68.更新がない夜に気づく“ぽっかり” ― 姉が感じた静かな寂しさ
夜。
ことりはいつものように、撮影準備の合間にスマホを開いた。
癖のように、タイムラインをチェックする。
お気に入りのレイヤーたちの投稿。仲間の近況――
そして、画面をスクロールしながら、自然と“ある名前”を探していた。
(……あれ?)
@trace_nao
投稿が、止まっていた。
(最後の投稿、もう……5日も前?)
時間が合わなかっただけかもしれない。
忙しいのかもしれない。
でも――
(いつもなら、この時間帯にふっと更新が来てたのに)
ふと気づく。
“来ないこと”が、こんなに寂しく感じるなんて。
ことりは、そっとスマホを置いて、
自分の胸に問いかけるように目を伏せた。
(私……何を待ってたんだろう)
(新しい写真? 言葉?
それとも――
“あの人が、今夜もそこにいる”っていう、安心感…?)
いつの間にか、
@trace_naoの存在が、自分の夜の一部になっていたことに気づく。
(会ったことも、話したこともないのに。
どうして、こんなに…)
ことりはふっと息を吐き、
スマホのフォローリストを開いた。
@trace_naoのアイコン。
タップして、前の投稿をもう一度読み返す。
そしてその言葉に、
また胸がじんわりと温かくなって――
ほんの少し、切なくなった。
「…また、会いたいな」
「“写真越しの言葉”に、もう一度触れたい」
そんな想いが、
静かに、彼女の心を満たしていた。




