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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
3章 火星着星
14/54

港街 ヘスベリア都市国家

数日間かけてヘスベリア地域に入る。

キンメリア大陸内の都市国家間の国境警備は緩い。 警備員がいるが、それだけである。


挿絵(By みてみん)


アルプによると地域を跨いだ犯罪組織を捕まえるためにいるが、実際はいるだけの仕事のようだ。

役人天国を地で行く緩さとのこと。


便利だよね。ネットワークにつながって検索してくれるのって。

情報が直ぐに分かる。


カーゴは丘陵地帯を超えた高台を超えると前方に海が見える。


「おお!! 海だー!! いいよねー海はいつみても興奮する」

サナエさんが興奮気味に叫ぶ。 


――メレア街道の時はタブレットを弄りまわしていただけと思うが、ここではいうまい。

とタツマも思いつつも、自然の雄大さには、いつも心を惹かれるものがある。


『海沿いの町が、ヘスベリア地域のベイエリアになります』

「外から見ると、それなりか? 」


『通常の漁師街ですね』


「早くいきたい。 なんか美味しいものとかあるのかな? 栄養食ばっかりで飽きてきたのよねー」


カーゴは、徐々に街に近づく。

活気があるとは言えないが、そこそこに栄えて、そこそこに廃れている。


しかし、ここには日常がある。プロメンテのような荒廃感がないのが、救いになる。


「アルプ。 この周辺でカーゴが止められるような宿屋ってある? 」

タツマが質問する。


『了解です……ありますね。そちらに向かいます』

カーゴ車両が、アルプに操作され目的に向かう。


検索から半時(1時間)ほど運転すると、さびれた建物群が見えてきた。モーテルのようだ。


「えーあそこー? 」

サナエさんが多少不満そうな意見が出てくる。


「そうです。 お金がないので」

馬鹿な買い物して、せっせと返済中の会社だからね。


「まっいいか」

しかし、意外にあっさり引き下がるサナエさん。


駐車場にカーゴを止めて、宿屋の主人に宿泊の確認をする。

長期滞在を予定していると伝えると快く泊めてくれるようだ。期間は1か月を予定している。


各人の部屋を割り振る。 といってもアルプとサナエさんは同じ部屋ね。


この街にも大規模な投資が必要かもしれないため、下準備の資料や情報が必要になって来る。

投資に値するか、1か月間この街を調査する。


部屋に入り、頭の中を整理もかねて計画を書き出す。

・住民の生活模様

・都市の経済規模の実態

・港や船の大きさや数

・漁獲高

・町の治安状況

か、とりあえず、追加があれば対応しよう。サナエさん達が約束の時間に部屋に来た。


「で考えはまとまった?」

「まーね」

各端末にまとめたデータを送る。アルプには統計データの調査をやってもらう。


『タツマ。 実態というのがよくわかりません。統計データで十分では? 』


「街の雰囲気だよ。 貧しくても安心している地域か、活気があっても治安が悪いなど。地域にいないと分からない情報だ。 特に最後の項目に関わってくる」


「最後を調べる理由は?」


「港町だから、危ない奴らもいるだろう。 交易路は往々にして犯罪も横行する。 治安が悪ければ、賄賂要求などたかられる恐れがあるからな。 それの調査だ」


「見つけたら排除するの? 今の私達なら出来そう! 」

ファイティングポーズを取り、ジャブを打っている。


その言葉にタツマの視線と言動が強くなる。

「相手も知らずに自らの力を過信するなよ。 過信は死を招く。 経験者からの警告だ。 アルプもだ」


「おお。 こわっ」

『了解しました』


一通り説明が終わるとタツマからの解散の合図がでる。

「明日から調査開始だ。今日は部屋に戻って寛いでくれ」


サナエさんとアルプが部屋から出ていく。

こっちでもネットワークからの情報を収集整理しておくか……


ヘスベリアの夜は更けていく。


                      *


