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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
3章 火星着星
12/52

キンメリア大陸への道中

昨日は、レーベからサバエア大陸南部の検問都市プレヴィアを抜けた。

プレヴィアで一泊し、メレア街道を東進中である。


挿絵(By みてみん)


プレヴィア宿泊施設では、やたらマッド・キャミャエルに絡まれることになった。

今までのどんな仕事をしてきたとか、宇宙海賊に襲われたことは? などになる。


とくに、食いついて生きたのが他の惑星ウェヌス(金星)やテラ(地球)の話題になる。

私の仕事内容や他の惑星の文化や習慣に興味をもったようである。


今の時代、直ぐに調べられるはずであるが、実際の経験談を聞きたいとのことらしい。


“夜更かししても、トークンが運転するんだから問題ないでしょう” と話し相手に付き合わされることになる。


男女である故、お持ち帰り? も考えられるが、そんな不埒な事はできない。


彼女には御付きのアルプという高性能トークンがいるため、滅多なことをすればお仕置きがまっている。


事実、アルプと銘打ったトークンは、こちらに絡みまくってきたナンパ集団を瞬く間に撃破する程度の能力は持っていた。 意外に怖いかも。


―― それに今の推しはナーミャンだし、案件を片づけて、必ずデートをしてもらうんだ。

タツマの頭の優先順位は、そんな感じになっている。


そして現在、既にメレア街道に入って2日目になる。


これから数日かけてメレア街道を進み、途中の小さな衛星コミュニティで燃料補給や宿泊をしながらキンメリア大陸に向かう。


これを一人で、ましてや土地勘が無くては到底実施は不可能だ。


トークンが運転するカーゴに揺られている。

議員が準備したのか、シートの座り心地や乗り心地は、最高にいい。


これなら長時間の乗車でも腰も痛くならないだろう。

運転席は3人仕様だがゆったりしている。


ラジオからは、音楽が流れている

マッド・キャミャエルは、タブレットで何かを読んでいる。


――酔わないのか?


音楽を聴いているだけでも、口寂しいためタツマが、何気なくトークンのアルプに話しかける。

「この辺りの車両燃料は、燃料電池が主流なのかい? 」


『ええ。 静かでしょう? モーター駆動ですからね』

「今まではエリスやタニアでは、あまり見かけない駆動機構だと思って。 レドックス燃料なんか田舎に普及しているのかい? 」


『そうですね。液体電池協議会により普及を図っている感じですね。もっともタニア王国からの化石に燃料に対応してのものです。 特にこのサバエア大陸やキンメリア大陸の大半は、タニアに酷い目にあっていますので、安全保障も兼ねてレドックス燃料に変えたのです』


エネルギー政策は、国際政治の牽制案件になるのは、惑星が変わっても同じか。

途中のコミュニティで宿泊や燃料を入れて進んでいる。


一日の大半を車両に揺られている。

宇宙と違って外の形式が移り変わっていくのが新鮮である。 


―― 今日は、曇っているというがガスっている


外の景色を眺めながら、ナーミャンの意図に対しての考えをまとめようと思っているのだが、タツマは思考を放棄しかけている。


――なんかー面倒になって来た。 


道路は舗装されているが、所々に陥没や割れがある。

長距離の道路だけあって補修するのも金がかかるのだろう。


無線放送からは軽快な音楽が流れている。


「番組変えるね」

マッド・キャミャエルが、こちらの返事を聞く前にチャンネルを切り替える。


軽快な音楽の後にお昼の報道が流れている。

≪メレア共同ネットワーク。 お昼の報道です。 最初です。 サバエアの国家群が、トロイ島周辺での合同軍事演習や演習を実施しました。


サバエア大陸のエリスとキンメリア大陸のテッサリア間の2カ国大戦で両国の関係系は冷え切ったままであり、大陸中央の島。トロイ島の実効支配を強めるエリスにより、今回の行動は、テッサリの態度をより硬化させるものと懸念されております≫


