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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
14章 東部小競合
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暁闇雲無

―― 夜明け前


タツマは任務の真っ只中にいる。そのためか、緊張で夜が明ける前に目が覚める。

携帯食を口に入れ進んでいく。何処の星も夜明け前が最も暗い。


しかし、コンバットスーツのバイザーメットがあるため暗闇でも暗視ゴーグル機能のおかげで苦なく進める。


しばらく進んでいくと夜が明けてくる。 西側に向かっているため、正面から太陽が昇る。いつもながら不思議な感じであるが、これがウェヌス(金星)の特徴と醍醐味ともいえる。


太陽が昇り、照らしだす空に雲はない。


「今日も晴れそうだな」

『そのようで』


二人は、西から上る朝日に向かい車両を動かしていく。




---アッカ農業コミュニティ


流石に昼間に街道沿いを走る訳にはいかない。 斥候がいる可能性があるため、樹林帯の木が深めな場所を通過している。


『全体を見通すためには、北側の山側を進むのがよろしいかと思います』

「了解だ」


車輌は、樹林帯から山側に向けて入っていく。

何気にキツイ山だな。観光資源地でもないため道も整備されていない。完全に獣地道である。


「この辺りの大型の猛獣は? 」

『いますね』


―― いるんかい。


『四足歩行の獣になります。雑食です。テラ(地球)単位で250kg程度、全長は2m~3mといったところでしょうか? 』


熊っぽい? サイレンサー付きのハンドガンを準備する。


『まぁ13mmの前では一瞬ですけどね』

「……」


途中から車両でいけないため、徒歩にかわる。 車両を樹々や雑草で覆い隠して本格的なハイキングが始まる。 コンバットスーツを着てのハイキングだ。 


道なき道をかき分けて山を登っていく。 棘のある植物や虫なども多い。 ウェヌス(金星)といっても食肉や動く植物がいる訳でもない。 一般的なシダ類のような植物がお生い茂っているだけである。 


虫もまぁ毒を持っているのもいるだろうが、コンバットスーツを溶かすようなびっくり昆虫がいる訳でもない。 


故に、コンバットスーツを装備しているため、それらの接触があっても安全に進むことが出来ている。 コンバットスーツの補助動力もあるため体への負担も少ないのも助かる。


―― 登山用のパワードスーツがある利点が分る気がするな。


とはいえ、走るほど早く歩けるわけでもない。 ただの徒歩のため移動時間は、かなり必要とする。 目的のために一歩一歩進んでいく。


「そう言えば、“ラドゥニッツァ遺跡”があるって言っていたよな」

タツマからアルプに話題を振る。


『ええ。 ウェヌス(金星)の古代遺跡ですね』


「ここのは、どんな感じなの? イシュタル帝国のマクスウェル山の麓にあるとは聞いたことがあるけど」


『そうですねー。 生活様式にも様々な違いがありますが、大きなところはアフロディア大陸系のラドゥニッツァは、表音文字と言わています。一方でイシュタル大陸系は、表語文字といった特徴がありますね』


「へーウェヌス(金星)は、歴史文化よりも治世事態に目が奪われるよから文化的側面まで調べなかったな」


『それも止む無しです。 ビックフォールで大多数の遺跡は崩壊。 その後のポスト・アポカリプス(大淘汰時代)では、文化的資産は無価値でしかないですから。


事実、崩壊した遺跡文化遺産は、数知れずですね。 残っている遺跡も放置がほとんど、イシュタル帝国など余力がある国が保護活動してる程度です』


「自分達のルーツが消えるのは、気にしないのかな? 」

樹々をかき分けながらタツマが、感想を洩らす。


『それよりも明日の飯ですね』

トークンらしい返答が返って来る。


―― 確かにな


そんな会話で気を紛らわしながら進んでいく。 ようやく森の切れ目が見える。 

切れ目の先には、草原のようになっている平地が見える


「森が終わるぞ! 」

『タツマ。 お待ちを。 平原であれば狙撃の可能性があります』


アルプは、感情がないため機械的に行動してくれて助かる。 たしかに、この鬱陶しい森から解放された気分で平地に出てズドンは困る。


アルプは、樹林帯側からバグドローンで平地を確認していく。 その光景もバイザーメットに投影される。 どうやら人はいない様だ。


『まずの敵は発見できません。 しかし、潜んでいる可能性もある。 私が先に出ます』


アルプが広い草原に出ていく。 トークンの黒いボディ―が、草原にでても特に何も起きない。


『なにも反応がありません』

≪大丈夫そうか≫


『おそらく。 しかし、バイザーメットは外さずにお願いします』

≪了解≫


山肌の草原に姿が一つ増える。 風で下草が揺れている。 バイザーメットをとって風を感じられればさぞかし、気持ち良いのだろうが、狙撃の可能性もあるため、安易に脱ぐことはできない。


