掌握 シメリア鉱山開発社
いよいよ、シメリア鉱山開発社の権利奪取に向けたタツマ達の悪だくみが始まる。
--- 発破作業から数日経過したある日
共同経営者のパーシは、“シメリア鉱山開発社”の前で待っている。
高級車両で乗りつけそこからいいスーツで降り立つのは、タツマ本人である。
「またお会いましたね。パーシ・アニュトンさん。 前回は、お名前すらお聞きできませんでしたが」
お供兼秘書が代わりにアルプを連れている。
サナエさんと思ったけど暴れそうなので今回の作戦からも除外。現在は、ふくれっ面でモーテルに引きこもっている。
シメリア鉱山開発社 の応接室に通される。因みにアルプは車で待機している。
応接室は思ったよりも質素なつくりで、パーシの秘書が隣にいる。 こんな経営者の秘書となると、いかにもな奴かと思ったら、意外にも普通だ。
「いやーあの時はどうも。助かりました。しかし、お忍びで鉱山の下見とは、タツマさんもお人が悪い」
「お忍びでないと色々と分かりませんからね」
「……ネスさんから突然連絡があって、商社プロメンテのオーナーの様子を聞かれて驚きましたよ。 まだこちらに滞在とは……」
「色々聞きたいこともあるんですよ。 特に売り上げとこちらへの配当金関連でね」
「……」
パーシが黙っている。
タツマは応接セットのソファーに深く腰掛け、足を組む。
はた目から見るとかなり態度が悪い。
深くため息をつき、タツマが話始める。
「さてと、私が憤慨していることを認識していますか? パーシさん。 ネスさんから会社を買い取って、こちらは新しく農業経営に乗り出したわけだ。 しかし、その中で一向に利益を出してない資産がある……」
タツマの目が鋭くなる。
「自覚していると思いますが――あんたの所だ。 聞けばネスさんは共同経営であるが、実質あんたが、運営しているとのこと。でっこうして会社が上手くいっていない理由を聞きに来たわけだ」
「……」
「加えて、我が社、商社プロメンテの爆薬をあろうことか、強奪までしている? どう思います」
タツマの圧迫面接が始まる。
「いやいや。強奪とは人聞きが悪い。 あれは……ここの従業員の生活を守るためですよ。お聞きになっていたじゃないですか。 それに職場の安定は、商社プロメンテにもマイナスではないでしょう。 我々一心同体ですよ」
「一心同体ねー。 あんたの無能経営と一緒にされるは甚だ不愉快だ。 シメリア鉱山開発社の運営は、パーシさんあなたの責務だ。 配当金すら払えないことをどう考えています」
「……いや……ですね」
パーシの顔が曇っている。
しかし、反省の色が見えないところを見ると、こちらを厄介者としか見ていないのだろう。
「あの場では、従業員。従業員言っていましたが、従業員よりもまずは、プロメンテに配当金を支払うのが筋だろう! 共同経営なんだよ! 」
とりあえず、煽っていくスタイル。
「なぜ、配当金が払えないんだ! 」
机をたたく。 タツマが、詰めていく。
「私としては、従業員は家族だと思っています。金、金言いますが、彼らを解雇してまで経営する気はありません。そんなに こちらの経営にケチ付けてくるなら、山の経営権を譲ってやるよ! 」
詐欺師の常套句“従業員は家族”が、炸裂する。“アットホーム”や“同族意識”の植え付けは、無能な経営者が従業員に無理を押し付けるときの常套句だ。
―― いいね。聞きたかったその言葉。しかし、ここでは乗らないよ。
「いりませんよ。 こんなくたびれた山。 うちが引き取ってもリスクにしかならない。 あんたは、このくたびれた山で利益を出すのが仕事だろ? 先ずは責任をまっとうしろよ! 」
「……」
パーシの表情は、悔しさより、こちらへの忌々しさが浮かんでいる。
「半年分を来月にきちんと契約書面に基づいて、入金してくだい。お願いしますね。でなければ、商社プロメンテのオーナーとして、貴方との契約を解除させてもらう。そして、権利の半分は、銀行に売り払う予定だ」
オーナーとしての立場をフルに使う。 パーシの秘書もおどおどしている。
席を立ち会社の外に出る。
会社前には、アルプが運転する車両が回される。 彼らが向かう場所は、この辺りで一番のホテルになる。
ホテルにチェックインをして部屋に入る。
「ふー。疲れた。どうもスーツはなれないな」
『よくお似合いですよ』
「で。付いてきた? 」
『ええ。タツマの想定通りですね』
いい感じに餌に食いついたか。
さーてどんな輩か?