「……」


≪続いてです。 キンメリア大陸のイスペリアで昨日、イスペリアとタニア連合との協議が、行われました。 食料の自由化と港の自由航行権をキンメリア大陸内で確保ししているタニアですが、ヘラス地中海の内海にも貿易拡大の狙いが有るものとされています。 これに対して大陸内のタニア連合のプレゼンスの高まりを危惧し、テッサリアの執政官より不満が表明されています≫


――惑星が違えど、起きていることはあまり変わらないな


「こんなのは、どうでもいいんだけど! 」


―― 商人にとっては、大切なんだけど。 卸した国が吹き飛んだら売掛金も吹き飛んじゃうし。


≪メレア地域内の報道です。 メレア地区の秋季の味覚メレアソーリーの季節になりました。 多くの漁港では、メレアソーリーの水揚げで市場が活気づいております。 メレア地域の――≫


「メレアソーリーかー ヘルシーでいいわよね。 魚の油は、太らないし」

マッド・キャミャエルが、独り言のように、ラジオに呼応する。


「メレアソーリーってなに? 」

タツマが口を開く。


『タツマ様は、メレアソーリーはご存じない? 』

「ご存じないです」


端末に画像とメッセージが届く。

『そのような食用の魚ですね。 この時期に取れる魚ですかね。 油が豊富に乗っている魚ですね』


アルプが説明する。

―― サンマか?


タツマの子供時代の記憶を遡り出て来る魚の名前になる。

「へーこれが美味と」


「そうよー。 肉より魚の方がヘルシーだしねー」

マッド・キャミャエルが、タブレットに目を落しながら回答してくる。


「この辺りは、来たことがないから、食事事情もあんまりだな」

『ほぅ。 では、マールス(火星)では、どんなところに訪れていたのでしょうか? 』


「そうだねー。 エリス、アルゴス、バポニス、ノクティスラビリントス辺りが多いかな」

マールスの代表的な都市国家になる。

※地球でいうところのニューヨーク・パリ・ロンドン・東京のような場所になります。


『なるほど。 気触れていますね』

―― ちょっと。 このトークン。 口悪くない!? 仕事での来訪だから!


ラジオからは、天気の情報が流れて来る。

≪続いてメレア地域の天気になります。全地域にまたがり、昼間は晴れの日が続くでしょう。一方で夜間は冷え込みに注意してください。これにより、昼夜の寒暖差による体調管理に気を付けてお過ごしください。就寝の際は温かい寝具での対応が必要となります。 各地の天気です。 メレア東部――≫


「夜は温かくしないとかー。 冬物持ってきてよかった」

マッド・キャミャエルが、呟く。


≪また、この時期は、昼夜の寒暖差が大きい為、メレア街道走行のドライバーの方々は、濃霧注意報に警戒し、安全運転を心がけて下さい。以上、お昼の報道でした≫

軽快な音楽が鳴り、何かのCMが始まっている。


―― 晴れと言いつつ、ガスっているけどねー。 ってか曇りじゃない? それにしても濃霧注意報か。 確かに濃そうだね


「アルプさん。 このメレア共同ネットワークとは何でしょうか? 」


『メレア地域にも複数の都市国家や衛星国家が有るのですが、通信インフラを整備するのは、コストが掛かるので、共同運用での放送所ですね』


「仲悪くなったりしないの? 」


『あるでしょうね。 しかし、南部地区はそれほど裕福でないので、互助性が強いのでそれほどの問題にならないのです』


回答を終えたアルプに、マッド・キャミャエルから質問が飛ぶ。


「アルプー。 メレアまでどのくらいで到着するの?」

『日が沈むのは確実です。 夜ですね』


かなりキンメリアには、着実に近づいているようだ。


しかし、何なんだろう? この状況。


あの合流の後、マッド・キャミャエルに “さあ、さあ”と急かされて、スマイル号(カーゴ車)に乗り、アルプがハンドルを握り出発した。宿泊施設でも私の事ばかり聞き出して、


