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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
3章 火星着星
20/52

鉱山都市 シメリア都市国家

鉱山の爆薬を届けにシメリア都市国家に到着したタツマ一行。

しかし、配達業務を経て妙なことに首を突っ込む雰囲気になっていく。


「ついたー。意外に涼しいわね!」

カーゴ車両から飛び降りる。サナエさんのシメリアでの第一声になる。


今は朝である。

前日に宿が取れず夜通し走しることになったため、一晩中車両の中だったので体がなまる。


郊外の広めの空き地にカーゴを止めて、一休みだ。


ストレッチをしながら、空気を感じる。


高原道を通ってきたので標高はそれなりにある。

そのため、プロメンテ(穀倉地帯)に比べると気温が低くて、今の季節だと心地よい。


「さてと、目的地には行くとして、キャンプ地(宿)はどうするの? 」

ストレッチが終わったサナエさんが、タツマに聞いて来る。


「モノを渡して終わりだろ。別に長期滞在するつもりはないけど? 」


「せっかくここまで来たのに、荷物おいて直ぐ帰るとかありえないんだけど。1ヶ月ぐらいバカンスよ。 バカンス! 」

早期帰宅は、ご不満のようだ。


「プロメンテ(穀倉地帯)の方も順調に進捗しているようだし……分かった。アルプ。長期滞在可能な宿屋とかある?」


『モーテルが郊外にあります』

“またモーテルかい!”と思いつつも無駄使いは出来ない状況であるため、認めるしかない。


「じゃぁ。 そこに行ってくれ」

夏の長期休み。 今までの労働を思えば問題なしだろう。


今度こそ羽を伸ばす。

農業でのスローライフが出来なければ、山岳の避暑地でのスローライフだ!


