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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
14章 東部小競合
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帰郷タミナ 漁港コミュニティ

現在、ウェヌス(金星)におけるタツマ達の安らぎの場所になる。アッカから一日飛ばしてようやく到着する。 その距離もあり、コミュニティ入口に着く頃には、周囲は既に暗くなっている。


現在の門番は、人の代わりにトークンを使っている。


「トークンが門番しているんですか? 」

「ああ。副社長――バルティスが購入したんだ。 門番に人は、もったいないとの判断だ」


といっても、部隊を作れるほどはいない。 この地では整備部品の調達にも時間が掛かるため、長時間の労働に足しして割り当てている感じである。


タツマの姿を見ると門が開く。

ボロボロの運搬車両が、タミナ(漁港コミュニティ)に入っていく。


集落に入れば普通に守衛がチェックのため、タツマ達の車両を止める。 もちろん、警戒されることなく守衛から話かけてくる。


「タツマさん!! お久しぶりです」

「久しぶり。 漁の調子はどうだい? 」


「ボチボチですよー。アッカ(農業コミュニティ)から来た人達も手伝ってくれて、加工品の生産量がいい感じです」


「へー。孤児の方は? 」

タツマとしては、先日の戦いの遺族への対応が気になっている。


「そちらも大丈夫ですよ。 丘の上の孤児院で面倒を見ています。アッカ(農業コミュニティ)の孤児も含めて、もともと様々な地域の孤児を受け入れていますから。 ところで、ケーネスさんらは、どうなんです? 」


「周辺地域の平定に乗り出して、奮闘中といったところだ 」

「まーそうでしょうな」


そんな会話を終え、検問を通過して、街中へと進んでいく。


「部外者なのに、打ち解けられているんですね? 」

アルマが、不思議そうに質問してくる


『タツマの誇るべき能力の一つですね』


とはいえ、ここのトップの参謀であり、一緒に血を流して戦っていれば信頼もされる。 しかし、そんなことを言っても白けるだけである。 ここは素直に感謝をしておく。


「お褒めの言葉ありがとうございます」

タツマが言葉を続ける。


「ここでの宿は、我々が世話になっている場所になる」

アルマに向かって話す。


「構いませんよ」

相手も特に気にしてないようだ。


暗闇の道を進んでいくと、暗闇にあって僅かな光が灯っている建物が見えてくる。 タツマ達が世話になっている教会兼孤児院である。


「……アフタブ教の教会? 」

「さっき会話にあった孤児院だよ」


彼女は、夜闇の中であっても建物を判断する。 それは、教会内の明かりよりも、クピドーからの青白い光、テラ(地球)で言えば月明かりが建物全体を浮かび上がらせている。


クピドー光の中で照らし出される建物は、昼間よりも幻想的に、そしてその演出を一層高めているのは、石灰の白壁が、淡い光をより多く反射しているところが大きい。


「しかし、こんな土地で孤児院ですか? 人身売買でもしているんですか? 」

彼女は怪訝そうな顔で答えてくる。 この土地であれば当然の考え方になる。


「そんな物騒なことはしていないさ。 純粋に善意からの行動だ。 ケーネス親子が経営している」


タツマが回答する。


「嘘でしょう? 意味も儲けもないんじゃないですか? ああ。 労働力確保ですか? 」

――なんなんだよ。その感覚。 といってもこれが、この地域の特徴か……


「純粋に自立してもらうためさ。 ケーネス親子ってそんな悪名高いのかね? 」

「まー彼らの海賊撃破とその後の対応は、中々ですよ」


コミュニティを守るために、副社長たちも色々しているらしい。 綺麗ごとだけでは、この地では、生きて……守っていけないようだ。


「それにアッカでは孤児は、労働力確保って意味で扱っていましたから」

といっても、タツマからすると闇が深そうに感じる。


「ここの園児たちは、労働力ではなく学問に励んでいる。 聞いてもらってもいいさ」

この地の感覚と自身の感覚にずれがある。おそらくここで説明したところで理解は出来ない。タツマは話題を変える。


「どちらにしろ、明日は“スネグーラチカ”行きの詳細を調べる予定だ。 多少時間はある。 自由に行動してくれ。 アルプはどうする? 」


『孤児院で園児の世話をします』

「了解だ」


「私は……明日決めます」

会話をしている間に教会の前に着く。呼び出しを押してゲートを開けてもらう。


車両を止め、裏へと回り、貸されている施設に向かう。 客室は3室あるため十二分である。

「アルマさんは隣だ」


「ここですか? 白い漆喰の壁。素敵ですね。 海側の地域で見たことはあるけど、泊ったことはなかったです」


「それは良かった。 経験が広がることは良いことさ。 また明日ね。 ああ、それと明日の朝食の準備を手伝ってもらうから。 この施設は、宿泊費はいらないけど労働を提供するのが決まりだ。 無料では泊まれないから」