説明をお願いしても、“まだ君は興奮しているから少し穏やかになってからね” の繰り返しで

一切説明がないまま、数日が過ぎてしまっている。


「あのー。 キャミャエルさん? 」

「なに? 」


「そろそろ我々は、何をしに。どこに向かっているのか教えてもらってもいいでしょうか? 」

「知りたいのですね」


ニヤニヤしながら聞いてくる。


「ふふふ。 私は、あなたより年上です。 お姉さんなのです。 なので、マッド・キャミャエル ではなく、キャミャエルさん と心から敬いましょう。 そうすれば教えます」


くっ。 面倒くさい。

「面倒くさいとか思っているのですね。 それでは、ダメです」


マールス(火星)人特有の読心術か――面倒くささに輪をかけてくるか。


「わかりました、降参です。 しかし、情報共有は必要かと」


「まぁ、だいぶ落ち着いたようなので教えますか。 私たちは、これからメレア街道を通ってキンメリア大陸のプロメンテに向かっています」


「プロメンテ? どんな場所? 」

「農業地域でキンメリアの食糧庫とも呼ばれて場所。肥沃な大地と快適な気候で――」


「なぜそんな場所に? 」


「あなた親父さんからの要望よ。 詳細は、現地に諜報員がいるから聞いて欲しいって。 私も詳細を聞いていないだよねー」


そんな、片田舎っぽいところで何をさせる気なのか?

詳細は最後まで不明か――途中で放り投げるのを阻止するためか?

あの親父。 次会ったらとっちめてやる。


いずれにせよ。行くしかない様だ――スマイル号(カーゴ車)は海沿いを走り続ける。


地中海の海岸沿いの道はそれなりに気持ちいい。今は秋季であるが、ヘラス地中海は、温暖な海のため、海周辺汚の気温がそこまで低くならない。 また、その気候から海産物が豊かである。


道の陸側は急斜面になっている。


この急斜面の向こうにメレア山脈があるようだが、ここからでは見えない。高い山々でかなりの標高がある。


そしてメレア山脈のより南極の冷たい空が、シャットアウトされるためこの辺りは、マールス(火星)の中では、それなりに温かい。


海沿いのため湿度もそれなりに高く、道路が湿っている。

空に雲がないところを見ると霧か何か出ていたのだろうか。


先ほどの濃霧注意報と言っていたが、その影響か?

道路わきの斜面は、青々としている。この地域周辺があるていど肥沃な土地なのだろう。


しばらくすると、樹木帯に入る。木々により日が欠けるとそれになりに寒くなるため、

窓を閉め引き続きボケーと外を見ている。


こんなに何も考えず、何もしない時間なんて過去にあっただろうか?

これはこれで、よかったのかもしれない。 命の洗濯だっけ? そんなもいいかなー


そんな思いに耽っていた。

とりあえず、片田舎についたら、適当に対応して後は、親父達に丸投げすれば、問題ないだろう。


突然銃声が響く。

何事!!


「そこの車両、止まれ!! 」

厳つい男3人とトークン5体が道の真ん中に立っている。


そこから10秒程度だろうか大型車両が脇の森から飛び出して完全に道を封鎖してしまった。中からさらに1人でてくる。


『マスターどうしますか? 』

「どうしますかねー? 」


なぜこの状態で落ち着いている!

くそっ、今は完全に丸腰の状態だ。 スーツも銃もない。


「10数える前に出てこい。 でなければ、発砲する! 」


『とりあえず、出ますか? いけますよ? 』

「おお。いいねー」


はぁ?

「ちょっと待て!! 私もだけど、君たちも丸腰だろ? 今出たら はちのす だ! 」

タツマはかなり焦っている。


しかし、キャミャエルグループは、何故か余裕のようだ。

「そうはならいないと思うけど。さっさっ早く出ましょう? 」


無理やり降ろされてしまった。

アイツら盗賊だぞ!


