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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
14章 東部小競合
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アッカ農業コミュニティ

農業地域たるアッカ(農業コミュニティ)。 南部地域にあって土地が肥沃であり穀物生産が高い地域になる。 周辺のコミュニティに農作物を(おろ)して生活の糧を得ている。


もちろん、そんな肥沃な土地を周囲の地域も狙っていたが、東方のタミナ(漁港コミュニティ)の動向もあり手が出せないでいた。


つまり、この地域では、アッカ(農業コミュニティ)タミナ(漁港コミュニティ)は有力なコミュニティになっていた。


もし、安易にアッカ(農業コミュニティ)に手を出したらその戦力で刈り取られるか、仮にアッカ(農業コミュニティ)を刈り取ったとしても、タミナ(漁港コミュニティ)により最終的に全てもっていかれる。そんな構図と奇妙な均衡状態が続いていた。


しかし、今回の戦でタミナ(漁港コミュニティ)が圧倒的な勝利でアッカ(農業コミュニティ)を屈服させ、農地も荒らさずにその支配に吸収することになった。


アフロディア大陸の東方の小さな動きは、周辺国への意識の変化と地域全体が、徐々に動き出す機運となる。 とは言えアッカ(農業コミュニティ)タミナ(漁港コミュニティ)の連合は、まだまだ東方の弱小国には変わりがない。


そして、アッカ(農業コミュニティ)(おさ)は、戦で死亡したことにより、新長(しんおさ)としてバスティス・ケーネス(副社長)を据え置いた。


戦争孤児や働き手の喪失(夫の死)した家庭に関しては、タミナ(漁港コミュニティ)での引き受けなど、人材や物流の交流が始まる。


戦争から1ヵ月が経過した。 おそらく大国から見たら小競り合いと笑うかもしれない。 しかし、人が亡くなっている以上、我々にとってみれば人生を変える重大な事件であった。


そして、その人生を変えるイベントの傷跡は未だ癒えていないが、それなりの日常は、取り戻している。 帰ってこない人への未練もありつつも、日は昇り、時は前に進み、世界は動く。


                    *


ここは、アッカの役所のという名の集会所にいるタツマ一行。


役所と言ってもアッカ(農業コミュニティ)には、公務員を雇えるほどの資金的余裕はないので、農業と兼業して住民管理や収穫高を算出している。 そもそも官僚機構自体がない状況である。


「それで、前の(おさ)の懸念はこいつか」

タツマ達が、一枚の写真を見つめている。


「はい。問題は、エイストラ地方(アフロディア西方地域)だけで終わりにならないと」

(おさ)の脇にいたアッカの補佐が、情報を公開する。


アッカ(農業コミュニティ)側からは、アッカの副長とその補佐が、タツマ達の相手をしている。


副長は、男性でウェヌス(金星)人らしい大柄の人間になる。 見た感じバルティスと同じくらいだろうか。 


一方、その補佐官は、ウェヌス(金星)人らしくない小柄な人物になる。 中性的であり、男性女性の判断ができない。 


あまりじろじろ見ることもできないが、外観からの判断するのも厳しい。 確かに微妙に気になるところだが、性別を確認するのは、セクシャルハラスメントになるため気が引ける。


ともあれ、こうしてアッカ(農業コミュニティ)の2人と膝を突き合わせているのも、略奪も襲撃も行なわず、かつ相手も平和的な開城が実現したことによるところが大きい。


写真には2人の人間が、公園を歩きながら話している様子が撮られている。 恐らく両方とも男性であり、両者とも体付きがしっかりしている。


―― 軍人か?


そして裏面に

ライムドタ(エイストラ第二都市)が、大規模な復讐を画策している >

と書かれている。


「ライムドタ? 」

「ああ、エイストラ地方の強国だ。 といってもアリステリア自治国家に頭を押さえられているがね」


「彼らは? 」

タツマが、写真の2人を指さす。


「さぁ? 」

誰も知らない様だ。恐らく知っているのは、既に亡き(おさ)だけになるだろう。 暫く沈黙が続く。


タツマがその沈黙を破る。


「こちらが収集した情報では、彼は(おさ)になる前は、副長としてアッカ(農業コミュニティ)の発展のため随分と尽力したようだね。そのためか、収穫高も上がったようで――」


「はい」


「と同時に、放浪癖もあった聞いている」


「議題に上がっているエイストラ地方を放浪していました。 先進的な国“アリステリア自治国家”や“ライムドタ”から何かを得られればと常に話していました」


「日記のようなものはないのか? 」

副社長が、アッカの副長に質問する。


「ないですね。 旅のしおりのようなものもありますが、どこに行ったか程度の記載しかありません。 それと……」

「それと? 」


「“疲弊していたライムドタの動きが、近年活発になっている。 恐らく――大きな後ろ盾を得ている可能性がある”とそしてその動きがアフロディア大陸全体を隷属(れいぞく)という名の影響が出る。 とも言っていました」


―― あーもー。 字面でも面倒なことになること確実じゃないか!

タツマが頭を抱えている。


彼の頭の中で、 “復讐”・“後ろ盾”・“隷属”・“軍人風の男たち”ねー。キーワードを並べていく。 そして写真に写っている二人に視線をやる。


おそらく状況からして彼らが、キーパーソンらしいが、片方がライムドタの人間と仮定すると片方は、彼らに力を貸す勢力、後ろ盾というやつか?


