東方融和政策に向けて
周辺地域との融和策を行うチームは、タツマ、アルプ、アルマがメンバーとなった。
―― とはいったものの。 色々難題が多そうだよなー。
タツマも勢いで言ったものの、冷静になると何気に億劫に感じてきている。
といっても、宣言した手前、事業を開始している。
こちらには、まだ統一言語が怪しい地域もあるため通訳が必要とのことで、アッカ補佐がこちら側に入ってもらっている。
現在は、アッカの資材置き場を、事務所として利用されてもらい、会議中。
「取り敢えず、昔の図面やら資料を引っ張りだしてきました」
アルマが、資料を机の上に広げていく。
「アルプ。 資料を確認しておいて」
「了解です」
アルプが資料を見始めている。 その脇でタツマが会話を始めている。
「少し考えたんだけど、電力確保と送信アンテナの建設が、結構ネックになっていると思う」
その疑問を見越したかのように、アルマから一枚の写真を出してくる。 かなり古い写真であるが、当時のラジオ送信局が映っている。
「当時の写真がありましたが、鋼管柱のような柱に支線を渡している構造物を建てないといけないらしいです。ここから電波を送信するようです」
素人目に見てもかなり大掛かりな工事が発生しそうである。
「かなり巨大だな……どう作るんだこれ? 」
タツマもマールスの移動中で外側から見たことはあるが、“デカいなー”の感想で終わってしまっている。
―― まさか、こいつを作ろうとはな……
『慣れていれば基礎を含めてテラ時間で1年もあれば作れそうですね』
アルプが回答してくる。
「ここにそんな技術者いないだろう」
タツマが呆れながら呟く。
「まぁ“ヴァレダ工業コミュニティ”か“ローシェン自治区”に当たりに行けば、いるでしょうが、力は貸してくれないでしょう」
アルマが、回答していく。
「そんなに仲が悪いの? 」
「相手を弱体化させての安定を得ている地域です。他人が力を持つことは嫌がりますし、警戒もします」
「じゃぁ。 ラジオ局建設にも妨害が? 」
「ラジオ局の為だけに部隊を送られることも、イザコザが起きることもないでしょうけど、自ら敵に塩を送る行為はしないでしょうね」
―― 何だか色々世知辛いな。
「それでよく交易ができているね? 」
「商人を介して行っていますので、先方のからの生産品も購入できるので逆もしかりなんです。 仲介者なしに経済が成り立たない仕組みになっているんです」
「仲介者ねー。 因みにどこ?」
「“クピドー衛星ギルド”ですね。 我々のような国家でないコミュニティでも中立で動いてくれているんです」
「 ※1クピドー衛星ギルドかー。 あいつら渋いからなー」
『それが商人では? 』
アルプからの反応がある。
「商売は緩急なのよ。常に急では、嫌がられるだって」
『そうなのですか? 』
「そうなんです」
「それでどうしましょうか? 」
アルマさんが、不安そうに質問してくる
タツマが暫く長考に入る。
「……。 ……。 ……」
即席麵が出来上がる程度の時間の沈黙が、三者間に降りる。
暫くして、何かを思いついたように口が開く。
「……ああ、宛はあるかも」
「どこでしょうか? 」
「島嶼国家群は、どうなの? 」
「島嶼国家ですか? 取引がないですから何とも。 あっても、イズム地域の“ユルト”が精々です」
タツマ達が、最初に降り立った場所である。
「ヘレン諸島の“スネグーラチカ”って知っている? 」
「名前だけなら」
「確かあそこ。ラジオ放送実施している。 船に乗りながら聞いたことあるし。直接取引したことあるし」
タツマも親父とともに惑星間貿易商をしている手前、ウェヌスの地理はそれなりに知っている。
「……」
アルマさんが、少し唖然としている。
「よし行こう」
「……え? 」
「行くんだよ。“スネグーラチカ”」
「どうやって……ですか? 」
「航空機がないなら、船しかないでしょう。 ここから、“タミナ”にいって“ユルト”からの行くんじゃないの? たぶん」
「たぶんって。 まぁ確かにそれしかありませんが……。 行くんですか? 」
「行くんです。 出発の準備して。 明日には出発するから。 アルプ。 それまでに問題点を洗いだして」
『相変わらず荒い使い方ですね』
「信頼していると言って欲しいもんだ」
*
アッカの出立の日……といっても、実質翌日になる。
昨日のうちに副社長に要件は、伝えてある。
副社長からは、“毎度毎度本当に奇妙なことを考えるな” とか言われたが、そんな感想は流し、以前、送信アンテナがあった場所を探しておいての宿題を課しておいた。
同じ場所に立てれれば当時と同じエリアをサービス範囲が出来るはずである。
――1世紀も前の話だけどね
周辺地域平定チームの方も恫喝と言う名の周辺地域への平和活動のための準備をしている。 他のコミュニティからの反抗も考えらるのだが、この地域の有力2大コミュニティ連合であるアッカ・タミナに対抗できるはずもなく、平定は容易と考えているようだ。
*
「準備できた? 」
集まってきた各人にタツマが、確認する。
「とにかく着替えだけですけど……」
アルマさんが回答する。
『資料全てを持っていきます』
「じゃあ出発だ!! 」
ボロイ運搬車を乗り込みアッカを後にする。
いつも通りアルプが運転する。
「トークンが運転するとは凄いですね」
アルマさんが感心している。
「特別製だからね」
『今回は同性だけですから、安心ですね』
アルプが何の気なしに話題を振る。
「私はそんなに信用されていないのかね? 」
タツマが返答する。
『ティルパへの当初の対応を見れば一目ですが』
「素敵な女性とお近づきになれば、みんなあのような態度になります」
「あ……あの」
『どうしましたか? 』
「私。女性です」
車内がいったん静まる。そしてタツマから口を開く。
「アルプ―。本当に次世代AIなの? ポンコツじゃないの? 」
『タツマも見抜けなかったではないですか! 』
―― 聞ける訳ないでしょう!
「その、髪も短いですし、女性らしい体系ではないですが、そのあまり……」
『大丈夫です。何かあれば言ってください。 直ぐに通報しますから』
「どこにですか? 」
『彼の去勢の力を持つ人物です。私はあなたの味方です。でっちあげてもいいですから』
「おい!! ポンコツAI何っているだ!! 」
「だ……大丈夫です。コミュニティのみんなを守るためなら、この身を捧げても構いません」
『決まりです。報告ですね』
「やめましょう? これから先は長いんだから。 平穏に行きましょ」
騒がしい運搬車は、タミナ漁港コミュニティのある東に向かい進んでいく。
*
オイフェ川に到着する、この橋の向こう側が漁港コミュニティ領内になるが、今は緊張なく通れる。
周囲には、木で作られた墓標が建てられている。
「激戦だったんですね」
彼女が、その情景を見ながら呟く
「そうだね」
「でも負けちゃったし」
そんなこと口にしながら、アルマは墓標郡を見ている
タミナとは、まだまだ距離がある。
※1:クピドー衛星ギルド:信用力の低い国家などの信用の保証人として、物流を扱う商人の寄り合い。手数料も取られるが、敵対勢力の顔が見えなくなるので重宝している地域も多い。また 宇宙のウェヌス貿易港 の利権も握っており、場合によってはイシュタル帝国でさえ、彼らの意向を無下に出来ない状況にある。