「へっへっへ、聞き分けがいいようで何よりだ。 なんだ?美人づれのドライブとは、ごきげんじゃねーか。 あんちゃん? 」


「お前さんには悪いが、女と積み荷は、俺達が頂く。 まぁ運が悪かったと思って諦めるんだな」


「おお!! 久々の美人だぜ!! 今日はついている」


各々が、好きなことを言っている。


しかし、かなりまずい。 丸腰で飛び道具には流石に勝てない。加えてこちらは、攻撃手段がない。 タツマは、防刃性のアンダ―ウェアを着込んでいるのみ。


とりあえず、こちらもトークンを盾にして マッド・キャミャエルを逃がしつつコンテナ内の火器を入手するかないか。


「へー。 あなた達トークン持っているんだ? マールス(火星)人としては珍しいわね? 」


盗賊のトークン達は、銃で武装しており、トークンを前面に出し、盗賊団は後ろ側にいる。

トークン達を盾にしている形だ。


「まぁな。 ここら辺じゃトークンに嫌悪感を持つ住人もいない。 こんな便利な道具使わない手はないしな。 これも商人を襲って、手に入れたん奴で、高価な小間使い人形って感じだからな。 おかげで襲撃の成功率は急上昇よ」


「いいわね――とりあえず、それ頂戴? 」

―― 何言ってんの! 挑発にもほどがあるでしょう。


「いいぜ!! 嬢ちゃんが俺たちの女になればな! 」

下卑た笑いが周囲に響くが、直ぐに笑いが途絶え、盗賊がこちらを睨んでくる。


「でもまぁ。その前に男には消えてもらう」


いきなりアサルトライフルが発光する。 それを合図に行動に出ようした瞬間、タツマの体が宙に舞い上がる。


―― 何事!!


次の瞬間カーゴの上にいる。脇には、マッド・キャミャエルが私をつかんでいる。

私は吊られた状態のまま、状況が飲み込めない。


「くっくっくっ。 私に歯向かいましたね。 あなた達は終わりです」


盗賊団もとっさの出来事に、状況を飲み込めていない。しかし

“ほぅ嬢ちゃん。 人一人片手で持ち上げて車両のルーフに乗るなんざ。 たした運動能力だ! ”


全員銃口をこちらに向ける。

“お前ら! 奴らを仕留めろ! ”


奴らはヤル気満々だ! 本気の窮地だ。 動きも制限されている状態にある。


瞬間銃声が響き目を瞑ってしまったタツマであるが、次に聞こえたのは盗賊側からのなんとも言えない悲鳴であった。 


タツマが目を開くと盗賊団が崩れ落ちている。


盗賊のトークンが、一斉に盗賊団の足を打ち抜いたのだ。

マッド・キャミャエルさんの顔が、悪い顔になる。


「利き腕もやっちゃいなさい! 」

その指示の下、盗賊のトークンが銃口を盗賊側に向け、銃声とともに盗賊団の腕も打ち抜かれる。


こだまする悲鳴。

タツマ自身何が起きているか不明であった。


「拘束しなさい! 」


盗賊団のトークン達が、暴れる彼を拘束し終え、キャミャエルさんもルーフから降り、そして私を降ろしゆっくりと彼らの前に立つ。


「我々は、義賊 ※“白翼の騎士団”! 我々に手を出した以上、制裁を受けてもらいます! 」

※かつてマールス(火星)の機器を救った戦闘集団の名前


助けてもらったのはありがたい。しかし、何を言っているの? この人。“白翼の騎士団”?


盗賊団は痛みにもがいており、彼女の言葉を理解しているが不明だが、彼女は続ける。

「さて、あんた達を治安隊に渡す前に、聞きたいことがあるの? 」


彼女が拘束された盗賊に顔を近づける。

―― この科学者何を聞くんだ? 


「あなた達のお宝はどこですか? 罪なき人々から奪ったものはどこですか? 」

―― こいつ。 盗賊からの強盗する気か? 


