77.名前じゃなくて、気持ちで繋がる ― はじまりのキャッチボール
ことりは、投稿を何度も見返していた。
やっぱり――
この人の言葉は、自分に届いていた。
(私だけが、知ってる“やさしさ”だった気がする)
(……今度は、わたしの番かも)
コメント欄を開き、深く息を吸った。
そして、ゆっくりと、優しく打ち込む。
「この写真を見て、胸がぽっとあたたかくなりました。
言葉の奥にある“ありがとう”が、ちゃんと伝わってきて、
私の方こそ、また前を向けた気がします。
とても、素敵でした。」
送信。
(名前なんて、いらない。
この気持ちは、“誰か”じゃなく、“あなた”に届いてる)
通知音に気づいた尚人は、
スマホを開く。
@RINA_cosからのコメント。
また――届いた。
(姉ちゃん……)
読めば読むほど、胸があたたかくなる。
(本当は“ありがとう”って返事をするだけのつもりだったけど、
ちゃんと、“受け取ってくれてる”)
尚人は、画面を見つめながら、そっとコメントを返す。
「言葉が届いていたなら、それだけで、僕は前を向けます。
“誰か”のためにじゃなく、
“誰かと”気持ちを重ねられることが、
とても幸せだと、改めて思えました。」
ことりは、再びスマホの画面に指を伸ばした。
通知欄に浮かぶ、@trace_naoの返信。
読んだ瞬間、ふわっと胸があたたかくなった。
(この人、やっぱり……
言葉を交わすたびに、心がふんわりする)
そっと、返す。
「あなたの写真や言葉が、
私のなかに少しずつ“やさしさの種”を植えてくれています。
だから、焦らず、ゆっくりで大丈夫です。
これからも、楽しみにしています。」
尚人は、それを読み終えると、ノートにひとことだけ書いた。
「この距離だからこそ、心が通じることもあるんだな。」
そして、小さく笑ってつぶやいた。
「姉ちゃん…ありがとう。
言葉だけで、今、ちゃんと繋がれてる気がするよ。」




