66.「このままだと…気づかれそうだ」 ― 想いがあふれそうな弟の夜
投稿から数日。
尚人は、次の写真の編集を終え、
キャプションの入力画面を開いたまま、
机に肘をついて、ずっと止まっていた。
(この写真、たぶん、俺の今の“素”が出てる)
キャラのポージングは完璧。
でも――表情には、ほんの少しだけ“演じてない感情”が混ざっていた。
(なんで、こうなったんだろ…)
いや、わかってる。
投稿を見てくれる、たったひとりの人――
姉ちゃんの存在が、心のど真ん中に居座ってるから。
(最近、姉ちゃんの“いいね”が届くたびに、
どんどん言葉を選べなくなってる)
(「伝えたい」って気持ちが、
「バレてもいい」って感情にすり替わってきてる気がする)
尚人は、いくつもキャプション案を書いては、
消して、また書いて、また消した。
「今回は、ちょっと素直な気持ちで撮りました」
→ ダメ。素直すぎる。
「届く人にだけ、届けばいいと思って」
→ いや、届きすぎる。
「これはもう、“誰か”への手紙かもしれません」
→ ……やめよう。
画面を見つめたまま、尚人は深く息を吐いた。
(このままじゃ、
姉ちゃんに届きすぎてしまう)
(でも、止められない。
今の俺が写真を撮る理由って、
もう――“誰か”に届いてほしいから、になってるんだ)
スマホをそっと伏せる。
その夜、投稿は保留になった。
尚人は、胸の奥に溢れそうな想いを、
ノートにこう書き出した。
「次の言葉が、
たぶん俺の“限界ライン”になるかもしれない。」
「バレたくない。けど、
届かなきゃ意味がない――
そのギリギリを、今、歩いてる。」