彼らは口を割りそうにない。

「別にいいんですよ。 ただし、あなた達が明日を迎えられるかどうかは、こちらの気持ち次第ということを理解していますか? 」


―― うわー。 悪い顔ですね。


「あなた達を消したところで、我々は罪に問われないんです。 生かしているのは、こちらの気まぐれと思ってくださいね」


彼女が手を挙げると一斉にトークンが盗賊団に銃を向ける。

「言う……言うから……」


「素直な人は素敵です。 でっ、どこですか? 」

聞き出したエリアをマップに示す。


「じゃトークン二体で目的に向かわせましょう。 我々は、引き続きプロメンテに向かいますね? 」


盗賊団が焦りだした。そこに一緒に連れて行かれる気でいたようだ。

もしかしたら罠でもあるのだろうか?


「そうそう、もしトークンが出向いて罠やもぬけの殻であった場合、自然に帰ってもらうから」

そう言って彼女は、にっこり笑う。


―― こっわ


「最後の確認です。お宝はどこですか? 」

盗賊団は観念したように新しいポイント示す。プロメンテへの途中である。


―― えげつない


道をふさいでいる車両をトークンの運転によりどかし、トークンの一体と共に荷台に彼らを詰める。トークンの役割は、傷の応急手当てになる。


“良い旅を”といってい扉をしめる彼女は嬉しそうだ。

盗賊の追剥って。 彼女――科学者だよね? 


トラックに何事もなかったように乗り込み、運転を開始するアルプとキャミャエルさん。

今度はジャズか? ラジオからしっとりした音楽が聞こえてくる。


「アルプ―、メレアの到着時間はどんな感じ? 」

『今回の戦闘と戦利品の回収があるため、真夜中になります』


「だよねー。 夕食どうしよっか? 」

『食事は保存食でお願いします』


「そっかー。 仕方ないねー」

『はい。仕方ありません』


彼女の戦闘能力もアルプとかいうトークンの戦闘能力が想像を逸している。

「あのーキャミャエルさん? さっきはありがとうございました」


「いえいえ。 どういたしましてー」

まずは助けて貰った礼から入る。


「あの跳躍力は? 」

「ひみつ」


「盗賊のトークンの暴走は? 」

「ひみつです」


―― なんなんだ。この人は。

「興味があるのですね? 」


ニヤニヤしながら聞いてくる。

くっ、またこの展開か。


「私たちは、これから結構な時間を共にします。 なので、キャミャエルさんではなく、サナエさんかサナエお姉ちゃんと呼んでください」


「えー」

「さぁ。サナエお姉ちゃんです!! 」


「分かりました。 サナエさん」

「サナエお姉ちゃんは、ダメですか? 」


「20歳を過ぎた成人男性が、お姉ちゃんと呼ぶのはきついです」

「仕方ないですね。では私はタツマと呼びますのでいいですね」


「どーぞ」


「じゃぁ。さっきの秘密を教えます。大したことじゃないんですけどね」

十分凄いことです。


「まず先ほどのトークンの暴走は、盗賊のトークンが、私のアルプの配下に入ったことによるものよ。うちのアルプは、ハイブリッドの高性能AIだから、無機AIを配下におけるの」


「いやいやいや。ハッキングでしょ? そんなに簡単にできるものなの? 」


「ふっふーん。スペックが段違いなのよ。 それに、出始めの技術故の優位性ってやつね。といっても研究の成果が実戦で利用できるとは、感動ものね。どう? 凄いでしょう! 」


