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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
3章 火星着星
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その後 シメリア鉱山開発社

シメリア鉱山開発社の権利を獲得してから3か月が経過した。

もう秋季の入口だ。モーテル暮らしも5ヵ月。

サナエさんもそろそろプロメンテに戻りたさそうだ。


最近、朝がかなり冷えるようになってきている。


さてさて、あれからもろもろの事務や処理を続けている。

今は、シメリア鉱山開発社の執務室。 


ショーン副社長と手分けして権利や規模の確定、書類整理に追われている。


鉱山権利の範囲の確定などは、念入りに実施中。

「アルプ。 ビャーネ社長からの土地の権利書データは、届いている? 」


『シメリア鉱山開発社とネス穀物商事……今は、商社プロメンテに移行した権利書データは確認しています。 管理範囲は、ホエールバック鉱山とその周辺にわたる広大な地域になります』


「上出来だ。 登記簿やその他の確認をして、権利を確実に固めて」

『了解です』


「ショーンさん。 先月の収支状況はどうだった? 」

「急に出荷量が、増加しています。今まで、赤字ギリギリだったんですが、かなりの黒字になりそうです」


横流し分が正常に会社に入ったことで、利益が増加しているのだろう。

「了解。借用金の確認はどう? 」


「銀行以外に借用の痕跡はありません。借用金をまとめました。総額で、150億マリベル(1500億円)あれば、多少のおつりがある感じです」


「いいだろ。 金を準備するか~。 アルプ。 地質調査会社はどうなっている? 」


『現在、調査実行中です。 工程はやや遅れているものの再確認をしながらですので、問題はないでしょう』


「それは結構。 先ほどの確認で、範囲が広がっている地域での対応を追加してくれ」

『了解です』


地質調査会社には、新しい鉱脈の調査で依頼を出した。


最初の調査結果を受け取る際に、相手からやり直しを求めてきた。 こちらからの調査結果を出してくれとの要望には、まだ確定できないとのことで提出を拒んできた。


こちらから、測定のやり直し分は払えないと告げると、構わないとの回答。


かなり興奮しているようだったが、近隣の場所で10回ほどの調査が行われることになる。

最終結果は、アルプの言葉通り。全ての調査においてオガネソンの鉱床との結論になっている。


調査会社は、国に公表すべきとの意見を持ってきたが、却下。

どの程度の範囲にあるのか調査し終えたら対応するとの内容で落ち着くことなる。


そして、現在幾つかのポイントの鉱脈調査中であるが、どこもかしこも希少鉱脈が出ているようで、調査会社も慎重に作業をしている感じになっている。


もちろん、調査会社とは調査前に守秘義務契約を結んでいる。もし万が一漏れたら、調査資産と同額の違約金の発生になる。 オガネソンの資産価値を知らぬ彼らではないので、絶対に漏らさないだろう。