「……分かりました」

彼女の部屋の扉がしまる。


タツマ達も、自身が使っていた部屋に入っていく。

こちらは、アルプと共の部屋になる。


『彼女は信頼できますかね』

「どうだろう? 」


漆喰の壁であるため、中の声は隣に響かない。


『明日は、私も一緒に行きましょうか? 暗殺されては元も子もありませんし。 保育は私がいなくても務まると思うので』


アルプは一人になった時のタツマの心配をしている。アルマは、降伏したとはいえ、アッカの人間。 その地を滅ぼした参謀の首となれば、打ち取る価値は高い。 


もっとも、後先考えなければとの話にはなるが。


「それは大丈夫さ。 私はただの部外者だ。 狙うならケーネス親子、副社長の方だろ」

『そうですが』


クピドーの明かりが室内を照らす。白色の室内のためかなり明るい。


「取り敢えず、明日に備えて休息だ。朝食の準備を手伝わないと寮母さんに怒られるからね。朝食抜きさせられる可能性もあるし」


『しっかり起こすのでご安心を』





--- アルマ の部屋

彼女は部屋の隅で窓から空を見ている。


彼女は思う。

どうして来ちゃったんだろう? 誰かに任せることもできたはずなのに。


といっても、理由は理解している。

アッカ(農業コミュニティ)にいる意味がないと判断したからである。


(おさ)に憧れていた。 彼は(おさ)になる前の副長(ふくおさ)時代は、色々な場所を飛び回っていた。


アッカ(農業コミュニティ)の農業改革を成功させた手腕により、ある程度の自由は許されていたが、それでも彼をよく思わない人もいた。


道楽者だという人もいたが、彼に接すれば、彼から道楽者との感じは、受けなかった。 見識が広く、深い洞察力、アッカ(農業コミュニティ)をあそこまで大きくしたのも納得の能力であった。


憧れていた? いや惚れていたのだろうか。


(いくさ)は、やって欲しくなかった。 死んでほしくなかった。 隷属でも構わない。

彼と共にアッカ(農業コミュニティ)を支えられればそれでよかった。


(ケーネス親子相手では、不利なのは分かっていたはずなのに)


彼は言っていた。

「結局、戦うことがこの地域の宿命だから。 強いものが残る仕方ない摂理さ」


出陣時の彼の最後の言葉になる。 どうにもならないような困った顔で言っていたのを覚えている。 訃報を聞いた時は、呆然とするしかなかった。


そして、奴らが来た。新型らしきコンバットスーツの一団は、素人目にもその強さが分かる。どうする気だろうと見ていたが、何にもしなかった。


略奪・殺戮・強姦などもなく、ただ “商業圏を作りたい”と今までにない言葉を放った。

もちろん(おさ)が、打ち取られている以上従うしかない。


女性だけの生活が苦しいなら、タミナ(漁港コミュニティ)に来いとの提案もしてきた。 懐柔や温情がないこの地での意外な提案に少し戸惑った感覚も覚えた。 とはいえ、甘言による欺瞞(ぎまん)行動の可能性も考えられた。


