84.言葉を信じたい夜 ― “届いたかどうか”をただ願う弟の時間
尚人は、投稿を終えたスマホを手に、
しばらくソファに身を沈めていた。
(今回は……たぶん、俺の“いまの気持ち”が
そのまま写真にも、言葉にも滲み出てた)
(だから、
もし見てくれてるなら――届いててほしい)
コメントは、まだ来ていなかった。
“いいね”はついていた。
その中には、@RINA_cos の名前もあった。
(姉ちゃん……見てくれてるんだよね)
でも、それだけだった。
(もしかして、
言いすぎちゃったかな……)
自分でもわかっていた。
あの言葉は、もう“ほとんど告白”に近い温度だった。
(でも、名前を出したわけじゃない。
ただの“投稿”なんだから、
怖がらせることなんて、ない……はず)
そう思おうとしても――
心の中では、不安がじわじわと広がっていく。
スマホを伏せて、尚人は深く息を吸った。
そして、ノートを開く。
「この投稿は、誰かに届いてほしくて書いたものだ。
そして、その“誰か”が、
たぶん、今ここを見てくれているはず――
だから、もう信じるしかない。」
「言葉には、きっと力がある。
“想い”は、必ず伝わるって、
そう信じて、ここまできたんだから。」
ページの端に、小さく書き添えた。
「届いてますように。
あなたの心に、静かにでも、確かに。」
尚人は、画面に最後のひと目をやり、
そっと部屋の明かりを落とした。
(もし、あの人が今も見てくれてるなら――
それだけで、今夜も、十分だよ)