バグドローンここでも活躍。
外部に設置しているバグドローンが、表の画像を映しだす。 画面に映るのは2人乗用車に乗っている。
「この辺りのゴロツキ? 」
『おそらく』
ゴロツキは誰かと連絡を取っているようだが、相手はおそらくパーシだろう。
このバタフライタイプのバグドローンの盗聴能力も大したものだ。
しばらくして、彼らはホテルから去っていった。
場所を教えていたようだ。
『タツマ。 命の取り合いまで行くのであれば、増援が必要となります。 やはり私も一緒に向かったほうが良いと思います』
そこまでいくだろうか? いかないと思う。なぜなら相手は詐欺師。
告訴内容を見ても殺人歴はない。あって傷害だ。メインは恫喝系。故にそっち方面での攻めが考えられる。
「いや大丈夫さ。 こちらを篭絡する方法は検討が付いている。それにトークンが隣にいては、奴らに付隙が生まれないし、こちらを侮らせるには、私一人の方が好都合だ」
『分かりました。 危険な目に会いそうになったらすぐに連絡をください』
「了解」
*
日も暮れて、夜のとばりが降りてくる。
場所はホテルのバーになる。タツマは一人でグラスを傾けている。
――お酒苦手なんだけどな~
一人で飲んでいると、パーシがやってくる。
「タツマさん偶然ですな。こんなところで」
「……どうしました。こんなとろまで。今日は一人で飲みたい気分なんですが」
「ははは……。いいじゃないですか。今はオフの時間。ビジネスの話はなしですよ」
無理やり作った愛想笑いが、よくわかる。
「それで、何の用です? 」
「いやいや。現在は、ネス氏との共同経営ですが、タツマさんが商社プロメンテのオーナーであれば、同じ共同経営者。であれば一緒に飲んで今後の親睦の糧にしたいと思う訳ですよ」
タツマが更に一口グラスに口を付ける。
「それで? 」
「どうです。 行きつけのクラブがあるんですが、そこに行きませんか? タツマさんテラ(地球)人でしょ。マールス(火星)の可愛い娘がいる店が、あるんですよー」
「……いいでしょう。お付き合いしましょう」
「そうこなくっちゃ。ささこちらです」
*
彼の自動車に揺られて、いかにも歓楽街に案内される。
「ささ、こちらです」
案内されるがまま、ついていく。
「ここですよ」
連れてこられたのは、胡散臭い外見の店構えの店舗になる。 タツマの中では絶対に利用しない部類の店舗になる。
パーシが、厳ついガードマン見たいのに話しかけ中に入っていく。
内部は煌びやかで、中央のステージでは踊り子のパフォーマンスが繰り広げられている。
こんな怪しい店でも満席であり、それにしても各席は常に男女のペアか……。
二階のVIP席に通される。
「ここならステージ全体が見渡せますよ。いい席でしょう? 」
「そうだな」
席に促され座ると、酒が出てくる。
――好みとか聞かないかよ。
「では、お近づきのしるしに……」
グラス同士を傾けて、一口……。
――かなり強いぞ。 これ。
しばらくすると、給仕の女性が現れた。
「ナーミャンといいます。本日はお願いしまーす」
「……えっ? 」
「どうかしましたか。タツマさん」
「あ……いや。知り合いに同じ名がいてね」
「そうなんですか? かわいい娘でしょ? しかし、そんな知り合いがいるなんて。タツマさんも隅に置けませんねー」
詐欺師の笑い声が響く。
エリス軍の幹部だけどね。でもあの仏頂面で、ここにいたらそれはそれで、面白そうだけど。
給仕の女性が横に座り、早速話しかけてくる。
「タツマさんはー、テラ(地球)人なんでしょう? どんな用事でこんなところに? 」
「ビジネスで立ち寄った感じだ」
パーシは、別の給仕の女性と話し始めている。
ーーショーは見ないのか?