朝日が眩しい。


宇宙船にいたころには、経験しない状況だ。

定刻になると電灯が付くだけの頃比べれば、贅沢に感じる瞬間であり、地上の醍醐味になる。


起きてモーテルのダイニングに向かう。宿屋の主が朝食を準備してくれている。

朝だけは食事を出すとのことだ。


とりあえず、席にすわりラジオの音楽に耳を傾ける。

「おお、タツマ。 早いね! 」


―― 朝から元気がいいな。この科学者。

朝食を食しながら、今日の予定を伝える。


サナエさんは、新市街の調査。自分は旧市街を担当する。

法律上、武器携帯の制限はないようだから、護身用の装備を与える。


「うーん。 アルプと一緒に行くから別に必要ないと思うけど」

「それでもだ。 それにマールス(火星)人は、トークンやAIに嫌悪感を示す者も多いだろ? 」


「……りょーかい」

渋々武器を受け取るサナエさん。


彼女は一足先にアルプと一緒に先に新市街への探索に出て行った。


こっちは、少し準備をしたのち、徒歩で旧市街地へ向かう。

バラックなどスラム街がないな……道路わきもごみの山というわけでは、なさそうだ。


事前情報だとそれほど危険な場所はないため、コンバットスーツは装備せず向かう。

念のため武装と道中合羽を着込んでいる。武装はおそらく使う予定はなさそうだ。


廃れているといっても意外に平穏な漁港なのか?

太陽が高くなり、街が見えてきた。開いていている店もちらほらある。


食料品店や衣料店である。 住民向けの店舗が多い。 観光客相手のような感じはしない。

日が昇ると人通りも出てくるが、地方の港町。 都会ほどではない。


高齢住民の井戸端会議は、惑星・地域が変わっても変わらないな。地域が落ち着いている証拠だろう。愛玩の小動物もチラホラ見える。


と共に、住民からの視線も感じる。 道中合羽姿故やはり周りから浮くのは仕方ない。

そう思いながら、旧市街地をしばらく歩くと呼び止められる。


治安隊らしき二名一組が、こちらを警戒しながら近づいて来る。

「ちょっといいですか? あなたどこから来たんですか? 」

「ここら辺の人じゃないですよね。 何用にこちらへ」


―― 装備が自動小銃とは、物騒すぎないですかね。


「私、惑星間貿易商をしておりまして、この地域で商売を考えております。今日はその下見と調査を行っているところです」


タツマは、あやし稀ない笑顔と共に惑星間貿易商の許可証とマールス(火星)への滞在許可証を見せる。


治安隊の一人が“……惑星間貿易商って何?”と質問してくる。

―― ええ。 説明しますよ。


                      ・

                      ・

                      ・


「へー別の惑星からねーでもこんな田舎の港町。 何もないよ」

素性がわかると多少相手の警戒感が解けて来る。


―― このまま情報を聞き出すか。


「そうですか? いい街だと思いますけど。 こうゆったりとした時間が流れているような気分で心が落ち着くのが、いいですね」


自動小銃で装備しているのに、安全ではないと思うけど。

地域にはいったら町へのリスペクトは必要なのよ。どこでもね。


「……まぁ。よそ者にはわからないと思うけどさ。この町も色々あるわけよ。 俺達もこうして見回りしているけど、荒事も多いのさ」


「おい! よそ者に話してどうするんだ! 」

治安隊側で多少のいざこざが発生するが、タツマが構わず発言していく。


「いえいえ。 私も商人ですので。地域の情報はありがたいです。 そうそう、周辺の道は随分と荒れておりましたが、この町の物流とか物価とかはどうなんでしょう」


「……お前。 なぜそこまで深堀する? 」

もう一人が急に疑りだした。ここで焦ってはいけない。


「商人ですので。商売を行う上で商売場所の状況確認は必須なんです。 軍人さん達もまずは、現状確認から入るでしょう? 」


「……確かにそうか」

相手を納得させることで、相手の警戒心は、さらに下がっているようだ。


―― そろそろ、こちらから話題を振ってみるか?


