん……口が悪くない? 」

シメリアに行ってからすこし機嫌が悪い。タツマの言葉に反応してかプィッと横を向く。


―― シメリアで放置し過ぎたことを根に持っているのだろうか?


再び沈黙。

お茶を飲み終えると、サナエさんが口を開く。


「これからハッピーカムカム号に向かうから。しばらく留守にする」


「ハッピーカムカム号って、宇宙に行くの? いきなりどうしたの? 」


「前も言ったでしょう。会長ダイゴからの依頼があるって。 その依頼解決の目途が付いたの。 解決には、ステーションの係留中のハッピーカムカム号のラボに行く必要がある訳よ」


「じゃぁ。 エリスに向かうの? 送ろうか? アルプも連れていく感じ? 」

タツマが少し不安な表情をしながら矢継ぎ早に質問する。 ここでアルプが抜けると業務への支障が大きい。


「プロメンテの業務もあるでしょう。 アルプは置いていくわ。 それにひとりで行けるわよ」

「サナエさんにそう言ってもらえると助かるよ」


「この辺りは、メレア街道に比べれば安全そのもの。 それに商社プロメンテの輸送車と一緒にヘスベリア(港街)までは出るつもりだし」


―― それなら安心か


「それと実験がてらにトークンを何体か改良しだけど、試しに改造やハッキングしたりするんじゃないわよ」


「する訳ないでしょう」

「アルプに言っているの。 厳禁だからね」


『……了解です』

―― あーね


「珍しいメカを見つけると直ぐに解析するんだから――」


多少悪態をついた後に、準備があるからと立ち上がり彼女は、部屋を出ていった。

彼女の自慢のトークン(アルプ)を置いってもらえるのは、助かる。


まだ、リフレッシュメントが残っているので、アルプとタツマは部屋に残っている。


「ところで、これで商社プロメンテも事業が拡大できますね。いい案件を見つけてきたんですから、お願いしますね」


引き続き業務の話が続く。


「豊かな穀倉地帯には感謝しています。 山を復活させて頂いたことも感謝します。 仕事も増えました――いや増えすぎです。これ以上事業拡大したら過労死してしまいますよ。


加えて、山の復活も有難かったのですが、シメリア鉱山開発社の潜在的――ではないですね、見えている価値が恐ろしいことになっていおりまして、その権益を守るので精一杯です」


その心配にタツマが応じる。

「しかし、鉱山労働者が徒党を組んでガッチリ守ってくれているますよ?」


「確かに」


「ビャーネさんの誠意の賜物です。 しっかり雇用を守ってくれたことへの恩返しでしょう。 それに鉱山の労働者達は、今回の大発見で鉱山労働への誇りを取り戻してくれたと喜んでいます。 良い事だと思いますよ」