タツマのテンションも少しばかり上がる。

カーゴが走り出す。


途中の牧草地帯の動物に旅のテンションも上がってくる。


                       *


モーテルは、鉱山都市の郊外にあるようだ。鉱山都市内は道幅が狭く、入り組んでいるようだが、

運転技術が上がったアルプのドライビングテクニックでそれなりに進んでいる。


「ちょっと! アルプ! ハンドル急すぎ! 」

しかし、まだ運転に粗がある。


『道が蛇行しているのです。 諦めてください! 』


しばらく走ると、郊外に抜け、モーテルが見えてくる。ここは、鉱山都市であるため、仕事での利用者が多いのだろうか、ヘスベリア(港町)よりも綺麗で駐車場も広い。


街中の移動もごたごたが有りつつ、モーテルに到着する。

早速、店主に長期滞在の状況を確認すると、問題ないとの返答がもらえた。


サナエさんに部屋を割り当てし、自身の部屋に入る。

どんな安宿でもカーゴより広々使える宿の部屋は、精神的に落ちつける。


宿の部屋で一息つき、ビャーネさんの所有の会社“シメリア鉱山開発社”に連絡を入れると、午後に小型運搬車でここに向かい来るとのこと。 時間まで少しある。


「しばらく、休むか――」

ベッドに寝転ぶ。 昨晩が車中泊であったため、ベッドのリラックス感でたちまち眠くなってくる。心地いい状況に陥るが、それと同時にドアをノックする音が気聞こえる。


「……マ。……ツマ」

浅い眠りから覚める。寝ぼけた状況でドアに向かっていく。


「タツマー。どこか行こうよー」

ドアの向こうから知った声が聞こえる。


―― いや初めての街にきたので興奮するのはわかるけどさ。 

改めて彼女の活発さに少し引きながら、部屋のドアを開ける。


「はいはい。どうしました? 」

「遊びに行こう。町に行きましょう! 」


「いいけど。積み荷を置いてはいけないよ。モノがモノだし」


「アルプと護衛のトークンに任せましょう。そのためにいるんだし! それにここは治安良いんだらか、問題なしよ! 」


「とりあえず、あと数時間で発注者からの連絡があるから、少し待って」

「じゃぁ周辺の散策は? 」


何か、しょんぼりした顔になる。こうなると弱いのが、タツマになる。

「まぁ、近所なら問題ないか。じゃぁ行きますか」


結局、アルプと護衛トークンが、車両の警護のため車両に待機させ、タツマ達は周囲の散策に出る。


鉱山都市の宿屋周辺だけあって市内ほどではないが、店舗も多い。飲み屋も多い。

――寂れていそうで、それなりに栄えているっぽい


サナエさんがワクワクしながら散策しているようだ。楽しめていそうでなにより。


「へー。 ヘスベリア(港町)に比べると活気があるのね」

「そのようだね」


「発注者は午後に来るらしいけど、こちらから直接届けるんじゃないのね? 」

「ものがモノだからね。 受け入れの状況やモノの確認でもしたいんじゃないかな? 」


ふーん。といった感じで聞いている。

周囲が山なだけあって、緑の青さが際立っている。まさに燃えるような緑といったとろだろう。


郊外であってもそれなり人が多い。


散策中、喉が渇いたとサナエさんからの要望でカフェに入ることになる。

何気に乳製品系の商品が多い。


「乳製品推しなの?」

「アルプが牧畜も盛んとか言っていたからその影響じゃない? 」


「なるほど」

写真をまじまじと見ているサナエさん。


「このチーズケーキいいわね! あっこちらのチーズサンドも捨てがたい。 ホットサンドもあるんだー……すみませーん」


サナエさんが何か続々と選んでいる。

―― そう言えば朝食がまだだったかーって注文量が多くない? 


「ちょっと! 食べきれるの? 」

「大丈夫。 大丈夫。 タツマもいるんだし」


欲望のまま注文しているサナエさんにクレームを入れていると、近くの席から会話が聞こえて来る。

“また鉱山で事故があったんだって? ”


“このところ、小規模だが多いらしいな。 今のところで死亡事故までは発生してないが、労働者が現場改善要求でオーナと揉めているってさ”


――また厄介な時期に来たものだ……。まさか、ビャーネさんのところじゃないよね? 

タツマに不安が過る。


“今日、オーナとの話し合いだってさ”

“あの日焼けしたペテン師見たいな奴だろ? あの色だって、労働じゃなくて趣味で日焼けしったていう噂じゃないか? ”


“らしいな。 日がな一日。 日光浴らしいぜ”

“そんな奴が、労働組合の内容を簡単に呑んでくれるかね? ”


隣席の話を漏れ聞きながらタツマ達の会話もブランチの注文から仕事の話に変わっていく。

「仕事。 大丈夫なの? 」

「我々の任務は運輸だし、変なことには巻き込まれないと思うけど」


「そうね。 気にしてもダメだしね」


そんな会話をしていると、注文したものが、続々と届く。

乳製品を筆頭に香ばしいパンの香りが鼻腔をくすぐる。


―― 量も多いが、味が濃そうだなー


                   *


見た目以上に重たいブラインチを済まし、カフェを後にする。 


「どうだった? 」

「いいわね! 中々濃い乳製品だったわ! 満足よ! 」

―― あれだけ食べてよく平気だな


「……それは良かった。 そろそろ、戻るけど? 」

「そうねー。 ちゃっちゃと仕事を片付けて、バカンスよ! 」

そんな会話をしながら、宿に引き換えていく。


午後になると連絡をいれたら小型カーゴ数台と共同経営者が現れた。

とりあえず、モーテルに留めているカーゴの近くで話すことになる。


共同経営者と名乗る男の風体は、背はタツマより高く、白髪が混じっているがきっちとヘアースタイルを整えて、浅黒く肩幅がひろいが、目つきが堅気に思えない。 タツマの今までの直感がその違和感を捉える。


―― なんか、胡散臭すぎる経営者だな。それにカフェの隣席から聞こえて来た会話と一致している気がするんだけど。


「いやー。 遠路はるばるご苦労さん。 ネスビャーネさんには、色々お世話になっていてね」


とりあえず、サナエさんはこの場にいない。

厄介な案件になりそうなため、モーテルの室内にいる。


この案件に関しては、アルプと共に対応することにした。

―― 勘が当たりそうで嫌なんだけど


タツマは心配を押し込めて努めて平静に対応していく。


「ご要望の爆薬は、こちらのカーゴにありますので、引き取っていただければと思います。それが済みましたら我々も、帰りますので」


「まーそう言わず。 あのネスさんが新しい会社を興したって言うからさー商社プロメンテだっけ? あんた。 そこの社員だろ? 」


「ええ。そうですが」

―― 社員ではあるが。なんだ?


