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【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
第3章 私は、世界で一番栞のことが好き

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第66話 ゲーセンデート

 カラオケを出て駅へ向かう途中、栞に腕を引かれ、近くにあったゲームセンターにやってきた。

 カラオケと同じく店内は騒がしいけれど、栞と一緒なら苦にならない。


「ね、先輩。先輩って、クレーンゲームとか得意ですか?」

「……どうだろう? あんまりやったことないんだよね」


 中学時代はゲームセンターへ行っても、音ゲーやアーケードゲームをすることが多く、なかなかクレーンゲームをする流れにはならなかった。

 父親がいた頃はよく連れていってくれたけれど、自分でクレーンゲームをした記憶はあまりない。


「じゃあ、やってみません? もうちょっとだけなら、寄り道しても大丈夫でしょうし!」


 スマホで時間を確認する。確かにあと30分程度なら、遊んで帰っても問題なさそうだ。


「いいけど、欲しい物でもあるの?」

「特に欲しい物があるわけじゃないですけど、なんていうか、シチュエーションに憧れがあって!」

「シチュエーション?」


 栞が少しだけ恥ずかしそうに目を逸らした。


「……少女漫画とかでよくあるじゃないですか。恋人に、おっきいぬいぐるみとってもらうやつ」

「確かに……ある、かも?」


 少女漫画以外でも、ラブコメ系の漫画やアニメでは定番のシチュエーションな気がする。


 つまり、栞は私に大きいぬいぐるみをとってほしいってことだよね。


 深呼吸をして、近くのクレーゲームをチェックする。小さい物ならまだしも、大きいぬいぐるみはかなりハードルが高いのではないだろうか。


 栞のためなら何回だって挑戦する。でも、何回もやるって行為そのものがダサいかも……!


「夏鈴先輩?」

「……任せて。必ずとってみせる」

「えっ? いやその、そんなに意気込んでくれなくても大丈夫ですよ!?」


 本当に大丈夫ですからね!? と栞が焦り始めたけれど、恋人として彼女の憧れのシチュエーションを叶えてあげたい。

 なんとしてでも、景品をゲットしなければ。


「栞はどれが欲しいの?」

「そうですね……やっぱり、先輩っぽいのがいいなぁ」


 真剣な顔になって、栞が景品を確認していく。

 アニメのキャラクターや、動物がモチーフになったぬいぐるみ等いろいろあるけれど、私っぽいものはあるのだろうか。


「あっ、この子がいいです!」


 悩んだ末に栞が見つけたのは、大きな狐のぬいぐるみだった。白と黒の二種類があって、栞が指差したのは黒い狐だ。


「……狐?」

「はい! 先輩って、動物にたとえたら狐みたいな気がしません!?」

「それ、どうなの?」

「頭がよくて、とっても美人ってイメージです!」


 とびきりの笑顔でそんなことを言われてしまったら、狐に愛着がわいてきた。


 栞から見た私って、そんなイメージなんだ……。


「ちなみに私は、動物にたとえたらなんだと思います?」


 ねえ、と栞が楽しそうに顔を覗き込んでくる。これに関しては即答だ。


「ポメラニアン」

「えっ、犬種まで指定ですか!?」

「絶対、ポメラニアンだと思う」


 小さくてふわふわで、笑顔が可愛い。まさに栞みたいな犬だ。

 将来犬を飼うなら、絶対にポメラニアンがいい。


「それって、可愛いってことですよね?」

「うん」

「……そうだった、今日の先輩は素直すぎるんだった……」


 赤くなった顔を隠す栞が可愛い。

 そっとその頭を撫でた後、鞄から財布を取り出す。

 財布の中には500円玉が1枚と、100円玉が3枚入っていた。


 狐のぬいぐるみのクレーンゲームは1回200円だから、これで4回できる。

 両替にいけばまだできるけど、両替に行くのってスマートじゃないよね。


 どうにかして、4回以内であのぬいぐるみをゲットしたい。無謀かもしれないけれど、恋人にいいところを見せたい。


 深呼吸をし、機械に小銭を投入する。

 クレーンの位置をボタンで操作し、確定ボタンを押してぬいぐるみを掴む……という方式のようだ。


 これって確か、単純に持つだけじゃなくて、タグに引っかけたりいろいろしないといけないんだよね?


 ただ、まずはアームの可動域や力を確認しなければ作戦が立てられない。

 必要な情報を確保するために、最初は普通に掴んでみることにした。

 クレーンをぬいぐるみの真上に移動させ、確定ボタンを押す。ぬいぐるみのちょうど真ん中を挟んだものの、アームの力が弱く、上まで持ちあがった瞬間にぬいぐるみは落ちてしまった。

 落下したぬいぐるみが、反動で後ろに跳ねてしまう。


 これ、思ったより難しいかも……!


「夏鈴先輩。さっきも言いましたけど、無理しなくていいですからね?」

「いや、絶対にとる。安心して。今のは練習だから」


 ———なんて、格好つけて言ったものの。

 私が無事に黒狐のぬいぐるみをゲットできたのは、3回ほど両替機に通った後だった。

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