↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
PR
85/114

73.言葉にしないままじゃ、もういられない ― 姉の“はじめてのコメント”

夜。

ことりは、またいつものようにスマホを手にしていた。


@trace_nao のページを開くのは、

もう何度目になるか分からない。


(この数日、ずっと見てる。

でも、投稿はないまま)


(その“沈黙”が、思っていた以上に寂しいなんて――

どうして今になって、気づくんだろう)


写真を見返す。

キャプションの言葉を、何度もなぞるように追う。


気づけば、涙がにじんでいた。


(あの人の言葉に、

私はずっと支えられてたんだ…)


ことりの指が、そっとコメント欄に滑る。

昨日までは打っては消していた文面。


けれど、今夜だけは――

指先から、すっと自然に言葉があふれた。


「はじめまして。

あなたの投稿に、いつも心がじんわりと温かくなります。

世界観も言葉も、とても丁寧で、

誰かを思いやるやさしさが滲んでいて――

私は勝手に、何度も救われていました。」


ことりは、いったん息を止める。


(ここまでは……大丈夫。

でも、もう少しだけ)


もう一度キーボードを開き、

そっと“最後の一文”を付け加えた。


「投稿、無理せず、でも…

また見られたら嬉しいです。

あなたの言葉と写真、待ってます。」


そして――

ことりの指先が、“送信”ボタンにふれた。


もう、止めようとは思わなかった。


(きっと、届いてほしい。

誰かに、じゃなくて――

あなたに)


ぽんっ、と小さな音が鳴る。

コメントが、画面に表示された。


ことりは画面を見つめながら、

初めての安堵と、ほんの少しの震えた気持ちを胸に抱いて、

スマホをそっと胸に当てた。


「届いたかな。

届いてくれたら、いいな――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。