「……凄いです」


「まーねー。 といってもさっきのもそれなりに弱点もあるんだけど――教えない」

敵対する気はないけどね。


「で、強力な腕力と脚力に関しては、これ」

着ている上着を脱ぐと、体系に沿ったぴっちりの黒い潜水服のようなスーツが見える。


「人工筋増力駆動系のスーツよ。主に作業用に用いられるパワードスーツの軽量型。厳つくなくてスマートだけど、対弾性に問題があるのよね。


まぁ主に作業用だけどね。ウェヌス(金星)のサイバネティクス技術とマールス(火星)のAI技術を制御系に応用したものよ。 また開発中で修正しながらの運用だけど」


―― 天才すげーな。


「実際この装備がなくても、このカーゴは、硬質化装甲で武装も付いているから、奴らを薙ぎ払うのは容易だったんだけどね」


―― こいつ。人が恐怖していたのを楽しんでいたな。


目を細めてサナエさんを見る。

「細かいことは良いじゃない。 まずはお宝よ! 」


タツマの視線に気づいたのか、感情を汲み取ったのか、いそいそと話題を変える。


カーゴはそのまま進む。暫くすると、道が二股に分かれて場所があった。 中央は一見するとただの道の緑地帯のような場所である。


周囲は樹木で囲まれているため、気にせず通り過ぎてしまう人が多いだろうが、調査すると地面に入口があり地中に基地があるようだ。


―― モグラかよ

先方にトークンで偵察を実施し、とりあえず、モノは見つかった。


『現金と武器ですね』


先発隊のアルプからの報告が、上がって来る。

武装をこちらのカーゴ車両に運び込む。


トークン5体と武装・現金・カーゴ車両が戦利品となった。特にトークン5体は心強い。


トークンが基地内を漁っている間、タツマはコンバットスーツによる武装化を実施していた。

通称、棺桶。


現行のコンバットスーツは、密着性や強固性をよくするため棺桶に似た入れ物に入っている。入ると自動で蓋が締まり、頭だけ出した状態で各パーツを装着してくれる寸法だ。


まだまだ手軽に装着できない。

装備までに180~300カウント(3~5分)は掛かってしまう。 ヒーローもののように10カウント程度でカッコよく返信ができるのは、まだ先のことだろう。

―― それよりもこの棺桶場所取るんだよな


多少の不満を漏らしながらも装備を整え、道中合羽を上から羽織り、カーゴの外に出る。


「おー。 アルバの時と同じ格好だね」

サナエさんの第一声になる。


「まぁね。 マールス(火星)の治安を忘れていたよ。あんな経験二度とごめんだ」

腕を動かし可動域の状態を確かめる。


「サナエさん、アルプとの情報リンクを頼む」

「了解。アルプお願い」


『了解しました。 ……完了です。 同期を確認してください』


バイザーメットを被り、映像の同期を確認する。

「鮮明だ。問題なし。 アルプほかには何ができる」


『赤外線サーチ・作戦進行状況・衛星との接続といったところです』

画面が出てくると灰色や宇宙からの映像に切り替わっていく。


『ターゲットに目標をさだめることで、コンバットスーツの動きを連動させることも可能です』


カービン銃を構えて、照準を樹林帯の木に合わせてみる。自然と腕や腰が動く。

なるほど、これは便利だ。


『調子はどうですか。タツマ』

「良好だ。これで交戦ができる」


メット脱ぐ。日が暮れているため、冷えた空気が、顔に触れている。

戦利品をすべて奪取して、トラックに運び込む。


「取るもの取ったし、ずらかるぞ!! 」

サナエさんが、意気揚々にトークンに伝えている。


――それは悪党側のセリフですよ。


カーゴに乗り込み、再び一行は走り出す。

『マスター。 タツマ。 一休みしてはいかがでしょうか。何かあれば起こしますので』


アルプからの提案だ、ここはご厚意を受けますか。

「じゃぁ頼むね」


一時の安息の時間が流れる。 真夜中につくらしいのでどんな場所だろうか。

やっかいなことに巻き込まれた感もあるが、ワクワクする気持ちありつつ目を閉じる。


                 ・

                 ・

                 ・


どのくらい眠りに落ちただろう。

光を感じる。 朝だろうか? 日の光が眩しい――


――着いたのか? いやトラックは止まっている。 ゲートの前で停車中?