「へー。でもパーシさんと知り合いってお金持ち? 」
「まぁ、そこそこの会社の社長をやっている」
「へーすごーい。私も今度テラ(地球)にいってみたーい」
そういうと、何気に酒をグラスに注いでくる。
「惑星をまたいでのビジネスなのね? どんなお仕事なの? 」
本当のことは言えないよね。
「そうだな。土地の開発事業だな。まだ市場に出ていない格安の土地を探して開発することだ。開発後高くなったら売却を行う。といったところかな」
しかし、最近の事業内容としては、あながち間違ってない……商社なんだけどね。
「へー難しいそう。ナーミャンわかんなーい」
いやー少将閣下にやってもらいたいね。その口調としぐさ。
「儲かっているの? 」
「そこそこだな。そこのパーシさんに頑張ってもらいたいところだ」
チクリと言ってやる。
その言葉に反応したか、パーシがピクリと動く。
「タツマさん。キッツいなー。今日は楽しみましょうよ。ビジネスは抜きですよ」
また、酒が注がれる。
「それにしても、ショーが豪華だな」
パーシに話をふる。
「そうですねー。ここの目玉ですから」
「もー。 ショーじゃなくてナーミャンとおしゃべりしてよー」
「はいはい」
さらに、酒が注がれる。
「じゃぁ。収入とかいっぱいあるの?」
「……そうだな。300万マリベル(3000万円)ぐらいはあるかな?」
実際は無給に近いけどね。社長なのに。ホントあの親父酷すぎる。
「すっごーい。それだけあったら色んなことができるね。 会社もお金あるの? 」
「ああ、親父からの相続で200億(2000億円)マリベルくらいはあるかな? いまは“商社プロメンテ”という会社のオーナーだな」
「いいなー。ナーミャンもその位の資産憧れちゃう! 」
酔いが回ってきた。
「こら。タツマさんは、うちの鉱山を立て直すために来た人なんだ。そのためのお金なんだぞ」
向かいの給仕の女性も乗って来る。
「えー。すごーい。ここの鉱山を立て直すの? 」
隣のナーミャンもおだてて来る。
「タツマさんって凄い人だったんですねー」
追加で酒が注がれる。
パーシが口を開く。
「さすが、タツマさん。できる男は違いますねー。ところで、あれから考えたんですよ。私ではこの鉱山を守っていけない。しかし、従業員たちの生活もある。
そこでなんですが、どうでしょう。50億(500億円)で私の鉱山の権利を買い取ってもらいないでしょうか? 」
「タツマさん。 50億(500億円)なんてお金うごかせるの? 」
「大丈夫ですよ。うちが世話になっている銀行もおります。彼らから低金利での融資が可能です。貴方の才能をぜひこのシメリア鉱山で開花させてくださいよー」
「きゃータツマさんかっこいい。こんど私も指名してよ」
周囲から同調圧力を加えて来る。
「馬鹿をいうな……あれはパーシさん。 あんたの仕事だ――ろう」
かなり酔いが回って来る。
「ですね。すみませんでした。 いやー酒の席で言う内容ではなかったですね。つい」
少し引き下がる、パーシ。
飲みも進み、ショーも進む。
「ところでタツマさん。このキャバレーはどうです? 」
「いい――ところだな」
酔いが回ってくる。
「気に入りました?」
「ああ。ーーそうだな」
「でしょー。会員制なんですよ。 ここらのリッチマンの集いで、よく使われるので良ければ会員証を作りませんか? 」
「それなら――作っておこうか」
酔いがかなり回っている。
「じゃぁー決まりですわ! ほら書類を持ってきて! 」
パーシが煽る。
男性の給仕が、書類を持って来る。
「ここに、サインするだけでいいんです」
「また来てくれるの! 素敵! 今度は外で会いたい~」
書類にサインして、その後、はあまり憶えていない。とにかくホテルに帰ってくる。
その日は、酔いつぶれ寝てしまった。
翌朝からホテルのドアを叩く音が聞こえる。
「アルプ出て」
『了解です』
『どちら様でしょうか? 』
「パーシだ。 タツマいる? 」
『おりますが、今就寝しております』