「もちろん、これも重要ですが、いまは近隣コミュニティへの平定も必要思われます」

アッカの副長が、諫言(かんげん)してくる。


「また戦か……」

タツマが嘆く。


「そうなります。 といってもこの戦力であれば、現状戦力では戦闘になっても負ける要素はないでしょう。 上手くいけば、周辺コミュニティは、恫喝(どうかつ)程度で降伏するでしょう」


「いいじゃない! 楽な国盗りならこっちも願ったり。 コンバットスーツで威圧かけてればいいんでしょ? 反抗するなら全滅させるだけだし」


ティルパが笑顔で怖いことをいっている。


「コミュニティへの被害が大きいと生産力が落ちるので、戦闘は控えて欲しいところだ」

タツマが、ティルパに釘を刺す。


「俺の目指す商業圏を説明してくる。タツマ。お前も来い。周辺の平定回りだ」


バルティス(副社長)が、タツマを平定に誘ってくる。 しかし、タツマは少し考えこんで回答を出す。


「いや。今回は副社長達が対応してくれ。 この周辺の状況をよく知りたいんだ」


「なんだ? ただのチキン野郎か! 」

ティルパが煽ってくる。


「ティルパ! 」

副社長からの叱責が飛んでいるが、タツマとしては彼女の言葉に特に怒りはないし、言葉をそのまま流す。


「そうだ。チキン野郎だ。 だから生き残っている。 副社長思ったんだけどこの辺りって情報源とか無いの? ラジオとか受像機とか」


タツマが、副社長に尋ねる。


「前にも言っただろう? 原始生活じみているって。 ないんだよ。 そうゆうのは。電力も安定しないし。 放送設備もないからな。 あるとしたら、“ヴァレダ工業コミュニティ”か“ローシェン自治区”あたりまで行かないと少なくともライマ山地は超えないと無理だな」


「確かにそうですね。ライマ山地向こうは生活水準が、ここよりも高いですから」

アッカの補佐が同意してくる。


「ずっとないの? 」


「おそらく、1世紀近く無いはずです。 御覧の通りの常に紛争状況ですから、加えて当時は東側にも航空機があったようで、それは激しい空爆があったようです。 そして、その空爆により放送設備は完膚なきまで破壊していきましたから」


アッカの補佐が回答してくる。


『メディアを押さえるのは常套手段ですからね』

アルプが会話に入ってくる。


「結局、紛争が小さくなったところで破壊した通信機などの精密機器の部品も手に入る訳でもなく現在に至る訳です」


アッカの補佐が、一通り説明して手元の飲み物に口を付ける。



「“アリステリア自治国家”の策略にまんまんと嵌められたといったところです」

今度は、アッカ副長が付け加える。


「策略? 」

タツマが聞き返す。


「はい。マラム地域(アフロディア大陸東側)で争わせ、国力を失えばアフロディア大陸における自分たちの地位は安定しますから。


実際、マラム地域内紛争では、“アリステリア自治国家”の諜報機関が、暗躍していたとの噂もありました。


事実あの国は、エイストラ地域(アフロディア大陸西側)の次席である“ライムドタ”を配下に治めているため西側では反抗できる国はないでしょう。


東側を弱体化させることで、アフロディア大陸内の自国の優位性による安全保障政策と考えられています」


「上手く考えたものだな」


「国力を失っている以上、放送局の再建などと言う娯楽に資金を廻せない現状にある次第です。 私達は農作物を作って、エイストラ地区に(おろ)して窮状(きゅうじょう)を凌いでいる状況です」


飼われている状態に近いか。 タツマが、考え込む。 それと同時に周囲も沈黙になる。 各員が、自身のお茶に手を付ける。


アッカ(農業コミュニティ)側もバルティスよりも小柄であるこのテラ(地球)人にはさほど注意を払っていなかった。 


しかし、何故かタツマとの会話のやり取りで彼の雰囲気に飲まれている。 そのため、タツマからの次の言葉を待っている、。


「……じゃぁ。その辺りを整備してみたら? 」


「その辺り? 」

アッカ副長が怪訝に回答する。


「ラジオ局を再建しましょう」


「どうした? 急に」

バルティスが、質問してくる。


「地域の価値観の共有に役に立つんじゃないの? ラジオとか受像機を知っているのであれば、重要性も理解できるはずだし」


「言われてみればそうだが……」


「なんか思うに、結局この周辺の地域は、互いに疑心暗鬼になっているんでしょう? 無駄に殺し合いするより、その労力を生産に廻さないといつまで経ってもこの生活苦から抜け出せないでしょう」


「しかし、資金がな」

バルティスが渋る。


「いいですよ。 ヒルベルト商会で手配します。 先行投資です。 こんな紛争ばかりしてないで情報通信でお互いの事を知れば、少しは争いが抑制できるんじゃないの? 」


どれだけ効果生まれるかも未知数ではあるが、やる価値はあるだろう。


「……まぁお前がやりたいというのであれば」

バルティスは、了承したが、他の者は唖然としている。


思ってもみない提案であり、実現できる目途も検討もつかない。 前代未聞の計画、ラジオ局創設による地域の融和政策が始まる。



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