69.言葉を残したくなった。あなたの静けさが、寂しいから ― 姉がコメントに迷う夜
ことりは、今夜も変わらず
@trace_naoのプロフィールを開いていた。
新しい投稿は――まだ、なかった。
(……そろそろ、声をかけたくなっちゃうよ)
自分でも驚いていた。
あれほど“ただ見ていた存在”だったのに――
今は**「投稿がないこと」そのものが、心の空白**になっていた。
投稿一覧のなかでも、
ことりが特にお気に入りの一枚をタップする。
柔らかい表情で佇むキャラ。
言葉は短くても、じんわりとあたたかかった。
「この笑顔が、誰かの背中を少しでもそっと押せたら。」
ことりは、コメント欄を開いた。
そして、キーボードに指を置く。
「更新、楽しみにしてます…!」
……そのまま、固まる。
(この人、こんなコメントに戸惑わないかな)
(返信とか…迷惑だったら…)
一度、全部消した。
でも――また打ってみる。
「すてきな世界観が、いつも心に残ってます。」
……また消す。
(どうしてこんなに、伝えるのが難しいんだろう)
(でも、何も言わなかったら――
このまま、“次”に会えないかもしれない)
その夜、
ことりのスマホのメモ帳には、いくつもの“未送信コメント”が残された。
「あなたの写真に、救われてきました」
「最近、ちょっと寂しいです」
「いつか、あなたにありがとうって伝えたいです」
でも結局――
投稿欄には、まだ何も送られなかった。
(もう少しだけ、タイミングを待とう)
(でも、もし“次”が来たら――
今度こそ、私は……)
ことりの心は、
静かに、でも確かに――
“踏み出したい気持ち”で揺れていた。