「そっ。じゃぁさ起きたら シメリア鉱山開発社 に来てくんねーかな。昨日のことで話があるんだ。じゃぁな」
『了解しました。……だそうですよ』
アルプが徐にベッドで寝ているタツマに、モノアイを向けて来る。
「あいつ早起きだな」
*
スーツを着て、自動車に乗り込みシメリア鉱山開発社に向かう。
会社の外には秘書さんが待っており、どこかそわそわしているのが分かる。
今回はアルプともに彼女の招きで応接室に向かう。
「何かあったんですか? 」
「いえ……その……多くの人達がおりまして」
彼女の歯切れが悪い。
そのまま、室応接に入ると数人の男性とパーシがいる。
「よぉタツマ。 おそかったな。この人たちは俺の銀行仲間。そしてこれが、昨日お前がサインした書類。 よかったな、坊や。これでこの山は、お前のもんだ」。
パーシは、昨日酒場でタツマに書かせた書類をローテーブルに置く。
「ちょっと待て! なんのことだ」
タツマも反論しるが、彼の見下した態度で言い放つ。
「またねーよ。 昨日サインしたろ? この山の権利を俺から50億で買うって。 権利はお前に移行した。ついでに、俺の銀行にも状況を説明しようと思ってさ」
昨日の鬱憤を晴らすかのような態度である。
「ネスからお前が商社プロメンテのオーナーというのは聞いている。 お前が会社を持ってから財務状況が大分良くなっている用じゃないか。 だから俺の共同経営権をお前に譲るよ」
「何を言っている。 この山の管理は、お前の管轄だろ! 」
「いいや。もうお前が。お前達の管轄だ。 お前のサインは、商社プロメンテの同意になるのも聞いている。 そうそう、シメリア鉱山開発社にも借金があるから、返済しておけよ。」
「ふ……ふざけるな。あんな場所での契約なんて無効だ! それにキャバレーの会員証の話だったろ! 」
昨晩の会話のレコーダーを流される。
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”貴方の才能をぜひこのシメリア鉱山で開花させてくださいよー”
”ーーそうだな”
”うちが世話になっている銀行もおります。彼らから低金利での融資が可能です。どうです? ”
”それなら……”
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上手い具合につぎはぎされている。
「お前がどう騒ごうとこっちには契約書のサインがある。 残念だったな。 坊や。 おめーは、もっと世間を見ることから始めるべきだったな! 」
ニヤニヤしながら勝ち誇った笑顔を浮かべる。
「おまえ! 騙したのか! 」
「知らねーな。そうそう、俺への50億マリベルの入金は、この銀行に聞いてくれや。 早めに入金しろな。 因みにーネスからお前の財産の裏取りもできている。 俺が聞いたらぺらぺらと喋ってくれたよ。 まっ払えなければ差し押さえだ。 じゃぁな」
パーシは応接室から笑いながら出ていった。
契約書を落とし。タツマは、膝から床に崩れ落ちる。
床に這いずっているタツマに対して銀行員の一人が話しかけてくる。
「タツマさんでしたか? 我々は、この会社に150億マリベル(1500億円)ほど貸し付けております。 パーシさんから会社の権利を50億で買ったとお聞きしまして、本日伺いました」
口調は穏やかだが、事務的にも聞こえる。
「まさかとは思いましたが、こうして権利譲渡書にサインもある。 先ほどの話から色々あったと思いますが、今後はあなたから返済してもらう必要があります。
お若ですがよろしくお願いしますね。
秘書の方もいるようですので、口座や返済方法は確認しておいてください。それでは」
詐欺師に騙された哀れな若者とみているのだろうか?
淡々と連絡事項を伝え終えると銀行員達も応接室を後にしていく。
残されたのは、アルプとタツマ、そしてシメリア鉱山開発者の社長秘書だけである。
秘書さんはおどおどしている。いつもおどおどしてない?
