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【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
第3章 私は、世界で一番栞のことが好き

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第79話 今日はここまで

「先輩、超可愛いです! 写真撮っていいですか?」


 私のヘアセットを終えた栞が、大はしゃぎで正面に回り込んできた。


「いいけど」


 やったー、と言いながら栞がスマホを構える。見慣れないお団子ヘアの自分に自信があるわけではないけれど、せっかく栞がしてくれた髪型だ。


「本当に可愛いです、先輩」


 パシャパシャ、と何枚も写真を撮られる。私の写真をそんなに撮ってどうするのだろう。


「撮り終わったら、次は私の番だから」

「はい。先輩が満足するまで、たーっぷり撮ってくださいね?」


 栞の指示に従って顔の向きや角度を整え、何枚か写真を撮る。栞が満足したら、次は私の番だ。


「栞、こっち向いて」


 メイド服姿の栞を何枚も何枚も写真に撮る。こんなに可愛いんだから、たくさん撮っておかないと。

 栞もノリノリでポーズを決めてくれるものだから、あっという間に私の写真フォルダは栞でいっぱいになった。


「お互い、いっぱい写真撮っちゃいましたね」

「うん」


 撮影に夢中になっている間に、かなり時間が経ってしまった。うちから栞の家までは時間がかかるから、そろそろ帰らなければならない。

 泊まっていけば、なんて簡単に言える年齢ではないのだ。


「そろそろ着替えなきゃですね、先輩?」

「……うん」

「そうだ! 今の私はメイドさんなので、夏鈴先輩のお着替えを手伝ってあげます」

「え? いや、それはなんていうか……逆がいいんだけど」



 にや、と笑みを浮かべた栞は、あっさり私の主張を拒んだ。背伸びした栞が、チャイナドレスの首元にあるボタンへと手を伸ばしてくる。


「先輩。私はいつも、先輩のえっちなお願い、聞いてますよね?」

「……そう、かも」

「かもじゃないですから。なのに先輩は、私のお願いは聞いてくれないんですか?」


 上目遣いで可愛く見つめられたら、私に断る選択肢なんてない。ゆっくりと首を横に振ると、栞は満足そうに何度も頷いた。


「ファスナー、右ですよね。手、ばんざいしてください」


 言われるがままに右手を上げると、右脇にあるファスナーを栞に下ろされた。

 同性の前で着替えることなんてどうってことはないはずなのに、相手が栞だと思うだけでこれほど恥ずかしいとは知らなかった。


「じゃあ先輩、脱がせますよ」


 なんとなく目を逸らしてしまう。そのまま栞は、手際よく私を脱がせた。


「……ありがとう」


 慌てて制服に手を伸ばそうとすると、栞に止められてしまう。目が合うと栞は、にこにこと笑って私の胸をつついた。


「先輩のおっぱい、綺麗な形してますよね」


 栞に胸を触られた。

 栞が、おっぱいって言った。


 その二つの事実に頭が沸騰しそうになる。


「先輩、次は私のこと、脱がせてください」

「その前に服着ちゃだめなの?」

「だめです。私だって先輩の恥ずかしい格好見たいんですよ? こういうの、恋人特権でしょう?」

「……分かった」


 恥ずかしいから、という理由は、栞の提案を断るにはあまりにも弱すぎる。

 こうなったらもう、さっさと栞のことも脱がせるしかない。可及的速やかに、今すぐ。


「じゃあ、栞のことも脱がせるから」

「きゃー、夏鈴お嬢様のえっち」


 ふざけて笑う栞の胸元のリボンをほどく。エプロンを外す。メイド服を脱がせる頃には、栞の顔は真っ赤に染まっていた。


「夏鈴先輩。私、そろそろ帰らなきゃいけないんですけど」

「うん」

「……あと20分くらいなら、ここにいられるんです」


 なにかを言うよりも先に抱き締めたのは、時間が惜しいからだ。


「夏鈴先輩」

「なに?」

「立ちっぱなしは、ちょっと疲れちゃいません?」

「すごく疲れちゃうと思う」


 倒れ込むようにベッドへ移動する。なんとなく布団をかぶって、その中で抱き合う。お互いに下着姿だと、あらゆる箇所の肌と肌がぶつかった。


「ねえ先輩。山で遭難した時って、人肌で温まるとか言うじゃないですか」

「言うね」

「それ、今初めてピンときました。人肌って、あったかいんですね」


 栞の人差し指が、そっと私の右腿をなぞった。何度も何度も同じ場所を撫でられると、その行為に意味を見出しそうになってしまう。


「先輩は、誰かとこんな風に触れ合うのは初めてですよね」

「うん」

「私、それが本当に嬉しいんです。だって、私も初めてだから」

 過去に、栞が肌を重ねた相手がいなくてよかったと心底思う。もしそんな相手がいたら、脳が破壊されてしまう気がする。


「ちゅーしてください」


 いつものようにそっと唇を重ねると、一瞬、柔らかいものが私の唇を突いた。

 それが栞の舌だったと認識する頃にはもう、彼女は羞恥から目を逸らしてしまっている。


「……栞。もう一回、ちゅーしたい」


 強引に顎を掴んで、性急に唇を重ねる。栞の口はわずかに開いていて、私の舌を少しも拒まなかった。

 やり方なんて分からない。正解も知らない。ただ夢中になって、栞の口内を味わう。


「んっ、せんぱ……っ、もう、無理ですって……!」


 何度も背中を叩かれ、仕方なく唇を離す。つう、とどちらの物か分からない唾液が唇からこぼれた。


「きょ、今日はここまで、です」

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