「どうです。 今晩どこかの酒場でおごりますのでこの町のこと教えていただけないでしょうか。 もちろん、町のルールは守りますよ」


「ほう。 殊勝じゃないか。 気に入った。 じゃぁ三番区にバルがある。 そこに顔を出せ」

「ありがとうございます。では後程」


まずの情報源を確保。

さて、夜にはまだ時間があるな。もう少し見て回るか。


旧市街は、歴史的というよりただ単に古い建物が多い。

昼間だからか特に治安も問題なさそうだ。新市街の状況はどうだろうか。


タツマがサナエさんに連絡をいれる。

≪サナエさん。 そっちはどう? ≫


≪特に何にも。ちょっとした高層建物の間を歩いているだけ。それと巡回している治安隊から声を掛けられるぐらい。トークンが原因かしら? ≫


≪ああ。ユピテル教? ≫


≪ユピテル教じゃなくてもマールス(火星)人の中には、トークンやAIに良い感情を持っていない人がいるのは確かよ。 テラのような自由と平等な思想だといいんだけどね≫


――テラもそれほど自由・平等にあふれている場所ではないんだけどね

≪それは大変≫


≪あとナンパが多いんだけど――トークンがいてもお構いなしのね。 一般人からは、特段差別意識を感じる地域ってわけでもなさそう≫


――ナンパが多いねー自慢ですね。ありがとうございました


≪……自慢とか思ったんでしょう? ≫

電話越しでも考えが読まれるものどうかと思うけど。

※マールス(火星)人の読心術には、そこまでのことはできません。彼女の推測です。


≪それで、ナンパ以外に分かったことは? ≫


≪特に何も。アルプ何かあった? ≫

≪こちらの人々の会話から旧市街の人間を快く思っていないようです≫


≪また、どうして?≫ 


≪新市街地の住民は貿易相手を同じキンメリアのティレナを中心とした海洋国家としたいようです。 しかし、旧市街は、サバエア大陸と仲が良いらしく、思うように計画が進んでいないのが原因のようです≫


サバエア大陸とキンメリア大陸は、仲が悪いとの情報だが、現地レベルではそうではないのか。

両方とも巨大な大陸だ。容易なレッテル貼りは無理があるか。


「そんな情報なかったわよ」

『私は他者の会話を盗み聞けるので』


“ずるーい”とか向こうから騒いでいる声が聞こえ、暫くするとサナエさんの声が再び聞こえて来る。


≪となると。あんたの着眼点はあっているということね。これからどうする? ≫


≪とりあえず、まだ情報収取して、適当な時刻になったら戻って休んでいて。 こっちは少し遅くなる≫


≪りょうかーい≫

こっちもしばらく、旧市街や港を回ってみるか。


--- 三番区のバル

日も落ちて窓に明かりが、灯り始めている。

薄暮を過ぎいよいよ宵の口と言った時間帯になる。海風が何気に気持ちいい。


――なるほど、バルはここしかないのか……分かりやすい。 それにこの時間なら、彼らもいるだろう。


ドアを開けるとカランとベルが鳴る。


その音に反応したのか中の連中が一斉にこちらを見る。

―― 道中合羽を羽織っているからやはり目立つな。


「おーこっちだ。 商人! 」

昼間の2人がカウンターに座っている。隣の空いている席に座る。


「昼間はどうも」

「さあさあ、まずは一杯」


小さいグラスにアルコールが入っている。ウィスキーっぽい。

とりあえず、飲む。 熱い。苦い。美味しくない。


タツマが、ショットグラスを飲み押すと治安隊の一人が早速話しかけ来る。

「お前さん、本気でこの町で商売する気なのか? 」


「まだ、わかりません。 実際、調査中ですから」

事実だ。


「いや。 俺たちもさ。この状況を変えたいと思っているんだけどさ。なかなか」

「外から人が来て、商売してくれるんならこの町も変わると思うんだけどな」


「というと? 」

「この町はな、サバエアのレーベとの交易でもっているようなものだ。でも新市街の奴らは、ティレナと貿易をしたいらしんだ。


しかし、あんな大型都市と交易したら、絶対いいようにされちまう。そもそも、俺達も大陸間の東西対立なんて興味ないんだよ。漁業で生活して レーベ と共に生活しているんだからな」


「そうなんだよなー。 ヘラス地中海を挟んでいるだけでレーベとは、関係は良好だし。 他のサバエアの都市とも問題なんてない。


結局エリス(サバエアの盟主)とテッサリア(キンメリアの盟主)がいがみ合っているだけなんだよ。


他の都市国家だって対立に特に興味ないんだよ。まぁ、大陸で一番経済力もあるから従うけどさ」


「なるほど。でも、民兵が入り込んでいるとかで、サバエアからの心象が悪いって聞きましたけど」

もともと、タツマが、ここに来たのもこれが原因だった訳のため、状況を聞いてみる。


「どーせ、テッサリア(キンメリアの盟主)あたりが、エリス(サバエアの盟主)あたりに仕掛けているんだろ? こっちはいい迷惑だよ。 第一、そんなことして、俺達になんの得があるってんだ」


確かに、表面上、双方に得がない行為ではある。なにか裏があるのか?