「……あの? 大丈夫ですか? 」
初めて声をかけてくれた。
しばらく、床に突っ伏したままのタツマであるが、徐々にプルプル震え始める。
「ふふふ……。ふふふ……。いいね。いいね!いいね!!痛快だ!!!」
これほど身震いしたのは人生初だ。
『大したものですね』
アルプが呆れながら、ここで初めて反応する。
急なタツマの代わり身に秘書がおびえているが、そんなのは気にしない。
「アルプ!! 」
『なんでしょう』
「この秘書さんから現在の鉱山開発社の現状を確認して、帳簿から権利の範囲もすべて。 正確な鉱山範囲も知りたい。 借金は一気に返済する。 利息がもったいない」
『了解です。 手続きを進めます』
テンションが高めのタツマに、秘書さんが恐る恐る話しかける。
「あのータツマ社長? になるんですか? 」
「なんでしょうか! 」
「この会社の経営権を50億(500億)で購入したんですよね」
「ええ。 アルプ。 破格の安さだと思うけど」
『そうですね。借金もありますが破格の安さですね』
裏を知っていれば借金含めても、とんでない破格の値段だ。 タダと言っても過言ではない。
秘書さんはこちらの発言にあまり興味がなさそうだ。 騙された少しおかしくなった哀れな青年と見えているのだろう。
「この会社ですが、前社長がかなりの横領をしていて、それでかなりの借金体質になっていまして」
「……ほう。横領ね。君はそれを告発とかしなかったの? 」
「それが……周りの人もそれとなく知っているらしくて。 ついでにそのパーシさんからも色々わたっているらしくて、どうにも出来なくて。“切られたくなかったらだまっとけ”って。
末期かもしれませんが、この会社よろしくお願いします。何とか立て直してください」
あの男にしては、どうしてこんな女性を秘書にしていたか不明だが、御しやすく有能だったあたりだろうか?
もっとケバイのを連れているイメージだが、これも嬉しい誤算かもしれない。
「……この会社にそんなに愛着があるの?」
「みんな文句は言っていますが、なんだかんだで、愛着があって、一生懸命なんです。 私もこの会社に拾われたようなものなんです! どうかお願いします」
――この熱意本物だな。
「わかった。その情熱気にいった。今日から君が副社長だ! 」
「……?」
「役員は全員解雇! 横領を見過ごしていたんだから。 人事も君が、えーと」
「ショーン・シーラです! 」
「そう。ショーンさん今日からあなたがこの会社を率いてくれ。 人事から何から何まで、君に任せる。 会社を、地域の職場を守るのが君の役目だ。 私は、恐らくまた別の場所に行くことになるから」
「???」
「君は経営を近くで見ていたんだろ? 君ならできる! 」
「はい! よろしくお願いします」
彼女自身、自分が何を言われているがよくわかっていないようであるが、無視して話を進める。
「アルプ。 後でトークンを一体ここによこして。 あとは親父からサバエアより経営の助っ人を派遣してもらって」
「???」
『了解です。手配をかけておきます』
「それとメインイベントだ。 早速だけど本格的な地質調査の実施だ」
『既に有能な数社を上げております。 準備は万端です』
「???」
秘書からクラスアップのショーン副社長は、現状が飲み込めていないようだ。
彼女にはあとで教えるとしてまずは、喫緊の問題を解消していく。
オガネソンの鉱床なんて国家管理になるほどの最重要物件。
これをたった150億(1500億)マリベルで手に入れられる。
腐れ縁の銀行もここで切って、おさらばだ。
鉱山の市場価値? 購入価格として桁が三桁違うところになるが、ヒルベルト商会の金庫が、ほぼ空っぽになる。
金を稼ぐのは難しいが使うのは簡単なのを地で行く結果だろう。
―― 内部留保がすっからんかんかー まぁいいや。商社プロメンテの上がりを当てる事で、当分何とかなるだろう。
タツマのどんぶり勘定的楽観視で、現実から目を背ける。
今考えても解決しないのであれば、負担は未来の自分に預けると言ったところだろう。
*
2日ぶりにモーテルに戻る。
サナエさんの部屋から声が聞こえる。
「うにゃーーーーーーーーーーーーー」
「サナエさんの声だ。どうした? 」
まぁモーテル内だから事件ではなさそうだけど。
『マスターのただの癇癪でしょ。放っておきましょう。それよりも上手くいって何よりです』
マスターの声を聴いても動じないAIもどうかと思うが。
「アルプのおかげだ。 助かったよ。 これから本格的な地質調査だ。 分析作業はまかせていいかな。 私では分からないし」
『了解です』
「それと、鉱山区画の範囲の確定と権利移行に関しては弁護士を入れてガッチガチに固める。
横流しはなくなるから、少しは余剰益がでるはず。 余剰益は全て、労働者や労働環境改善
に回そう」
『いいのですか? 』
「構わないさ。オガネソン鉱床が出てきたら、彼らには今以上に働いてもらう必要がある。 繁忙ではない現状で鉱山インフラを整えた方が、効率的だろ? 先行投資だよ」
未来の話に花を咲かる、タツマとアルプ。
サナエさんが自身の部屋のドアを開けて出てきた。
「タツマ! あんたどこ行っていたの! 」




