表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【百合】天笠夏鈴は堕とされたい~健気で一途な後輩に堕とされる百合の話~  作者: 八星 こはく
幕間2(羽田栞視点・中学時代回想含む)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/86

第62話 やっぱり運命!

「採点したの、見せて」


 先輩に言われて、数学のノートを渡す。テスト範囲の問題集を解いたノートは、恥ずかしいことにバツ印ばかりだ。


 さすがにできてなさすぎるって、呆れられちゃうかも。


 先輩に頼んで、今日は塾の自習スペースで勉強を教えてもらえることになった。

 自習スペースは、自習室と違って会話が許可されている場所なのだ。


「こことここ、同じようなミスしてない?」


 先輩がシャーペンで指したのは、私が苦手な一次関数の問題だった。


「……す、すいません」

「謝らなくていいけど。苦手なの?」

「はい。だ、だってその……式がグラフを表してるって、なんか意味分からなくないですか!?」


 数学は全体的に苦手だけれど、特にグラフの問題は苦手だ。

 頭の中で、数式とグラフが上手く結びついてくれない。


「そう? グラフって結局、点の集合体って考えたら納得いかない?」

「……点の集合体?」

「うん。たとえば、y=3x+3の式だと、xが2の時、yはなに?」

「……9です」

「だね。じゃあ、xが4の時は?」

「15です」


 私が答えると、先輩がさらさらとノートにグラフを描いてくれた。定規なんて使っていないのに、先輩が引いた線は真っ直ぐだ。


「今答えてもらったのはここと、この点。でも、実際には他にもいろんなxを当てはめることができるでしょ。整数じゃなくたっていいし、キリがない」

「はい」

「キリがないけど、でも、ここには無数の点があるの」


 分かるかな、と言いながら、先輩がいくつもの点をグラフに書き足していく。点が密集すると、確かに線に見えてきた。


 とはいえ、なるほど完全に理解した! とはすぐになれない。

 でも、先輩が必死に説明しようとしてくれていることは分かる。


「先輩、ありがとうございます」

「伝わるといいんだけど」

「なんとなくかもですけど、伝わりました!」


 頷くと、夏鈴先輩が嬉しそうな顔をしてくれた。可愛い。


「よかった」


 満足そうな表情で先輩が自分の勉強に戻る。一瞬で集中モードに入れるんだから、やっぱり先輩は凄い。


「あの、先輩」


 邪魔して申し訳ないと思いつつ、先輩に声をかける。だって仕方ない。私、先輩ともっと話したいんだもん。


「先輩は勉強、好きなんですか?」

「好き、ってわけじゃないかな。嫌いでもないけど」


 勉強が嫌いではないというだけで、十分珍しい気がする。私がじっと先輩を見つめると、先輩は続きを話してくれた。


「……知らないことを知るのは、結構楽しいと思う」

「知らないこと……」

「うん」


 よく分からない。でも、先輩が素敵なことは分かる。私は身を乗り出して、両手の人差し指で自分の頬を指差した。


「じゃあ夏鈴先輩。私のことも、もっと知ってみるのはどうですか?」


 首を傾けて、とびきりあざとい笑みを浮かべる。先輩はぽかんとしているけれど、嫌がってはいないような気がした。


「私は先輩にもっと知ってほしいですし、私も、先輩のことをもっと知りたいです」

「……どうして?」

「その理由も、先輩は知りたいですか?」


 立ち上がって、先輩の正面の席から、隣の席に移動する。

 ぐいっ、と距離を詰めると、先輩の顔がほんのちょっとだけ赤くなった。


「教えてあげるので、代わりにまた、こうやって勉強を教えてくれませんか?」


 お願いします、と頭を下げると、先輩はすぐに頷いてくれた。

 分かっていたことだけれど、先輩はやっぱり押しに弱い。


「やったー! これからも二人だけの勉強会、いっぱいしましょうね!」


 これでいつでも先輩と話す口実を作ることができる。もちろん、本当に勉強をする気もあるのだけれど。


「じゃあ次は、私が教える番ですね」


 先輩は背が高いけれど、そのほとんどが足だ。だからこうして隣に座っていると、それほど身長差はない。

 じっと先輩の目を見つめる。先輩の目は少し潤んでいて、照明の光を反射してきらきらと輝いていた。


 夏鈴先輩って、本当に綺麗。


「私が先輩のこと、好きになっちゃったからです!」


 先輩の白い頬がゆっくりと赤く染まっていく。動揺したようにまばたきを繰り返すせいで、長い睫毛が何度も揺れた。


「……なに、それ」

「そのまんまの意味ですよ、先輩」


 女同士だし、いきなりだし、先輩はきっと本気にはしてない。

 私も、今ここでこれが本気の告白だと告げるつもりはない。


 だけど。


 私が本気だって伝わるように、これから全力でアピールしてみせる。


「なので、先輩、覚悟しておいてくださいね。私、こう見えて一途なんです!」


 真っ赤な顔のまま、先輩は俯いてしまった。顔を覗き込もうとしても、髪の毛で隠されてしまう。


 可愛い。綺麗。好き。大好き。

 絶対これは、運命に違いない。


 先輩のこと、早く独占しちゃいたいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