67.言葉が、決まらない。気持ちがあふれそうで ― 投稿できない夜の葛藤
部屋の中は、静かだった。
ただ、スマホの画面だけが淡く光っていた。
尚人は、投稿画面のプレビューをずっと見つめていた。
キャラの笑顔。
少し見上げるような目線。
口元ににじむやさしさ。
――その表情は、演じたものじゃない。
「今の自分の感情」が、そのまま映ってしまった一枚だった。
(キャプション……
なんて書けば、いいんだ)
思い浮かぶ言葉は、どれも“嘘”に思えた。
「少しずつ、自分を出していけたら」
→ 遠回しすぎる。
「誰かに見てもらえたら、それだけで嬉しい」
→ それだけじゃない。
「この写真には、自分の想いが詰まってます」
→ 想いって、なんの?
(――姉ちゃんのこと、だよ)
けれど、その気持ちは
写真にも、言葉にも、“完全には隠せない”気がしていた。
スマホを置いた。
けれど数分後には、また手に取って画面を見返す。
(もう……
どの言葉を選んでも、姉ちゃんに“何か”は伝わってしまう気がする)
けれど、投稿しなければ、
「今の自分」は、誰にも伝わらないまま消えてしまう。
尚人は、そっとノートを開いて書いた。
【今日の言葉は、まだ出せない】
気持ちが大きくなりすぎた
キャラじゃなく、自分の本音に近づきすぎた
“バレる”じゃなくて、“溢れる”が怖い
「今夜は…見送る。
でも、
いつかこの写真にふさわしい言葉が見つかったら――
きっと、投稿する。」
スマホの画面を閉じると、
そこには、小さく未完の文章が残っていた。
「この気持ちは、たぶん――」