「俺はさ、この町にはサバエア大陸への交易路があるから、それを利用して誰かに産業を興してほしいのよ。 内部の人間では、漁業ぐらいしか思いつかないようだし。


他人頼みなのはわかっている。でも俺に商才はないし、金もない。治安隊ぐらいしかできない。 外部の人間ならしがらみもないし、何かしてくれんじゃないかって期待するわけ」

もう一人が、会話を継いでいく。


「俺達、自動小銃もっていただろ? 最近、裏家業の奴らがさ。薬の売買販路確保の目的での抗争がおおいの。 やだぜー知った顔に銃を向けるのって。嫌になってくるよ。


しかし、仕事がないとさ、交易路を悪用する輩もでてくる。 ここら辺の住民は船の操作はお手の物だからね」


そんな街の現状の会話をしながら、内容は徐々に個人的なモノへと移っていく。

起きた事件の対応、業務への不平不満から始まり、こちらへの関心。


タツマとしては、惑星間貿易商としての経験として宇宙海賊との攻防戦を少し盛った形で話していく。 おとぎ話のような実話に相手もかなり食いついて来る


実際は本気の死闘であるため、現実は、物語のように実際は格好良いなんてものじゃない。

しかし、ここは飲み会の場。相手に娯楽を提供するのもまた仕事。


彼らは、タツマの語る宇宙活劇に目を輝かせて聞いている。

そんな話題でもり上がり、夜も更けたころ、彼らと別れた。


だいぶ ヘスベリア(港町) の状況がわかってきた。やはり現地に足を運ぶことは重要だ。

何気に潜在成長力がある都市なのかもしれない。


治安隊のおかげか、治安はまずまずのようだ。夜道も歩いて宿屋に戻る。

衛星フォボスが見えるが地球の月に比べて小さい。肉眼の場合、木星は点でしか見えない。


「さてと引き続きだな」


--- ヘスベリアの滞在記

あれから、半月が過ぎた。治安隊と顔見知りになったことで、情報が入りやすくなってきた。

サナエさんの方はアルプ頼みだね。サナエさん自身相変わらずナンパされることが多いようだ。


報告はナンパの人数になっている。


現在は昼、部屋で今までの情報を集めてまずのまとめを実施する。アルプとサナエさんが部屋に入ってくる。通信機も部屋の中に入れ、セレン(シップマスター)との回線も繋げる。


今まで集めた情報を確認しながら、資料をまとめていく。

アルプからは統計情報が提示されてくる。資料がまとまったのは、日が傾いたころだ。


「二人ともお疲れ様。情報がかなり集まったよ。特にアルプの能力は、さすがだね」

『お役に立てて何よりです』


「何よ。 私は役に立たなかったの? 」

サナエさんがにらんでくる。とりあえず、なかったことにして。


まず、色々分かったことを記載する。

・住民の生活状況は、色々だが普通だ。認識の範囲に収まっている。それもこのベイエリアが落ち着いている証拠だろう。プロメンテのように荒れていない。


・都市の経済規模の実態では、サバエア大陸との交易で生活しているようだ。多くもなく少なくもない。適正範囲内だ。


・港や船の大きさや数では、漁船が多い。貿易船はなし。もし貿易を実施するなら港の拡張が必要になりそうだ。ただ、水深が深い、良質の港なので工事費は巨額にはならないだろう。


・漁獲高は、生活する分だけとっているので、それほど多くない。


・治安状況は芳しくない。職がなくアウトローに流れる住民がここ最近増えている。まだ、マフィア等広域犯罪組織は絡んできてない。


こんなところか。


「落ち着いている地方の港町、しかし最近は職に就けない住民による犯罪も増加傾向にある。といたところか」


「セレン。 どう判断する」


『投資の価値はありそうです。 タツマの2段階目の計画書は、確認済みです。概算金額の算出に着手します』


「私、まだ2段階目の計画書。見せてもらってないんだけど」


「計画段階だから見せてない。 作成中の計画書は企業秘密だ」


「私もヒルベルト商会の社員なのにー」

「それでもだ」


さて次だ。 ネス氏に連絡をとる。

「お久しぶりです。 そちらのプロメンテの登記簿のリスト化状況はどうでしょうか? 」


「今のところ順調に進んでいますが、これに何の意味があるのが文句を言う連中も多い。 それらをなだめるのに苦労しています。 実際、私も早く説明してほしいのですが、どうでしょう? 」