「じゃぁさ、これから少し付き合ってくれよ。ちょっとした会議があるんだ」

「いや、しかしですね」


「まーまー。お前のところ会社にも関係があるんだしさ。なっ」


爆薬は、小型カーゴで回収され山の方に向かっていった。


一方で、タツマとアルプは強引に車両に乗せられ、車両に揺られ到着したのは、街中の集会所になる。

半分拉致のような方法で連れて来れられ、そのままに中に入る。


中に入ると鉱山労働者だろうか、一同そろってかなりの剣幕で待ち構えている。

胡散臭すぎる経営者が、口火をきる。


「さて、皆さん今日の議題はなんでしょうか? 」


“何でしょう? じゃねーだろ。ここ数カ月事故が起こりっぱなしなんだ!!安全設備や作業工程の緩和をしろってんだよ”

“怪我人への保障が少なすぎるだろう!”


“賃金ももっとあっていいはずだ! 採掘量と合ってないぞ! ”

“だいたい! 工作機械が古すぎる! どうして更新しないんだ! ”


――かなり険悪なんですけど

タツマも知らずに責められる側に巻き込まれているため、感情がモヤモヤしてきている。


しかし、この共同経営者涼しい顔をしている。


「ケガをなさった方には、大変申し訳ない。しかし、先立つものがないのも事実です。 今回も共同経営者の商社プロメンテから爆薬を譲っていただくほど財政は逼迫しております。


これで何とか鉱山を維持している状況なんです。 分かってください。 私はあなた達の生活を守るために必死なんです」


―― 爆薬をあげるなんて聞いてないぞ。


「どうかここは怒りを鎮めてください。 寄付をしてくれた商社プロメンテの方もいます。 何とか生産量をあげて山を共に維持していこうではないでしょうか。


安全設備については、おいおい考えておりますので、どうかお待ちください。 爆薬も手に入ったので、次の坑道建設も可能になりました。


ここで優良な鉱床がでれば、今度こそ安全設備や福利厚生に手が付けらます。それまでお待ちください」


――なんなんだこれ?


“次の坑道ができれば何とかなるか”

などの不満を口にしながらも徐々に怒りは収まっていく方向にながれる。


「みなさん。 この状況でも私も共同出資の商社プロメンテさんも決してこの山を見捨てているわけではございません。 もうしばらく、辛抱してください」

最後は、この男の泣き落しにはいる。


その様子を見て労働者が不満が有りながらも会場を後にしていく。


―― なんて奴だ。

集会が終わると途端に早変わりするこの男。


「いやー隣にいてくれて助った。 よそさまだと強く出られないからね。特に寄付をしてくれた人がいれば、なおさらのこと。労働争議の日に合わせて正解だったな」

―― こいつ計画的に嵌めたな


「あのー。ネス社長はこのことを知っておられるんですか? それに爆薬を譲渡するとは聞いていないんですけど」


「あー大丈夫。 社長には俺から伝えておくから。 ご苦労さん! じゃぁな! 」

彼は、自分だけ自動車で会場から去っていった。


ここからどう宿に戻れと? 

「アルプ」

『なんでしょうか?』


あいつ名乗りもせず、去っていった。

「あいつが共同経営者か? 」

『はい。名はパーシ・アニュトン。 事業拡大に失敗した人物です。 そこまでの情報は抑えております』


「詳細を頼む」

『了解です』


結局、徒歩でモーテルまで戻るはめになった。


どの程度歩いただろう。

昼間だったあたりの風景は、すでに街に明かりが灯り始めている。


宿に到着するとくたくたになる。


「こんなに遅くまでどこでなにしていたの!!」

おかんむりのサナエさん。言い返す気力もない。


自分の部屋に入るが、アルプとサナエさんが付いていくる。

タツマは椅子に座り、サナエさんはベッドに


“アルプもいながら何やっているの!”