しかし、彼ら、いや眼帯の人の目的は、懐柔や温情ではなかった。 明確な方針があった。

「悪いが、人的資源を無駄にする気はない、生産性向上に努めてもらう」


(おさ)もよく言っていた。戦争は時間と労力の無駄でしかな

い。平定して安定させることが地域の発展につながると。(おさ)と同じこと言うこの人に興味を持った。


それにアッカ(農業コミュニティ)にいること(おさ)との思い出が、呼び起こされる。それが辛い。


(おさ)が居ない世界であれば、どこでも同じである。であるならば、遠くに行ってみよう。


それに(おさ)と同じこと言う人の後に付いていけば (おさ)の気持ちも少しはわかるかもしれない。


「私これからどうなっちゃうんだろう」

アルマは、そんな感情を抱え眠りにつく。




--- 朝

西日が眩しい。 アルマが、朝の光で目が覚める。

「う……う」


ドアがノックされる。


『朝ですよ。起きてください。朝食の準備の仕事が待っています。手伝わないと食事抜きですよ』


アルプが、アルマの部屋のドアをノックして起こしにかかっている。

身支度を整え部屋の外にでる。


『おはようございます。 ではこちらへ』


台所に行くと、タツマと寮母さんが(せわ)しくなく動いている。


「おきたー? アルマさん。こっちは大丈夫だから。ちび達を起こしてきて。それと掃除もお願い。アルプも説明とフォローをしてやって」


「寮母さーん。野菜切り終わりましたよー」

タツマが、作業の完了の報告をする。


「そこの鍋に入れて。火加減を少し弱めに。でタツマさん次は、ミルクの調達をお願い」


「了解でーす」

タツマが台所を出ていった。


あの部隊の参謀と聞いていた眼帯の人間が、寮母と呼ばれる中年女性にこき使われている。

「ボケっと突っ立てないで、やっておくれ!! 」

檄が飛んでくる。


「は……はいっ! 」

『でわ、こちらです』


アルプに連れられて大広間に到着する。 集団で小さい子供たちが寝ている。

どう起こすのだろう?


アルプが手を叩き始める。

『みなさーん。 朝です。 布団をたたんで着替えてくださーい』

園児たちがもぞもぞと起き上がって、布団をたたみ始める。


「……凄い」

しかし、彼女前に次々と布団が集まってくる。


えっ……何これ? 


『これらを外に干すのですよ? お願いしますね。 私は内部の空間の掃除と空気の入れ変えをしますので』


突如、泣き声が聞こえる。


“あーお漏らしているー”

突如園児たちが騒ぎ出す。


『はいはい。皆さん。寮母さんの台所に行って手伝いをしてください。食事抜きになってしまいますよー』


園児たちは“はーい”と言いながら出ていく。

おねしょの園児は、アルプが世話をする。


『着ているものを洗いますので安心を』

園児から衣類を脱がし、体を拭く。


『アルマさんこれを洗濯場にもっていってください。 その後、この布団干しをお願いします。私は、彼女の世話と着替えさせた後、洗濯を開始します』


汚れ衣類とタオルを渡しながら言ってくる。


まずは動く。洗濯物を洗い場にだし、布団を干していく。 量が多いため、かなりの労働だ。 アルプが洗い場の業務が終わったのか、室内の掃除をしている。


敷布団と掛け布団を干し終えた。 ここの孤児院は床に寝ているのか。 スペースの有効利用なのかもしれない。


確かに履物を脱ぐスペースがあったのはこのためか。

『食事の時間ですよ。お急ぎください』


アルプからの指摘で食堂に向かう。既に全員が席についていた。慌てて開いている席に着く。

教会らしくお祈りが始まる。


アルプの席はあるが、食事は無いようだ。

祈りの詔が終わると、皆が食事を開始する。


野菜のクリーム煮とブレッドになる。 味は――かなり美味しい。 海に近いためか、味がしっかりしている。 うちのは味薄かったなーと思いながら食している。


そのあと食器の片づけ、洗濯物干し等、忙しく動き回ると日が高くなってくる。


「つ……疲れた」

『お疲れ様です』


タツマがこちらに向かってくる。

「どうだった。 初日は? 」


「凄かったとしか言えない。あなた達何者なの? 」


『借金会社の経営者です』

「借金会社の経営者です」


タツマとアルプが同時に回答する。


「……アルプ―」

『それ以外のセリフをお願いします』


小さく咳払いをして、タツマが質問する。

「これから港に行って、“スネグーラチカ”への渡航方法を確認してくるけど、アルマさんはどうする? 」


「行きます。 運転手をやりますから、港に連れて行ってください」

「了解だ。車両で待っていて。鍵を取ってくる」


タツマは自室に向かう。


『大丈夫でしょうか? 』

アルプが心配そうに聞いて来る。


「たぶんな。 あれが演技とは思えない。 問題ないだろう」


アルプが護身用のハンドガンを渡してくる。

『お持ちください。 9mm弾ですが、生身の相手であれば問題ないでしょう』

「必要ないんじゃない? 」


『もし、タツマに何かがあったら、私がマスターに怒られてしまいます』

「わかったよ。 お守りは必要だからな」


自室内のカギと取り、運搬車両へと向かう。孤児院の建物を出ると少し離れたところに運搬車が止まっている。 脇にアルマさんが、立って待っている。


駐車場までアルプが着いてくる。


『お気をつけて』

「港にいくだけさ。 心配するな」



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