表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
第3章 私は、世界で一番栞のことが好き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/86

第71話 えっちなのは、私だけじゃない?

「見てください! 私、ハンバーグを作ったんです!」


 フライパンの中には、美味しそうなハンバーグが四つほど入っている。既にできあがっていて、温めればいつでも食べられる状態だろう。


「しかもこれ、中にたっぷりチーズも入ってますから」

「そうなの?」

「はい! 今日は先輩とのお家デートなので、チートデーってことで!」


 ソースも用意済みですよ、と栞が冷蔵庫から小皿を取り出す。

 今日はバタバタしていて朝食をとっていないから、腹が減ってきた。


「温めるので、ちょっとだけ先輩は座って待っててください」

「いいの? 手伝えることがあるなら、手伝うけど」

「大丈夫です! 今日は私が先輩をおもてなしするって決めてるので!」


 ほらほら、と背中を押され、キッチンが見える位置に置かれた椅子に座る。

 栞はエプロンをつけると、ハンバーグを温め始めた。


 エプロン姿の栞、可愛いな……。


 栞が着用しているエプロンはフリルがついた白いデザインの物で、彼女によく似合っている。

 残念なのは、ここからだと後ろ姿しか見えないことだ。


「栞」


 少しだけ悩んだ後、私は立ち上がってキッチンへ移動した。栞が振り向くより先に、後ろから彼女を抱き締める。


 身長差があってよかった。後ろからでも、栞の顔がちゃんと見える。


 目線を下げれば豊かな胸の谷間も見えてしまうわけなのだけれど、もちろんそこも凝視しておいた。


「夏鈴先輩っ!? 座っててって言ったのに……そんなに私とくっついてたかったんですか?」


 からかうような声音だけれど、フライ返しを持つ手がわずかに震えている。しかも耳まで真っ赤になっていた。


「うん」


 わざと耳元で返事をし、栞の耳に息を吹きかける。すると栞はフライ返しを置いて、抗議するように私を軽く睨んだ。


「夏鈴先輩! 私は今、ご飯を作ってるんですよ? そ、そういうえっちなことしたら危ないじゃないですか! 火も使ってるんですし」


 ド正論だ。でも、栞にこうして怒られるのは気分がいい。


「ごめん、つい」

「また先輩はそういう顔をして……私が先輩の顔大好きなの、絶対知ってますよね! もう、本当に先輩は、まったく……」


 嬉しさを隠しきれていない声で言うと、栞は再びフライ返しを手に持った。


「ご飯を食べた後はいちゃいちゃを予定してるので、ちょっと待っててください」

「……そんな予定だったんだ」

「……先輩、言っておきますけど」


 ソースをフライパンの中に投入し、絡めるようにハンバーグをひっくり返す。

 そしてハンバーグを皿に移し終わった後、栞は振り向いて私を見上げた。


「えっちなのは、先輩だけじゃない……かもしれませんからね?」


 なにそれ。

 その発想はなかった。


 顔を真っ赤にした栞が、お米の用意を始める。手伝わなきゃと思うのに、私の脳内ではひたすら先程の言葉が繰り返されてしまう。


 えっちなのは、私だけじゃない? それってつまり、栞もえっちだってこと? いや栞はずっとえっちではあるんだけど……。


 混乱してなにもできなくなった私を放置して、栞がちゃきちゃきと昼食の準備を進める。

 ご飯にしますよ、と笑った栞の顔はまだ、真っ赤なままだった。





「美味しい……!」


 がぶっ、と一口噛んだ瞬間、ハンバーグから肉汁がこぼれた。中のチーズもたっぷり入っているし、なにより肉が柔らかい。

 やや濃い味付けのソースも、白米にはぴったりだ。


「でしょう? お母さんの得意料理で、私の好物でもあるんです!」

「……本当に美味しい」

「ソースも自家製なんですよ!」

「すごいね」


 自分で料理をした経験は数えるほどしかないけれど、今日の手作りのハンバーグとソースに時間がかかることは分かる。


 栞の家族は、やっぱり温かいんだろうな。


「私、これからもっとお料理頑張りますね。夏鈴先輩に喜んでもらえるように!」

「私に?」

「はい。ご飯を作って、おかえりなさい! って先輩のこと出迎えるんです。絶対、一緒に住みましょうね!」


 大学生になったらですかね、と栞が幸せそうに呟く。栞は当たり前のように、私との将来を考えてくれているらしい。


「そのためにも私、夏鈴先輩と同じ大学に行けるよう頑張りますから」

「応援してる」


 栞と二人での暮らしは幸せだろうな、と思う。けれどそれと同時に、少しだけ不安になった。


 栞は家族に愛されて、大きな家で、温かいご飯を食べて育った。

 誰が採点したって、100点満点の家庭環境だろう。

 私はちゃんと、こんな風に栞を大切にできるのかな。


「先輩」

「なに?」

「大好きな人と食べるご飯って、なんでこんなに美味しいんでしょうね!」


 屈託のない笑顔に、たまらなく好きだな、と気持ちが溢れそうになる。


 本当に栞って、狡い。


「栞」

「はい」

「食べ終わったら、栞の部屋に行きたい」

「はい。元々、その予定ですから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