などの小言が耳に入る。


取り敢えず、電気ポットからお湯をカップに入れ、喉を潤す。

「疲れたー。アルプ。何かわかった? 」


『ええ。 それなりに有名人のようです』

「何よ! 私をのけ者? 」


『ここの共同経営者の事です』

「へー名前は? 」

サナエさんが少し食いついて来る。


『名前は、パーシ・アニュトン。 様々な所で詐欺まがいの行為を働いているようです。 現在、7件の告訴があります』


「そんな奴でも事業は、失敗のね」


『はい。 人は騙せても、相手からの上手い話しに弱いのかもしれません。それと――』

「それと」


『ここの採掘量ですが、実際に見た山の規模と採掘量から推測ですが、規模と採掘量が合っていない印象を受けます。 おそらく過小に報告されています。 いくらくたびれた山とはいえ、この量はあり得ません。 帳簿操作があると予想されます』


「横流しか……」

タツマが勘づく。


『推測になります。 鉄道での運び出しになるとどうしても大雑把になりますし、ここには共同経営者のビャーネさんもおりません』


「ビャーネさんは、事実を知らない? 」


『おそらく。 実際、商社プロメンテその前のネス氏の会社への入金もほぼゼロ続きです。 会場の時のように、社員を雇うため、今は我慢してくれとでも言われているのでしょう』


なるほど、ビャーネ社長は現状を知らずか。 

爆薬も会社の者が届けるとも言ったのだろう――お人よしにも困ったものだ。


それにしてもあの男は、今回の爆薬も同じ手で対応する気か。忌々しいが打つ手がない。

この手の輩から金をとるのは、金と商品を直に交換にしないと厳しい。


「とにかく、お使いは終わりだ。これで帰れるのか――」


サナエさんの檄が飛ぶ。

「ちょっと何言っているの! 長期休暇でしょ。それに舐められっぱなしでいいの! 」


もう関わりたくないと逃げ腰のタツマに対して、アルプから提案してくる。


『タツマ。 現場に行ってみませんか? 』

「現場って――鉱山に? どうしたの急に」


『あの鉱山ですが、鉱山地域管理の人工衛星の情報を精査すると、ときどき放射線量が多くなる時があるのです』


山崩れや事故発生時用に鉱山地域は、人工衛星で管理をしている。鉱山オーナであれば情報の閲覧が可能なのだ。 それほど多くはないが、マールス(火星)にもそれなりには存在している。


「いやいや。危険じゃないの。やだよ。そんな鉱山に入りたくない」


『いえ。時々なのです。岩盤破壊など大きな破壊活動が、いわゆる発破作業があるときだけなんですが』


アルプの説明では、発破活動の時のみ放射線が出ており、それ以外は平常値で害はないとのことだ。直ぐに治まってしまうため、見過ごせる程度の問題とのこと。


「それで? 」

『調査してみませんか? 』


「無理。 無理。 地質学の知識なんてない」

『私がわかります。行ってみましょう』

いつになくアルプが積極的である。


「行くとしても理由は知りたいところだけど? 」

『あくまで環境データから予測しかありませんが……』


「おう! 」

『貴重な鉱物資源が眠っている可能性があります』


「その貴重な鉱物資源とは? 」


『現時点では、不確定ですので発言は控えます。 まずは、実際に行って確認です。 それに推測が当たっていれば、インパクトは絶大でしょう』


もったい付けるアルプであるが、何やら本当の山師みたいな話があるようだ。


「……わかった。行ってみよう。サナエさんは留守番ね」

「えー。どうしてよ! 」


鉱山に女性は連れていけないでしょ。それに雰囲気が場違い過ぎ逆に目立ってしまう。


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