「そうなのですが――」

何か歯切れが悪いながらも、ビャーネさんは、心配事を吐き出していく。


「それと優秀な社長も見つけ頂いたようですが、断続的に泣き言が入ってきておりまして」


「彼女は優秀ですから大丈夫でしょう。 事務方のトークンも送っていますよ。 何体送ったんだっけ? アルプ」


『10体です』


ああ。こちらの業務用トークンの大半をシメリアに送ったんだっけ。

「まぁ大丈夫ですよ。 多分。 きっと。 おそらく」


「忙しいのに加えて、その……」


「どうしました? 」

「先立つものがなくて。鉱山の開発予算がありません」


「いくら? 」


「500億マリベル(5000億円)になります。なにせ物が物だけに、設備の更新やら安全対策のため既存システムでは無理とのことなんです」


確かに大規模開発だ。


中小企業のスタートアップ企業の商社プロメンテでは、厳しい。

ヒルベルト商会の内部留保もかなり吐き出している。 これ以上は本業に支障が出かねない。


「こまったね。アルプ。 セレンに先ほどの内容を伝えて 」


返信は直ぐに来た。

『銀行または、市場から調達するしかないとの返信です』


衛星通信でもそれなりに早い。

『この金欠状態ですが、先の銀行が、ショーン社長のところへ激しい営業攻勢を掛けているようです。

 今までの経緯もあります、ショーン副社長も直ぐに傾くことはないはずですが、このままでは、資金不足により彼らの案に傾く可能性があります。 早めの対応が必要です』


「金の匂いを嗅ぎつけるのはたいしたものだね――今回は市場からにするか? それにしても金集めねぇ」


一考する。

融資にしろ、株式にしろ、金集めには、かなりのマンパワーを割く必要がある。


「対応できる人物かー 」

タツマが天井を見上げる。


いないよねー。この状況で金を集めるなんて人手が足らなすぎる。

みんな死にそうなぐらい働いているんだもの。 農工部も収穫の真っ最中である。


どうするか? 金融や経済に強くて……いや人を欺けてだな。 信頼がおけて、度胸がある人間ね。……。……。いるな一人。この状況に陥れたんだ、ツケを払ってもらう。


--- サバエア大陸 エリス(商業都市国家)


「ダイゴ。息子からだ。通信が入ってきている」

副社長バルティスが、受話器を持ってダイゴに話しかける。


「いやな予感しかしなんだが」


「あれだけのことをしているんだ。 恐らくリソース不足なんだろ? あの会社の規模からしてこれだけの案件を回すのは難しいと思うぞ」


「経営コンサルタントも紹介したし、派遣料だってこっち持ちだぞ! 」

「それだけで回ると思うか? 」


「……」

「俺なら金の無心だな」


ダイゴに受話器を投げてくる。


「……不良息子からの金の無心なら可愛い金額だろうが、あいつの場合、絶対可愛い金額で済まないだろうな」


バルティスから受話器を受け取り、しぶしぶ通話ボタンを押す。


*** 通信中 ***


≪……俺だ≫

≪その出方―。 問題っていっているでしょう? 先ず名乗らなと。 元気? 腕は大丈夫? ≫


ダイゴとしては、タツマも名乗っていないと思うがそこはスルーする。


≪まぁな≫

それでも体の心配をしてくれるのは、なんだかんだで親子である。


≪それはよかった。早速だけど、商社プロメンテに金がないんだ。市場から500億マリベル(5000億円)ほど集めてきて≫


(本当に可愛くない金額を提示してきたな)


≪……お前。何を言っているのか分かっているのか? 金額がデカすぎる≫


≪こっちは、金が必要なんだ。 親父のハニーに騙されたようなものだからね。 責任取って、必ず集めてきてね! ≫


≪500億マリベル(5000億円)は、安い金額じゃないだろう! そんないきなり言われても――≫


≪今は、収穫時期で忙しいんだ。詳しくはセレンに聞いて。じゃぁね≫


*** 通信断 ***


「おい! 待て――」


一方的に喋って切れてしまった。親子なのにドライな会話である。

ダイゴが、副社長を見る。副社長は、横に首を振っている。


「お前の息子は流石だよ。商社プロメンテに巨額の投資をして、穀倉地帯を甦らそうとしているんだ。おまけに、オガネソンだろ? あれは想定外だが」


「タニアに引っ掻き回された都市を復活させることで、奴らへの圧力、キンメリア内の陰謀者のあぶり出しと排除を考えていたんだがな。 新しい会社作って、それを大きくする方に動くとは……」


「しっかり内容を伝えないとこうなる」

「しっかり伝えてもあいつは、その通りに動かないさ」


「でっ500億マリベル(5000億円)をどうするんだ? かなりの金額だ。一応おまえさんの要望から出た問題だぜ。因みにヒルベルト商会の内部留保は、ほとんどないぞ」


副社長は壁によりかかりながら回答している。


「セレン」

『何でしょうか。ダイゴ』


「金が必要だ、どうする? 」

『秘匿資金を利用されては? 』


「あれはダメだ。それ以外に」


『会社の株式化か、融資ですね』

セオリーだが、惑星間貿易商の手形は、既に抵当に入っている。


となると、商社プロメンテの株式化して、資金を集めた方が手っ取り早い。


「株式ねー商社プロメンテの株式化だよな……たしかし、潜在的価値だけで買ってくれるところがあるか? それに奇妙なやつらに入られて、引っ掻き回されても困る」


「融資はどうなんだ? 」

バルティスが、会話に入ってくる。


『銀行の言いなりになるが怖いところです。正直、モノがモノだけに、多くを握らせるのは危険かと』


「まーな」

『それにどちらの案もタニア系の会社に入られる恐れがあります。 どうしますか? 』


「そうなると……わからん。 あいつ等手をだしてくるかな? 」

ダイゴが、副社長のバルティスに話を向ける。


「おそらくな。 あれだけの物件見逃すとは思えない」

「だよなーどうするかなー」


『都市国家間の融和の象徴して、都市国家自体に資金を出してもらうのはどうでしょう。一口10億マリベル(100億円)で50か国に声をかけてみればどうでしょう?  発行株式の30%に絞ることで良いように利用されることもないでしょう』