タツマの思考とは裏腹にサナエさんは寝ている。 運転手であるアルプは前を見ている。


「アルプ。 どうしたの? 」


『キンメリア大陸の入口であるメレア地区に入りました。検問です。 通過時間が限られているので夜間の通行はできないとのことです』


「検問か……武器はヤバいか? 」


『商人との立場ですから。 それに盗賊から奪ったことにすればよいと思います。 あとは、タツマの話術での対応をお願いします』


何言っちゃっているの? このトークンは。


時間になると軍人のような人が、休憩小屋から3人ほど出てきた。

やる気のない検問官だ。


「おい! お前たちどこにいく! 」

早速、上から目線でこちらを揺さぶりにくる。


―― いいだろ! 惑星間貿易商の交渉術を見せてやる! 

タツマはカーゴから降りて、検問官の方へ進む。


「朝早くお疲れ様です。プロメンテの方に少し。ところで、昨晩、盗賊を撃退しましたので、引き渡せればと思いまして」


まずは、下手に出る。


「おお! 盗賊か。 それはご苦労」

「私、惑星間貿易商のヒルベルト商会と申します。 この度、この地方に新しいビジネスを求めやってきました」


トラックを降りて、証明書とデータを見せる。


「なるほど……貴様……武装しているな? 」

検問官が、こちらの装備を品定めするかのように見て来る。


「はい。 しかし、非武装はご容赦を。どうしても今回のような盗賊の件が多いもので。 最近は物騒ですからね? 軍人さんもそう思われませんか? 」


タツマからの振りに検問管も思う所があるようだ。

「ああ――まぁ確かに。 それで盗賊は? 」


「はい。 こちらのカーゴです」


扉を開けると負傷した盗賊がいる。

「負傷しているな、銃撃戦か……」


「こっちも死に物狂いでしてね。 武装していなかったら、と思うと」

タツマの演技が光る。


残りの2人の兵士が、トラックの荷台に入りぐったりした盗賊を確認する。

“おい! 連れて行け”


リーダーらしき検問管が指示すると、盗賊に手かせを掛けて引き連れていく。

応急処置はしてあるため、ぐったいはしているが命に別状はないだろう。


検問管は、再びタツマに視線を向ける。

「惑星間貿易商ね。 地上で商売か? 」

「ええ。 商売の手を広げようと思いまして」


「どこで商売してもいいが、あのプロメンテね――なかなか難しいぞ」

「大穀倉地帯と聞きまして、チャンスでもないでしょうかね」


「まぁ行けば分かる。因みに通したいところだが、あいにく管理者がいなくてなー」

はいはい。ワイロですね。


「そうですか――しかし、兵隊さんもお勤めも大変でしょう? 朝も冷えますので、これで温かいものでも」

先ほど盗賊から頂いた資金の中から地域紙幣をある程度(30万円)見繕って、それとなく渡す。


「うむ……。 まー、商人だしいいだろ。 おい! お前達、ゲートを開けろ! 」


ゲートが開き通行可能になった。

―― まったく。 

と思いつつ、やる気のない検問だからこそ金で抜けられる検問はザルも同然で助かる。

車両に戻るとサナエさん偽悪的な笑顔を向けて来る。


「流石、惑星間貿易商。口はうまいね~それに汚い」

思う所もあるが、彼女なしには、この妙な案件は、片付かない。 


アルプが車両を出し、ゲートを通過すころには、朝日が眩しく光る。


―― この朝日のように、この先が輝かしいものでありますように

僅かな祈りを掲げながら、スマイル号は目的地に進む。


この世界のマールス(火星)の地図を掲載してみました。マールス(火星)は、基本は都市国家(州、県~市)による運営が多く領土面積も人もそこそこになる。


これもかつてのノーマンズライジング呼ばれるAIの暴走に起因した大規模戦闘による環境破壊によるとこととが大きく、巨大国家を維持できない状況下での人が寄り添い街を自治を形成した結果です。


そして、ここ以外にも多数の都市国家が存在している感じです。


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