          *


秘密裏にそして確実に大規模なビジネスを動かすための下地を作っていく。

まずは金払いとして、パーシ(詐欺師)への支払いは銀行を経由して完了した。


これで奴との縁も切れ、もう会うこともないだろう。


“シメリア鉱山開発社”の借金もショーンさんを連れて、キャッシュ一括で銀行に支払うことになった。

応接室で札束積み上げたら、驚いた様子であった。


データでのやり取りでは味気ない。 スカッとするには、やはり現金が一番になる。


しかし、カッコつけたところで、ヒルベルト商会の金庫は、ほぼ空になる。


―― かなりの現金だからね。おかげで内部留保がほとんどない。


資金を持っていると判断したのか、また御用があればと言ってきた。


本当は色々言いたかったが、“ええ。是非これからもよろしくお願いします”と営業スマイルでの大人の対応になる。


一応、鉱山麓の街中では、騙さて借金まみれの鉱山会社を購入した貧乏青年社長になっている。


街中を歩いても“あの借金社長”で顔が売れてしまっている。


借金社長は、あっているのがつらい。


鉱山の親方連中とも再会した。 彼らの中では、“あの時の若造”で通っている。


“一発当てたじゃねーか”と好意的に接してくれた。


彼らは、どうやってこの地位を入れたか知らないので純粋に喜んでくれた。


借金なんかは、俺らが働くから安心しろと言ってくれるのが心強い。


安全設備やら工程の緩和を実施したのも響いたのかもしれない。 加えて同じ坑道で汗水ながして労働した仲間意識に助けられそうだ。


やはり、真面目に進むのが最も近道と感じさせられる。 そんな経験をしながら時が過ぎていく。


さて、鉱山の範囲も確定したし、鉱床のおおよその量も確定した。


シメリアは、鉱山都市。


故に鉱山に関しての法律が多い。そのため新規鉱脈は届け出るようになっている。


届け出をしない場合は、違法開発ということで最悪、鉱脈没収の処置がある。


「しかたない、報告するか」

『行ってらっしゃい。 くれぐれも争いごとを引き起こさないように』


--- シメリア・シティ地区


アルプは地質調査の残作業を行っている。


そのため、一人で地質調査書を持ちシメリア庁舎に向かう。


歴史ある建物は、大きくそして威圧感がある。


―― さすがに、庁舎は立派だな。

タツマは見上げることになるが、その感慨も直ぐに消え、一般人に紛れるように内部に入っていく。


都市国家の庁舎だけあってそれなりに広いが、迷うほどでもない。案内に従って歩を進めると目的地の

部署プレートが見える。


<鉱山部 新規鉱脈課>


タツマが受付に書類が入った角形封筒を提出する。

「新鉱脈の登録ですね。しばらくおまちください」


愛想の良い受付嬢と事務的なやり取りを行い、彼女が後ろに下がることになる。

タツマは、窓口の反対側のソファーに腰を下ろす。


―― どうかこのままスルーして欲しい。

タツマが祈りながら待つことになる。


鉄でも金でもオネガソンであっても新規鉱脈の書類は同じなので、スルーで押印さえ貰えればこちらのものだ。


しかし、というか当然というべきが、それほど世の中は甘くなかった。 

書類を提出した後、待てど暮らせど呼ばれない。


昼間に受け付けをして日も傾き始める。


――やっぱりスルーはしないかー

そんな感情がタツマを襲う。


“あのー、シメリア鉱山開発さん。ちょっとこちらへ……”

先ほどの愛想のよい受付嬢からなにやら上役っぽい担当者が、タツマを呼び出す。


担当者の後ろについていくと客間に通されると、なんか偉そうなやつ先にいる。

「君が、シメリア鉱山開発社の社長? 」


「そうですが? 」

「書類見せてもらったよ。 ……凄いね。 これ」


「ええ。そうだと思いますよ」

「どうだろう? これをシメリアと共同運営してみないかね? 」


「言っている意味が、分かりませんが」

「君達だけでは、開発できないのではないかと言っているんだ」

簡単にいえば、行政からの恫喝になる。


「そんなことはありませんが」

しかし、タツマはあっさりと断る。


「あのなー。 ここはシメリアなの。 そして私は執政官。 察しなさい。 それに口答えしない方が身のためだよ 」

上から目線ありがとうございました。 協力的に出ていれば考えたのもを……。


「ここの法律は、私有財産は保障されていますよね。 もし不満があれば法廷で一戦やってもいいですよ」


「大人しくしておけば……若造が調子に乗るなよ」


「別に調子に乗ってはいませんよ。 貴方こそ、今の発言は取り消すべきだと思いますよ。おどしですか? ご自身のキャリアに自ら傷をつけるのもどうかと思いますよ」


因みになぜここまで強気なのか? 

忘れているかもしれないが、こっちは惑星間貿易商だ。 惑星の準代表者。


まっとうな方法で、得た資産を奪う場合、惑星間裁判所で白黒つけることになる。

―― 一都市国家程度で何とかなると思うなよ。


というのは建前である。 最近の多忙からイライラで八つ当たりに近い行動である。


「いいだろ! 乗ってやろうじゃないか!! 覚悟しておけよ! 小僧」

執政官も憤慨しながら部屋から出ていく。 一方で周りの役人達はおどおどしている。


―― ふふーん、粘り勝ち。

タツマは執政官が、プリプリして出てったことを確認し、おろおろしている役人に問いかける。


「ところで、鉱床の届出はいいですよね。 書類の提出だけのはずですが? 」

「は……はい。法的には問題ありませんが……」


「では、受け取って頂いたということで、押印済みの書類をお願いします」

笑顔で要求する。


役人があたふたしながら、役所の押印済みの書類を寄越こしてくる。

「ありがとうございました。 これで開発が進められます」


「本当に単独で開発するんですか? ……こう言っては何ですが、大陸がひっくり返るぐらいの大発見ですよ」


「さぁどうでしょうか。 もしご興味があれば、正式なルートで正規の出資での支援をお願いしますね。 シメリアさんであれば、いつでも協議の場は開かれていますよ。 裏口はないですが」

その言葉を残し、タツマは部屋を出て行く。


“シメリア鉱山開発社”。


この会社の所有する鉱山の話題は、しばらくしてシメリア内に広まり、その後、マールス(火星)内中を駆け巡ることになる。


シメリアに オガネソンの大規模鉱床 が見つかったと。




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