安全が確保できたことで周囲を見回し動き回る。 一行は西側に向かって歩き出す。 樹林帯と違い枝葉や草の障害物が無い分、移動も楽になる。



≪手つかずの自然かー。悪くないな≫

『その感想は間違いですね。ここもかつては人がいました。 消えただけです』


さすがトークン。 情緒すらない。


≪まぁそうだけどさー≫

『人口減少により、多くの住民が平地に引っ越したのでしょう。 放置されただけの土地です』


アルプからの辛辣な指摘を受けながら、タツマ達は進んでいく。


『あそこですね』

アルプが示す。


広範囲に畑が広がり集落が点在する地域が見える。 畑には作物が植えられているのが、山腹からもわかる。 青々とした区画された畑。 自然にできた地形ではない。整備したのだろう。


―― まっとうに生きている人間同士が、なぜ争わないといけないんだ


『私に感情というものがありませんが、残念ながら覚悟を決めるしかないと。 少なくとも相手は覚悟が決まっているでしょう』


アルプが更に別の方角を指差す。


指さしの先には何やら動くものがある。バイザーメットの望遠機能を使うとその様子がある程度わかる。


「訓練か……」

コンバットスーツを着た、集団が軍事訓練を行っている。 車両の取り回しや、射撃の訓練をしているのが分る。


「迫撃砲は? 」


『最低一基はありそうですね』

周囲が静かなためか、遠方であっても爆発音が響いて来る。


移動式の小型タイプのようで、実弾を使って訓練をしているようだ。

『しかし、手動での射角調整。狙いはお察しといったところでしょうか?』


「偵察はできるか? 」


中距離偵察用(1~10km以下)のドローンは装備していますが、目的地までは少し距離(10km以上)がありますね。 片道でエネルギーが切れてしまいそうです』


「そうか……見える範囲で偵察だな」

『了解です』


樹林帯に紛れながらアッカ(農業コミュニティ)が見える範囲に移動する。

崖の端部から見下ろせる場所がある。


砲撃音や銃撃音が聞こえてくる。


「アルプ。 人数は分かる? 」

バイザーメットでは、豆粒大の人がウロウロしてよくわかない。


『おおよそ30ぐらいのグループが10組といったところですね。 自動車の運転技術・射撃・砲撃といった感じでしょうか? 各隊で訓練内容が違っているようです。 しかし――』


「しかし? 」


『基本、武装のバリエーションが多くありません。こんな土地ですから空挺なければ戦車もない。 あって自動車か装甲車程度です。 砲撃訓練もさほど命中率は良くありませんね。 高価な砲弾を訓練で十二分に使うことが出来ないでしょう』


「……」


マールス(火星)で対峙した盗賊の規模が大きくなった程度と見るべきです。 コンバットスーツも数世代前のものです。 タツマの戦術を用いたタミナ部隊と衝突した場合、 アッカ(農業コミュニティ)部隊の殲滅は、容易です。 もちろん彼らに策があれば別ですが』


―― ワンサイドゲームか


『何を考えているかしりませんが、説得は無理ですよ』

「知っている」


―― どうしたものか?


『まぁ長い付き合いですからね、考えていることは分かります。アッカ(農業コミュニティ)の部隊をなるべく残したのであれば、リーダーを狙撃するしかないですね』


「……」


『リーダーが死亡すれば、投降する可能性があります。 タツマの作戦から判断すれば、リーダーは、必ず逃げるはず。 そこを狙撃するしかないですね』


「……現実は厳しいな」


『それでもやらないといけないのが、現実になります』

誰かが死なないと平穏が来ない世界か。


アルプは続ける。


『それがアッカ(農業コミュニティ)の被害を抑えつつ副社長(バルティス)と交渉できる唯一の内容になります。 敵の早期降伏により、こちらの損害も少なくなるとの説得が効果的でしょう』


「その作戦で行こう。 あと一日ここに留まり情報を収集して撤収だ」

『了解です』



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