「言ったはずです。 全部が完全に揃ったら教えますよ。 途中の計画は教えられないのが我が社の規則なんで」


「……わかりました。 それと、弁護士は何とか工面がきました。引き続き、登記簿からのリストアップを進めます」


通信が切れた。短い連絡であったが、何とかやっているようだ。

「大丈夫なの? 」


「出来なければそれまでさ。さて、今日はこんなもんだろう。明日からまたお願い。そろそろナンパ人数以外の報告も頼むね」

サナエさんを軽く煽ってみる。


ふんっと近くのクッションを手に取り、投げつけ部屋から出ていく。


まったく、天才にしては子供っぽい。


『それではタツマ。よい一日を』

その後を追うかのように、アルプが挨拶をした後に出て行った。


もう夕方だけどねー。


そこからさらに視点を広げて周辺の調査を進める。


レーベとの友好関係のレベルや実際に発生した揉め事、キンメリア大陸側の隣接都市国家との関係、加えてテッサリア(キンメリア大陸の筆頭)との関係など、表向きではなく実務レベルでの状況を確認まとめていく。


その様なことをしているとあっという間に既定の滞在日数に達してしまう。


タツマとしては、このヘスベリアはかなり居心地の良い、場所になっており去るにはなかなか名残惜しいとこともなる。


といっても、明日で調査が終わりになるため、この期間、顔見知りへの別れを告げに回ることになる。


今日は、カードゲーム好きでかなりの情報通の爺さんのところに、勝負で負けた分の支払いに行く。 といっても1000マリベル(一万円)のちょっといい酒での支払いである。


色々この地の情報も貰ったしその分の世話になったと思えば安すぎる手土産になる。

それにしてもあの爺さんカードゲームが強かった。


そのご老公は、いつもの場所で海を見ながら、軒下の陰から行き交う船を眺めている。

タツマが近づくとこちらに気づいたようだ。


「よっ。 じーさん。 明日でいったん戻るわ。 これゲームの負け代金」

酒瓶1本をテーブルの上におく。


「律儀なやつだな、お前さん」

「当分会えないしさ」


「プロメンテに戻るのか?」

「まーね。 もしかしたら、また来るかもしれないけど」


「お前さん。 あまり深入りをしない方がいいぞ」

「……?」


「例の土地の収奪法案があっただろ? ヘスベリアでもかなり話題になったんだ。 相当な裏があるんじゃないかってな」


「……」

「お前さんが、プロメンテで何をしたいかわからん。 が、噂話程度に留めておいて欲しんだが、 プロメンテの執政官ヒューリ・オーレの後ろにタニアがいるってのが、この一部での認識になっている」


確かにゴシップ界隈では、流れていたが真偽不明の情報にそんなのがであった。


「プロメンテを含めたあの辺りの地域は、キンメリアの穀倉地帯だからな。 一時はあそこだけでキンメリア大陸の20%の穀物を賄っていたくらいだ。 食料を握ることができれば、住民の命を握るからな。


実際プロメンテが法案で没落した後、周辺の地域への法律波及による食料リスクの懸念から食料価格は高騰したが、しかし都合よく タニア からの食料輸入で価格は落ちついたんだ。もちろん ヘスベリア も価格高騰の波に襲われて一時酷い状況になったがのー」


ゴシップ界隈の情報は、ほぼ聞き流すが、この老人の言うことは信用できる。

故にタツマは黙って聞いている。


「価格を落ち着かせるために、大きな港を持っている各都市は、港の利用権を タニア に開放したんじゃ。 完結にいうと関税免除だな。 税金をかけない分、住民は安く食料が手に入るんだろうが――これをどう見るかだな。 


まぁ、うちは陸路での ティレナ(キンメリア最大の港町)からの海上輸送やプロメンテ周辺からの陸路での輸入に以前のように頼っているがね。


港が小さすぎて貿易船の停泊し出来ないとのことで、タニアと条約締結できなかったんだがな」


爺さんは笑っている。ビンボーな港町は辛いなーとか言っているが、本心はどうだろうか。


「……」

「今更プロメンテの穀倉地帯をどうこうしたところで大きな問題はないと思うが。気を付けておけとの老婆心ながらの警告だ」


「分かりました。 気に留めておきます。 貴重な情報ありがとね」

なるほどね。ヒューリによる国売りか。 もっともビジネスといえばそれまでか。


タニアの手先として目的も達しているし、恐らく報酬も手に入れている。ここで動いても何かあるわけでもないと思うが……。


さて、一旦戻るかあの道を一日かけて戻るのは気乗りしないけど


つづく


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