「民ではなく、公への株式売却ねー。 あいつがそれの案を飲むかね?」


『取り敢えず、金を集めろと言う要望です。 条件までは付けていない以上、やれる範囲で動くべきです。 それに金がないのであれば、タツマの要望も通りません』

「確かにな」


『それに各都市国家政府への販売です。 変な輩に絡まれる心配もないでしょう』


「しかし、都市国家に売り込むね~。 俺達じゃ信頼が無いぞ?」

副社長バルティスが、もっともな意見を言ってくる。


「トリュフィナ経由での対応か……」

ダイゴが呟く。


『はい。我々の強みの一つです。 エリスの護民官の信用はそれなりのものがあります』

セレンがきっぱりと回答してくる。


「しかし、いきなり彼女から特定の会社の株式を買ってくださいとは、言えないだろ? 」


『穀物の備蓄方法やシステムの運用方法の意見聴取と称して、民間との打ち合わせとの形をとってみてはどうでしょう?


キンメリアの穀倉地帯は、商社プロメンテの穀物社が、それなりに抑えています。穀物の運用には慣れているでしょうし、大陸の西と東の会談となれば、融和的な雰囲気も作りだせると思います。


穀物運用の協議と称して協議の場をセッティングします。 そこにトリュフィナ氏とネス氏が着席してその場で、シメリア鉱山の話題を振り、資本を募る道筋はいかがでしょうか?


ネス氏から要望にすれば、タツマの名前もでません』


「なるほどな。 しかし、新興会社の株式だろ? 投資してくれるか? 」


『オガネソンの発掘の情報は、マールス(火星)全土に広がっています。 一枚嚙みたい会社・組織も多いはず。 それをエリスの護民官という信頼を基に広めれば、飛びつかない者はいないでしょう』


「……了解だ。 タツマへの報告は任せた」

『了解です』


「こっちはトリュフィナへの説明とプレゼン用の資料の作成かー」


ダイゴはチラリと副社長バルティスに視線を送るが、バルティスは仕事を振られるのを察知して、直ちにくぎを刺す。


「俺には、細かい書類作業はできないぞ」

出鼻をくじかれ、ダイゴがここにいない仲間の確認をする。


「――他の奴らは、何をしているんだ? 」


「エリス内にいる、タニアのネズミをあぶり出す作業だ。エンジニア(鄭)の腕は確かだな。

タニアからの情報局長官への接触と金の流れが分かったようだ。 操舵手アリエフの運転操縦技術とエンジニア(鄭)の情報収集能力。 あのコンビは流石だよ。 これで情報局長官は失脚。 これでタニアの息のかかった連中の掃除は完了だ」


「わかった。 俺がやるよ。 書類仕事からようやく抜け出せたと思ったのに――」

ダイゴが、ブツブツ言いながら部屋を出ていく。


現在、エリス内にあるタニア連合国家の影響力排除の最終段階である。


挿絵(By みてみん)


都市国家エリス。

サバエア大陸最大の都市国家であり、軌道エレベータ設置場所としてマールス(火星)の顔とも言える都市になる。


軌道エレベータは、マールス(火星)の共有財産であるため周囲10kmは無国籍地帯になるが、それでも領地内にあれば賑わうのは当然だろう。


物流の中継ポイントとして、商業都市国家における不動の地域を築いている。


因みにテッサリア(キンメリア最大の都市国家)にも軌道エレベータがあるが、プロトタイプであり積載量が劣るため、エリスほどの繁栄は築けていない。



街の風景はまさに未来都市であり、ハイパービルディングが林立している。

タツマたちの田舎の風景とは全く異なったマールス(火星)の風景がここにはある。


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